蒼き鋼の鳥 上
才吉からの以来を受けた才人とルイズの2人は、ゼロ戦1機を借りると、まずはトリステイン魔法学院へと戻った。ルイズが街で買った物を降ろすためと、着替えや食料などの出かけるのに必要な物一式を用意するためだった。
しかし、久しぶりにゼロ戦で現れたために目立った。2人が部屋に戻り、荷物を纏め始めると、案の定声を掛けてくる人間がいた。キュルケである。
「ルイズにダーリンも荷物なんか纏めて、あの鉄の鳥を使ってどこか行くの?」
仇敵キュルケの質問に、ルイズが不機嫌な顔で答える。
「別にあんたには関係ないでしょ!才人、こんな女早く行きましょ。」
「おお。悪いなキュルケ、俺達用があるから・・・じゃあまずは・・・このエッセンって言う所の『蒼き鋼の鳥』を見に行ってみるか。」
「じゃあそうしましょ。」
そうした会話を歩きながらして、2人は行ってしまった。その様子をキュルケは面白くなさそうな表情で見ていた。ただし、才人たちの会話をしっかりと聞いていたが。
才人とルイズの2人はゼロ戦に荷物を乗せて、トリステイン魔法学院を出発した。その様子を、気になる様子で見ている数人の人影があることにも気付かず。
最初に2人が行くと決めたエッセンという場所はトリステイン魔法学院から1時間ほど飛んだ場所にある、山沿いの小さな村だった。街道からも外れ、陸の孤島のような場所だった。
才人はゼロ戦を村の近くにある草原に着陸させ機体から降りると、まずは近くの木から木の枝などを切ってきて機体に被せることから始めた。俗に言うカモフラージュである。
「なんでわざわざこんなことするのよ?」
ルイズは何故才人がそんなことをするのか理解できなかった。
「だってさ、もし誰かに触られたりしたらどうするんだよ。ゼロ戦を壊されたら移動できなくなっちまうんだぜ。それにこうやって隠しておけば、動物が触る心配も減るだろ。」
「ふーん。」
ゼロ戦を隠す作業は意外に時間を喰った。それを見て、デルフが。
「相棒も面倒くさいことをするもんだね。」
と言って笑った。
その作業を終えると、2人は村へ向かった。
上空から見た時は、畑が広がっていたので人がすんでいる場所だと認識できたが、2人が村へつくと、そこがかなり小さな集落である事がわかった。
ほんの数棟しか家が見当たらない。そして今は人がいないのか、集落全体がシーンとした雰囲気に包まれていた。
「全然人の気配が無いわね。みんな仕事に出て行っているんじゃないの?」
「そうみたいだな・・・参ったな、これじゃあ聞き込みも出来やしない。」
才人は困った表情をした。
「どうする、誰か人が帰ってくるまで待つの?」
「そうするしかないよな。」
今回、2人が調べようとしている場所はいずれも数十キロから数百キロ離れた場所に点在していた。おいそれと移動できるわけではない。長い航続距離を誇るゼロ戦でも、燃料の余裕を考える必要がある。
しかし、その心配は杞憂で終わる事になる。というよりも、2人にとってはとんでもない事態が発生した。
突然、それまで全く人がいないと思っていた集落の家々から、十数人の人影が飛び出してきたのだ。しかも、その人間たちは2人を取り囲んだ。子供から大人、男女問わずいたが、その手には、包丁や鎌が握られていた。
「「え!?」」
2人は一瞬呆然としたが、直ぐに才人は背中のデルフに手を掛け、ルイズも懐に入れていた杖を出せる体制に入る。
すぐに使わないのは、もちろん最初は話し合いをするためだ。
「一体あんたら何者なんだ?」
才人がそう言うと、1人の50台前後の中年男が前に出てきた。その手には、少し古ぼけているようだが、明らかに地球の物と思われる拳銃が握られていた。
「そういうお前こそ何者だ?いきなりゼロに乗って現れ、しかも日本海軍の服を着ているとはどういうことなんだ。」
その言葉に、再び驚く才人。ちなみに今の彼の格好は日本海軍の飛行服の姿である。
「あんたやっぱり地球人か?だったらじっくり話をしたい。大丈夫、俺たちは怪しい人間じゃない。」
才人はデルフに回していた手を離し、両手を上げて戦う意志がないことを示した。
すると、その男は周りの人間に武器を下ろすよう言うと、「来い!」と言って2人を1つの家の中に案内した。もっとも、念のためなのかデルフリンガーとルイズの杖は取られてしまった。
ルイズは「杖を手放すなんて屈辱だわ!」と言って、不満たらたらであったが、才人は話し合うための必要な譲歩であったので、何とか彼女を宥めた。
男が案内した家の中は、最低限の調度品しかない質素な物だった。その真ん中に置かれたテーブルに向かい合うように3人は座った。
「さて、話をする前にまず名前を聞いておこうか。」
男が2人に鋭い視線を向けて訪ねた。
「平賀才人、日本人です。生まれは1987年です。そしてここにいるルイズの『使い魔』です。」
「ルイズ・フランソワーズ。才人の主人です。」
2人とも名乗ったが、男はルイズには興味を示さず才人の方へと視線を向けた。
「やっぱりその黒い髪、東洋人でしかも日本人か。しかし1987年とは大分後の時代だな。俺の名前はエドワード・グルー。アメリカ海軍大尉だ。もっとも32年前までだがな。」
「じゃあ、あなたもこっちの世界に紛れ込んだ人間なんですね?」
「ああ。しかし、俺がこっちの世界にやって来たのは32年前で、その時は1946年だった。今年は1978年のはずだが?君の生まれは1987年と言ったね、矛盾していないか?」
「ああ、それは多分・・・・」
才人は自分がこの世界に現れた経緯と、この世界に地球から現れる時に起こる時間移動に関してを、佐々木少尉の事例を交えて説明した。
「なるほど。それで君は1987年生まれであり、2004年の世界からやってきたと言うんだね。」
「はい。」
男は数秒の間、黙って才人を見つめた。
「信じがたいが、君が嘘を言っているようには思えんな。・・・・よろしい信じよう。」
「ありがとうございます。」
才人は素直に頭を下げた。
「それで、その日本人でこの世界の魔法使いに召喚された君がこの村に何の用かな?まさか我々を救出に来たわけではあるまいし。」
才人は我々という単語が気になったが、それについては質問せず言った。
「はい。実は『蒼き鋼の鳥』を探しているんですけど。それは一体なんなんですか?」
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