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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

祭島

「おい博、なんなんだよ、アレ!」

「雄貴、俺にそんなこと言われても解る訳無いだろ!?」

「博お前が言いだしっぺだろ!?なんとかしろよ!」

「無茶言うなよ!今戻ったら、本当に、何されるか・・・」


「・・・・・悪い、博。今言ったのは無しにしてくれ」

「ああ、別にいいよ。それよりあの光、なんだと思う・・・?」

「UFO、な訳無いよな」

「雄貴、アレを見た時、目眩みたいな、突き飛ばされるような変な感覚しなかったか?」

「そういえばしたな。博もか?」

「ああ。もしかしたらアレは悪魔とか、祟り神とか、そう言う類のものなんじゃないのか」

「なんで、そう思うんだよ」

「だってそうじゃなきゃ、なんで必要なんだよ・・・・・生贄なんて」


「生贄って言ったって、豚とか、牛とか、ただの家畜だろ!」

「じゃあ最後のあの女の子はなんだったんだよ?」

「あれは、きっとただのフリだよ、いくらなんでも人間を使うわけ無いだろ」

「・・・・そう、言い切れるか?あの子、若かったよな、中学生・・・まさか小学生なんて事は無いよな」

「何が言いたいんだよ」

「結構ヤバイ儀式だったんじゃないのかアレ、血生臭い儀式をして悪魔を呼び出すカルト宗教みたいな、部外者に見られたら必ず殺す。みたいな」


「おいやめろよ」

「雄貴、お前あんな異常なもの見てなんでそんな事言えるんだよ!今はちゃんと状況を分析して、今後の方針を決めるべきだろ!?」

「・・・・・・」

「俺達二人はなんとかボートのところまで戻ってこれたけど、ここだって何時あいつらに見つかるか解らない、壮一だって、もしかしたら俺達とはぐれた後、あいつらに捕まってるかもしれない、俺達がこうしている今だっても何されてるのか解ったもんじゃない」

