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空母!?
「いやあ、君達は運が良いね。あのあたりは化け物(オーク鬼)が多い地域でね、最初の頃は我々からもケガ人や犠牲者が出たもんだ。とにかく無事で何よりだ。」

 中西と名乗った男に案内され、才人たちは森の中を進んでいく。ちなみにルイズは魔力を使い切って動けなくなったために才人の背中に背負われている。

 その後ろには郡山と紹介された男が銃を構えて歩いている。再度のオーク鬼による襲撃に備えているのだ。

「それにしても驚きました。地球から来ている人にこんな風に出会うなんて。」

「それはこっちも同じさ。こっちの世界に来てから9年目。一度も地球から来た人間、ましてや日本人なんか会ってないからね。しかし、上空に海軍の零戦が現れて着陸したようだったから探しに出てみれば、乗っていたのが少年と少女だから、これまたたまげたよ。」

 中西は外の人間と話すのが楽しいのか、かなり饒舌になっていた。

「ところで、皆さんはどのようにしてこちらに?」

「それについては家の指揮官に聞くと良いよ。ほら着いた。」

「「え!?」」

 才人とルイズは面食らってしまった。そこにあったのは崖に掘られた、人一人がやっと通れるぐらいの穴だったからだ。とても一見しただけでは人が住んでいそうにはない。

 2人のそんな驚きを他所に、中西はその入り口に立っていた歩哨の兵士に敬礼すると、2人を中へと案内した。

「さ、来たまえ。」

 2人は言われるままに、彼について中へと入った。そして再び驚いた。確かに狭いが非常に長いのだ。その途中にはいくつもの部屋が造られていて、時折空いている扉からは中に人がいるのが見えた。さらに、何本もの同じような洞窟が分岐していて、まるで迷路の様であった。案内人がいなければ迷いそうである。

「随分と長いわね。」

 ルイズがたまらずそう言った。すると、中西が説明する。

「そりゃあ、5年掛けて掘った穴だからね。この辺りはあの化け物が良く出るから、とても地上には家を作って暮らすのはお勧めできないよ。」

 その言葉に、2人とも背筋に冷たい物を感じた。自分達はそんな危険地域とも知らず着陸し、歩いていたのかと。

「まあ最近は、こちらの反撃を警戒してか、連中もあまり出てこなくなったけどね。さ、着いた。」

 中西は一つの部屋の前で止まった。そして扉をノックする。

「司令官。中西です、入ります。」

「おお。入れ。」

 中から男の声がした。彼はそのまま2人を中へと案内した。

「失礼します。」

 その部屋は大分小さかった。人5人が入れれば良い程のスペースに最低限の調度品が置いてあるだけで、照明はランプだけである。さらに、壁は地面がむき出したままである。

 そしてその部屋の主は、司令官と呼ばれた割には大分若かった。30代後半ぐらいの優男であった。そして彼が来ている服は、旧日本陸軍の士官服だった。

「ほほう、珍しい客を連れてきたものだな。」

 すると、まず中西が彼に事の次第を報告する。

「なるほど、オーク鬼に襲われていたところを助けたのか。で、名前は?」

 2人はそれぞれ自己紹介する。

「平賀才人です。」

「ルイズ・フランソワ−ズです。」

 そして男は立ち上がり敬礼しながら言う。

「大日本帝国陸軍、舟艇母艦「にぎつ丸」輸送指揮官の大島大尉だ。もっとも、元だけどね。今はこの陣地の指揮官をやっている。」

 すると、今度は才人が思い出しながら言う。

「「にぎつ丸」?あの陸軍空母の?」

「そうだ。良く知っているね。日本人のようだが何者だい?」

「俺は・・・」

 才人は自分が平成の日本から、隣にいるルイズの使い魔として召喚された事。その後この世界に現れた曽祖父の才吉とともに義勇軍を作って今はトリステインの為に戦っている事。そして、そのために地球から現れた兵器や人間を探していることを説明した。

 ついでに自分がミリタリーに興味あることや、戦争が日本の負けで終わった事も説明した。

「ほう。未来の日本から。しかもこちらの世界の為に戦っていると。ということは、君は我々の事を聞きつけて、わざわざここまでやってきたのかね?」

「というよりも、それらしい噂話をしらみつぶしに探している所だったんです。ここには『動く島』と呼ばれる物があると聞いてやって来ました。」

 すると、大島は笑い始めた。

「ハハハ・・・『動く島』か、我々はそう言った覚えはないが、まあこの辺りに住んでいる漁師か誰かが勝手にそう言ったんだろうな。さっきも言ったが、我々は「にぎつ丸」の人間だ。恐らく、それは「にぎつ丸」のことだろう。」

「けど、「にぎつ丸」は確か建造中止になったんじゃ?」

 すると今度は大島が驚く。

「いいや、竣工したよ。ただし処女航海でこの世界に飛ばされてしまったけどね。」

 大島は腑に落ちない表情をする才人に対して、大島は説明した。一方、1人話についていけないルイズは才人の服の袖を引っ張って聞く。

「ねえ、そのニギツマルって何なのよ?」

 これに対して才人はどう説明したものか迷った。ルイズに空母と言っても理解されないと思ったからだ。そこで簡潔にこう説明した。

「さっき乗ってきたゼロ戦みたいな飛行機を海の上から飛ばすための船だよ。」

 ちなみに、実際の「にぎつ丸」という船は太平洋戦争中に日本陸軍が造った貨物船改造の強襲揚陸艦のことだ。ある意味、某ロボットアニメに出てくる、木馬と恐れられた宇宙戦艦のご先祖と考えれば良い。

 ちなみに、陸軍空母と呼ばれているが貨物船改造のため飛行機自体は10機ちょっとしか積めなかった。代わりに数千の兵士と、20隻余りの上陸用舟艇を積んで敵前上陸をする予定だった。

 本来こういう船は海軍が造るのだが、日本では陸海軍の中が悪かったために陸軍が独自開発したのだ。ちなみに、陸軍はこれ以外にも潜水艦を造っているし、海軍も自前で戦車を造っていたから、無駄なことこの上ない。

 閑話休題。

 とにかく、その陸軍空母の1隻がここハルケギニアに飛ばされたらしい。しかし、才人の記憶では「にぎつ丸」は戦局の悪化で建造中止になったはずであった。

 しかし、目の前の大島の男は存在していると言っている。

 まだ腑に落ちない才人に対して、大島が言う。

「まあ竣工して3日で消えたからね。それにもしかしたら体裁のために書類が改ざんされたのかもしれんね。」

 その言葉に、なんとなく納得出来る話と思った才人であった。
 御意見・御感想・要望・兵器に対する意見お待ちしています。
 なお、「にぎつ丸」は実際には竣工していませんので誤解なきようお願いします。


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