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プロローグ
 才人たちが貴族の称号を頂いてから約1ヶ月が過ぎた。トリステインでは新たにアンリエッタが女王として即位した事に対して祝う空気は徐々に小さくなり、一方でアルビオンへの戦争に対して彼女がどう動くかへと人々の目は向けられていた。

 既にアルビオンのレコン・キスタ政府はトリステイン王室との断交を宣言しており、戦いが起こっていない以外ほとんど両国は戦争状態に入っていた。

 再び戦いの火蓋を切られることがあれば、それはレコン・キスタの艦隊戦力が大幅に減り侵攻の可能性がなくなった今、アンリエッタ姫の命令以外に無い。

 そんな表の動きとは別に、既に水面下での戦いはウェールズが亡命した時から始まっていた。アンリエッタはウェールズの要請を受け、密かにレコン・キスタと繋がっている人間が政府関係者にいないか調査を開始していた。

 その調査の結果、高級官僚の内数人がレコン・キスタとの繋がりのあることが判明し、取調べを受けている。その結果殆どは些細な繋がりに過ぎず、軽い罰で済んだが、1人リッシュモンという役人がレコン・キスタに重要情報を流していた事が判明し、逮捕された。もっとも、最後には逮捕されて直ぐに脱走を図ったために、銃士隊隊長アニエスの手によって葬られた。

 また、亡命政府を立ち上げたウェールズ自身を狙うテロも起きていた。しかし、これは幸いにも失敗に終わっている。

 そんな戦いが起きている中、才人は以前と同じくルイズの使い魔生活を送っていた。ただし、才人の両親が側に降り、なおかつ彼がシュバリエの称号を手にしたため、ルイズの彼に対する待遇はかなり良くなっている。

 その彼、この日ルイズの買い物のお供でトリスタニアを訪れたついでに、町外れにある祖父である才吉の家に出向いていた。

 才吉は才人と違ってシュバリエの称号こそ貰えなかったが、タルブでの戦功を認められ多額の褒賞を頂いている。そしてそれを元手に郊外に土地を買って、研究所兼工場を作っている。

 その工場では、ゼロ戦用のガソリンが精製され、さらにタルブ村での戦いで大活躍したロケット弾の量産も行われている。

 才吉は腕の良い金属加工職人や、この世界では数少ない科学の素養を持つ人間をかき集め、そうした作業を行っていた。

 最近では新たに錬金術師を雇って、ゼロ戦の機関銃弾の量産まで行っていた。さらに、漏れ聞く話では、学校の無い日にやってくるコルベールとともに、何やら新しい研究も行っているそうであった。




 この日は才人が才吉に呼ばれて工場を訪れていた。

「才人の曾御爺様、一体何の用なの?」

 一緒に付いて来たルイズが疑問を口にした。

「わかんない。ただ面白い物と話があるから来いって。」

 そして、2人は才吉のいる部屋にやって来た。

「おお、待っていたぞ才人。ルイズさんもいらっしゃい。」

 才吉は笑顔で2人を迎えた。85歳にして、相変わらず元気である。

「で曾爺ちゃん、今日の用事は何?」

「うむ。お前に見せたい物と話したいことがあってな。まずは見せたい物からだ。」

 すると、才吉は机の上に何か黒い塊を置いた。ルイズはそれが一体何であるかわからないような顔をしていたが、才人には大いに見覚えおのある物だった。

「曾爺ちゃん・・・これってどう見ても手榴弾だよね?」

 才人は机の上に置かれた物が、本で見た手榴弾その物であることに瞬時に気付いた。

「そうじゃ。いやあ、設計図は地球から取り寄せられたが信管部分の製作に大分手間取ってね、それでもなんとか完成に漕ぎ着けられたよ。あと小銃の製作も行っているぞ、さすがに自衛隊が使っているような現用銃は無理じゃが、旧日本軍の99式小銃と同じくらいの物なら製作可能とわかってね、今試作中だ。」

 そう言って才吉は笑うが、才人は素直に喜べなかった。なぜなら、確かにそれらを作り上げた才吉とコルベールの力量には感心できるが、何だかんだ言ってもやはり兵器、つまり人殺しの道具である。

 その点で、才人はあまり喜べなかった。それを見透かすかのように、才吉は言った。

「なあに、なにも兵器ばかり作っているわけではない。最近は簡単だが電信機や自動車の製作に取り掛かっているぞ。」

 そう言って再び笑う才吉に、才人は苦笑いするしかなく、ルイズに至っては話しの内容についていけなかった。

「まあほどほどにね。で、見せたい物はそれとして、話したい事って一体何?」

 すると、才吉は笑うのを止め一気に表情を真面目な物にした。

「うむ。それはだ、ワシは佐々木がこちらの世界に辿り着いたのを知った時から考えていたんじゃが、この世界には地球から流れ着いた人間がかなりの数いるのではないかと思っている。」

 それには才人も賛成意見だった。というより、彼はロケットランチャーを持ち込んだ人間を知っているから、大いに心当たりがあると言って良い。

 才吉が続ける。

「それでだ。実は個人的に佐々木がゼロ戦を『竜の羽衣』と名づけたように、もしかしたら地球の物がこちらで宝物や伝説として扱われていないかと考えてな、個人的に調べてみたんだ。その結果いくつか気になる物を発見してな、それをお前に調べてきて欲しかったんだ。ワシも才助も手が空いてなくてな。」

「それで俺を呼び出したのか」

 現在才人の父親の才助は、ゼロ戦で編成され才人も加わっている『トリステイン空中義勇軍』の隊長であり、向こうで自衛官であった才能を生かして、ウェールズ率いるアルビオン王室軍の軍事顧問のようなことを行っている。

 ちなみに、この軍事顧問の仕事は時折才吉もやっているらしい。

「で、引き受けてくれるのか?」

「どうしようかな・・・ルイズの側を離れるのもまずいし。」

 ルイズが虚無の魔法使いとわかり、さらに自分の役割が『ガンダールヴ』と知ってから、才人はルイズから離れてはいけないのではと考えていた。

 少しばかり悩む才人。すると、ルイズが言った。

「別に良いわよ才人。どうせ昨日から夏期休暇だし、やることも無いから付き合ってあげるわ。」

「そうか、じゃあルイズ悪いけどちょっと付き合ってくれ。」

 ルイズとしては、本来夏期休暇ともなれば実家に帰るのが普通であるが、それよりも才人と2人の時間が作れるのなら歓迎である。

「じゃあ2人ともよろしく頼むぞ。これがそのリストだ。」

 才吉が差し出した紙には、日本語とハルケギニア語で地名と宝物の名前が羅列されていた。

「出かけるのならゼロ戦を使ってもいいぞ。どうせハルケギニア中草原だらけだ。着陸場所に困る事は無いだろう。」

「わかった。そうするよ。」

 こうして、2人の冒険が始まる。
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