「解ってるよ、でも、あいつだってもしかしたら上手いことあいつらから逃げて、今ここに向かってるかもしれないだろ?」

「あれからもう随分と経ってるだろ、壮一はもうあいつらに捕まってると想定して動くべきなんじゃないか」



「ホント、どこ行ったんだよ博も雄貴も・・・」



「おい雄貴、伏せろ、誰かこっちに来る」

「船から離れた方がいいんじゃないか!?」

「もうそこまで来てるんだ、下手に動かない方がいい」


「・・・どうだ行ったか?」

「まだ近いけど、明かりは遠ざかって行ってる」


「・・・・・行ったみたいだな」

「ここが見つかるのも時間の問題だろうな」



「博と雄貴、大丈夫かな・・・どうしてこんなことになったんだ・・・博、雄貴・・・」



「壮一を探しに行こう」

「おい博、何言ってんだよ、お前さっき自分でここがどれだけヤバそうな場所か話してたじゃないか!」

「だからだろ!こんな携帯の電波も届かない場所で、俺達を見つけたらすぐにでも殺そうとしてくるかも知れない奴等がうろついてるんだぞ!?」

「だったらなおさら俺達の手には負えないだろ!今すぐにでも島を出て警察に通報すべきだ」

「そんな事してたら助けが間に合わないかもしれないだろ!お前は壮一を見殺しにするのか?」

「そんな事言ってないだろ!それにもし俺達が助けに行って俺達が捕まったらどうするんだよ!それに・・・」

「それに、なんだよ」

「壮一はもう、手遅れかもしれない・・・・」

「・・・・・そんなことは、俺も解ってる」

「だったら!」

「それでもだ、もしかしたらまだ生きてるかもしれないだろ・・・?」




「おーい!え~、金村壮一君、だったかの?」

「はい、金村です。二人は見つかりましたか?」

「・・・ああ、おるよ今ここに」

「二人が、今ここにいるんですか!?」

「ああ、そこに二人でまるまっちょる」

「じゃあ!」

「ばってん、もう遅か」

「・・・そう、ですか」


「魂が体から離れてから時間が経っちょる。もう体を清めて魂を入れたっちゃ、蘇生はできんとよ」

「二人の魂は、これからどうなるんですか?」

「肉体がもう死んじょるから幽霊、と言う事になるやろな。二人の霊魂についてはこっちで責任持って成仏させるばい」

「あの・・・あの儀式は一体なんだったんですか?」

「あの儀式については部外者に対して一切口外してはならんことになっちょる」

「友達が、二人も死んだんですよ」

「自業自得じゃろ、わざわざ年に一回のこの祭りの日、この場所この時間に勝手に"んがたち"(お前たち)が勝手に忍び込んだんじゃから。それよりもおい(俺)達はこの祭りの情報をどこで聞いたのかが気になっとるばい」

「そんなの知りませんよ、ただ二人とも同じサークルの仲間で、いつもみたいに俺の住んでるアパートで飲んでたら、アパートのすぐ目の前の立ち入り禁止の島が何で立ち入り禁止なのかって話になって、私有地だからだろって話でまとまったんですけど三人とも酒が回ってましたし、その時の勢いもあって三人で島に上陸して探検しようってことになったんです」


「つまり祭りに立ち会ったとは、”全くの偶然”て、いうとね?」

「はい、もしこんな事になるって知ってたら・・・・」

「まあ学生時代というのは、なんか馬鹿なことをすっからね、おい(俺)も覚えがある。今回の事は運が悪かったとしか言いようが無かばい」

「そんな・・・」


「・・・こいは(これは)おい(俺)の独り言ばってん」

「え・・・」

「こん島(この島)は元々ある神さん(神様)を奉っとうて、年に一回神様を下ろす儀式をやっちょる。儀式では村で飼っている全種類の家畜を一匹ずつと初経前の娘が奉げらるっとよ。殺されるのは家畜だけで、娘は神様を下ろす依り代にするとばい。そうして十日の間、神さん(神様)は娘の中におり続ける(居続ける)。そしてその後また天へ帰っていくとよ」

「豊穣の神様、とかですか?」

「こいは(これは)おい(俺)の独り言じゃ、ただこの島には儀式で依り代となる娘以外の女と禊で身を清めた男しか入れん。なぜなら神さん(神様)が降りてくる時、神さん(神様)の力が強すぎて依り代となる娘と禊で身を清めた男以外は、魂が神さん(神様)の方に引っ張られて魂と身体が分離してしまうとさ。それでも男の場合はすぐ元の身体を海の水で清めて魂を入れればなんとかなるとばってん・・・」

「・・・・・・」


「・・・今聞いたことはわかっとうやろうけど(わかっているだろうけれど)、一切他言無用やけんね」

「・・・はい」

「それと、君の友達の事ばってん、夜中仲間内三人で悪ノリして島に上陸。酔っ払って寝ていたところを毒蛇に噛まれて死亡ということにするけん、君もそのつもりでな」

「・・・あの」

「なんね」

「博と雄貴は今ここにいるんですよね?だったら、最後に少し二人と話をできませんか?」

「無理ばいわんと」

「お願いします!二人ともたぶん身体から魂が抜け出て、自分が死んだこともまだ解ってないと思うんです!実際俺も魂と身体が分離した時、ちょっと目眩がした位にしか思わなかったし、今ボートに乗ってるってことは、たぶん途中ではぐれた俺を待ってるんです。このまま舟を漕いで帰れば、また今まで通りの生活に戻れると思ってるんです」

「そいは神さん(神様)から二人に説明されるやろ」

「どうしてですか!?たぶん二人とも訳も解らず怯えているんだと思うんです、せめて僕から話をさせてください」

「おい(俺)には無理とよ。二人の魂は神さん(神様)の力に引っ張られておい(俺)達がいるのよりももっと上の次元に飛ばされてしもうた。おい(俺)達では彼等が今そこに居るのかどうかの気配を感じることしかできん。反対に彼等からもおい(俺)達は気配だとか、おい(俺)が持っている松明の明かりだけが見えるとか、そんなところやろう。さっきから二人がそこに縮こまって動かないのも、案外火の玉だと思って怯えてるからかもしれんしね」


