第九訓─手を出すな─
ガラガラガシャァァアン!!
唐突に起きた出来事だった。
昨日みた夜空の星々を、まるで何もなかったのか如く薄暗い灰色の雲が覆い隠している空の下。
少し肌寒い空気の中、障子を破って縁側を通り過ぎ、その先の庭と放り出されたのは、あの銀時だった。
突如その形で現れた銀時に、庭で竹刀をふる準備運動を行っていた皆が銀時さん!!、白夜叉さん!!、とその名を呼びながら駆け寄った。
「貴様ァァア!何をするかァ!」
志士の一人が声をあげ、銀時を殴りとばしたであろう、破られた障子のあった場所にいる人物に怒鳴り付ける。
「うるせえ!!てめーの所為だ!」
その人物は、先程の志士に負けぬ位に声をあげる。
その叫びが向けられているのは、他でもない、銀時だ。
銀時は殴られ、赤くなった頬にいてて、と触れすくりと立ち上がる。大して気にしていないようだ。
「白夜叉なんぞと呼ばれて、自惚れてんじゃねえぞ!!!」
さらに声をあげ、縁側へと歩む。
まだ若い青年であった。ただ銀時よりは年上であることは見て取れる。
「そんな異名つけられるくらいなら、誰か一人でも護ってみせろよ!!!
てめーが……!!
てめーが……誰も護りもしねーから……!!!
てめーが誰か一人でも護れてりゃあ……達彦は…達彦はあ…!!
死ななくて済んだんじゃねーかよっ!!!」
恐らく、この青年の友が戦死したのだ。
その怒りを、護れなかった銀時にぶつけている。
ただ、銀時は何も言わず、その青年を見つめていた。
青年は、更に銀時に殴りかかる。
それを止めようと一歩でた志士達だったが、それを銀時が手で制した。
「銀時さん!」「白夜叉さん!」
志士達が叫ぶ。何故止めるのだと。
だが、青年と銀時の間にあまり距離はない。
銀時は無抵抗で、そのまま勢いよく殴られた。
「銀さん!」「銀ちゃん!」
すると、今しがた来たであろう新八達が、名を呼びながら殴られている銀時に走りよる。
「手ェ出すんじゃねえ!!!」
それは、銀時の叫び声で停止した。
「白夜叉白夜叉なんて呼ばれて、調子のってるかだァァ!
てめーの所為だ!てめーの所為だ!
てめーの所為で達彦は死んだんだァァ!!」
「………ワリー」
「うっうぅっ……うわあァァァァァァァ!!!」
とうとう、青年は大声を上げて泣きだす。
「達彦、達彦ぉ…」
膝から崩れ落ち、地面に手をついてボタポタと涙を溢した。
「……ワリー、槙田…」
槙田。それがその泣き崩れている青年の名であった。
その言葉に、槙田は顔をあげる。
「あんた、…俺の…事、知ってた、のか…?」
小さくしゃっくりをあげる槙田に、銀時は薄く笑う。
「知ってるさ、いつも楽しそーにはしゃいでただろ。達彦と。
……ワリーな…護ってやれなくてよ」
最後の言葉は、槙田に言ったのか、それとも今亡き達彦に言った言葉なのか、それは銀時しかわからない。
「いや、…すまん…。
あんたの所為じゃねえよ…
すまん……」
「気にすんな、
ようやく泣けたんだ、思いっきし泣いちまいな…」
銀時が優しく槙田に言い、槙田の前に行きしゃがみこむと、頭にポンッと手を乗せた。
「達彦が、お前にってよ」
銀時が槙田に何かを差し出す。
その手に納められていたのは、達彦がいつも首から下げ、身に付けていたシンプルな十字架だった。少し血が付着している。
それを、みた槙田は更に大声で泣きだし、銀時に抱きつく。
そんな槙田に、銀時は優しく背中をポンポンと手で叩く。
「泣け泣け、泣いちまえ…
これからの世の中、もっと辛ぇ事なんざいっぱいあらァ
泣ける時に泣いとかねえと、これから泣けなくなるぞ…」
銀時はただ、槙田の背中をポンポンとリズムよく叩いていた。
周りのもの達は、安堵の息を吐く。
それは、新八、神楽、近藤、土方、沖田達も同じであった。
†
「銀さん」
「あン?」
あの出来事が起こってから何時間かたち、新八達が部屋に集まっていた。因みにこの部屋は銀時の部屋で、新八達は銀時が拾ったとして面倒は自分で見ろと押し付けられたのだ。
寝そべっている銀時に新八は声をかけた。
皆の視線が二人に集まる。
「どうして、あの時誰も手を出させなかったんですか?」
「……あの時?」
「昼間の事件ですよ。」
「ああ。」
ああ、それね。とつぶやく。
「こんなとこにいんだ、死人なんざ毎日でるさ。
んだが、それはこの戦場では当たり前のこった。
誰も、怒りもできねえ。
………ああやって、人に怒りをぶつけるしかねーのさ
皆な……」
それは、今まで何度もあったかのような口振りだった。
嗚呼、なんと辛い現実なんだろうか。
しかし、その現実を全て受けとめている彼は……
あまりにも残酷だった。
どうでしたか……
辛いでしょうね、戦場って。
あの槙田見たいな人は、絶対いると思います。
達彦…槙田…………
ごめん、名前適当に考えた(´∀`)
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