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43話 一刀、蜀に本心を告げる、のこと
 

馬蹄の音が響く

たった六人でも結構響くもんだな、なんて考えながらもこれからの状況を考えてみる

俺の勘が正しければこれから起こるのは演義の『落鳳坡の戦い』だろう

張任とホウ統が出てくる話はあれしか思い付かない

クソッ!ダメだ!ダメだ!!嫌なイメージしか思い浮かばない

ホウ統は確か流れ矢に当たり落鳳坡にて命を落としたはずだ

それだけはやらせるわけにはいかない

「………のっ!か…と殿っ!」

「はひっ!?」

「ふぅ…やっと気付いて下さりましたか…少し速度を緩めて下され、翠や白蓮の馬はともかく私達の馬が潰れてしまいかねません」 

周りをみれば星や風達の馬はかなりしんどそうだ

絶影は俺の焦りを感じ取ってかなり加速していたらしい

「うわっ!?す、すまん!絶影!!落としてくれ!!」

慌てて速度を落とす

「ふぅ…一刀殿、逸る気持ちは解りますが落ち着いて下さい」

「ご、ごめん…」

「一刀殿、何故それ程急いておられるのですか?」

「え、あ、いや…深い意味は…」

「いいえ、北郷殿は急いておられる、それには何か理由が有るはず」

…華琳といい今の星といいどうしてこの時代の娘はこう勘が鋭いのだろう…これではいくら否定してもわざとらしいばかりだ

「はぁ…俺隠し事できない体質らしいな…」 

「ハハッ、一刀殿のあれ程切羽詰まった様子を見れば鈴々ですら気付きますぞ」

「嘘!?俺そんなしかめっつらしてた!?」

「それはもうこれでもかという位に」

星はニヤニヤとこちらの様子を眺めている

「…星、俺からかって愉しんでるだろ?」

「おや、それは心外ですな、これでも私は北郷殿を心配しているのですが?」

いや、これは心配なんて絶対してな…

「…好いている者が悩んでいるのにそれが心配でない女がいると思いますか?」

星の表情が曇った

「…せ、星…」

「私は無力ですな…好いた男子の力にもなれないとは…」

星の瞳がうっすらと潤んでいるような…

「い、え、あ、せ、星!?」 

「…一刀殿、私は貴方の助けにはなれないのでしょうか…?」

「…そ、そんな事…」

「…そうですね…会って間もない我等になど…」

ぽろりと一つ雫が流れた

「わかった!わかったから泣かないでくれ!!」

「そうですか、なら止めましょう」

あっさりと普段通りの星に戻った

「さぁ、もう少し走ったら休憩できる泉があります、そちらで話していただきましょう♪」

急に調子を取り戻した星の姿に今更ながら嵌められた事に気付いた一刀だった…

………

……



「では一刀殿、説明していただけますか?貴方はいったい何をご存知なのですか?」 

「うぅん…何処から話そうかな…そうだね、まずは風や星と出会った時まで戻ろうか」

「そういえばお兄さんはいきなり風の真名を呼んじゃいましたね〜」

「あれが俺がこの世界に来て最初の出来事だったんだ、風や星と出会えなければ俺はその後華琳に切り殺されてたよ」

いや、実際笑えない事実である

「…で、話戻るけど、その後俺は華琳に仕える事になった、華琳は俺に華琳自身が使えるという判断を下したからだ、でもその時の俺には武力もなければ才能もない身一つとしか言えない状態、そんな俺を華琳が引き上げてくれたのは…」

「天の御遣い、としてですか?」 

首を縦に振る

「華琳は俺の持つ『未来』…つまり天の御遣いとしての知識が自分の下にあればこれから起こる戦乱の時代の武器になると考えた、だから側に置く気になったんだ」

「…なるほど」

「そして俺の知識は役に立った、一度目は定軍山で秋蘭の危機を、二度目は赤壁で諸葛亮ちゃんや周喩さんの策を破った…」

…その先の結果は皆が知る通りだ…

「…まぁ、その…つまり俺にはみんなが経験していないはずの戦いなんかの知識があるって事なんだ」

「それは一種の予言、という事でしょうか?」

「う〜ん…ちょっと違うけどだいたいそんな感じだと思って構わないよ、で、その予言通りだと…」

 

「雛里…ホウ統の身が危ないと?」

一瞬流れる沈黙、俺自身も話すべきかどうか決めあぐねている

…いや、話すと決めたのだ、大事な問題だけ先送りにはできない

「…俺の想像通りなら、このままじゃホウ統ちゃんは死ぬ」

この言葉に一同は身を硬くした

「お、おい!北郷!助ける方法とかあんだろ!?」

馬超が詰め寄ってくる

「…今はわからない…でもあるとすれば…俺自身だ」

「北郷自身?ど、どういう意味だよ?」

「…今はなんとも言えないけど、きっとなんとかする、信じてくれ」

今の俺には管輅の言っていた試練の意味はわからない、でもホウ統ちゃんを助けたい気持ちは本当だ

「…わかりました、この件は一刀殿にお任せしますが我等にできる事はなんなりとお申しつけください、できる限りお力を…」

「おーい!皆の馬、そろそろ行けそうだぞ〜!」

一人で馬の世話をしていた白蓮が戻ってきた

「…白蓮殿の間の悪さには時々感心しますな…」

「え、え、え?わ、私は何か悪い事したか!?だ、だってさっき星簡単な相談だけだから私には馬の調子を見ていて欲しいって…」

(…だからといって今戻らずとも…)

と星は周りに聞こえないように呟いた

「よし、ここから先の案内は頼むよ、少なくとも後半日分は追い付きたい」

「わかりました、急ぎましょう」

そしてまた馬を走らせ始める皆

「絶影、俺達も行こう」
 

絶影もまたゆっくりと走り始めるのだった


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