「もし残り二人の魂も身体に戻すことができたら、二人はボートの方へ送るから今日のことは忘れてそのまま帰れと言うたばってん、それもできんごとなった。今日はおい(俺)達のところに泊まっていかんね」

「・・・・・わかりました」

「心配せんでも取って食ったりはせんばい。二人のことも今、神さん(神様)が探しておられるけん、もうじきここに来るやろう」



・・・そうして、僕は彼等の元で一晩お世話になることになった。

つれて来られたのは島の開けた場所にテントを張っているキャンプ場のような場所だった。

そこで中年男性二人に挟まれて若干窮屈なテントの中で寝ることになった。

不安と恐怖と緊張でとても眠れないと思ったが、気が付くと眠りに落ちていた。

そしてその夜、夢を見た。

儀式の時に見た少女が浜辺で雄貴と博の首を素手ではね、腹を切り開き、心臓を抉り取っていた。

取り出した心臓に、少女は口の周りを真っ赤に染めながら齧り付いている。

突然少女が振り向いて目が会った。同時に彼女はとても無邪気な笑みを浮かべた。

次の瞬間には俺の首ははねられていた。そして少女は無邪気な笑顔のまま俺の腹を切り開き始めた。

その時、俺はとっさにあることを口走った。

・・・目が覚めると僕の体中に嫌な汗がまとわり付いていた。首と腹にはさっき斬り付けられたような妙な痛みと違和感を感じた。



「・・・それで、その後どうなったの?」

「どうもしないよ、由美子。結局二人は死んで、俺はそれ以来あの島を見るのも嫌になったし、大学卒業後はその土地にも近づかなくなった」

「他言無用じゃなかったの?」

「うんそうなんだけどね、先月酒を飲んだ弾みで斉藤に話しちゃったんだ」

「えっ、斉藤君って」

「そう。俺の友達で君の浮気相手で、先月駅のホームからうっかり落ちて電車に轢かれて死んだ斉藤君。びっくりしたな~話した次の日の夕方には死んじゃうんだもんな。儀式してた人がもしこのことを話したら、話した相手が祟りにあうって言ってたんだけどホントだったんだな」

「・・・・・・・・」

「浮気相手がどうにかなれば、俺のほうに戻ってきてくれると思ったんだけどさ、女の子ってすぐ別の相手作っちゃうんだよな。みんなそうだ」

「みんなって何よ!あなただって浮気してたんじゃない!」

「俺はしてないよ、付き合ってるときは一人の相手しか見えないし、彼女がいるときは友達よりも彼女を優先するし。だけどみんな浮気するんだ」

「そんなの浮気される方に問題があるのよ!」

「今までの彼女もみんなそう言うんだ。そしてこの話をした当日か次の日にはみんな不慮の死を迎えるんだ」

「なんなのよ!それで私を反省させようとでも思ってるの!?あなたみたいな性根の腐った人間なんて顔も見たくないわ!」



『昨夜午後九時頃、東京都○○区の路地で、女性がひき逃げされ死亡すると言う事件が発生しました。被害者は大沢由美子さん・・・』


「ほんと効果テキメンだな~、時間的に俺の家を飛び出したすぐ後じゃないか。それにしても俺はアレを体験した後、特に何も無かったんだけど、どうしてみんなはこんな簡単に死ぬんだろう。儀式をしてた人の話をあくまで独り言として聞いたからかな?それともあの時、夢に出てきたあの子に、心臓を食われる寸前、俺の代わりだったらなんでもあげるから見逃してってお願いしたからかな?・・・でも、それ以降あの子が夢に出てくることなんて無いしなぁ。彼女とか友達とよくトラブルになって関係が悪くなるのはやっぱり祟りなのかな?どれも俺のせいじゃないことばかりでトラブルになるし。家族や親戚も事あるごとに揉めてめんどうだしなぁ。まあ、相手を消せる手段があるだけマシかな、あはは」



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