僕
寒い。 僕は車の中で鼻をすすった。
ちょうど夏休みが終る頃に、僕は東京から遠く離れた山奥の一角にある中学校へ転校する事になっていた。クラスの皆から色紙と花束を貰ったけど、どうすればいいのかが分からなくて部屋どこかに放っておいたら花は枯れ、色紙はどこへ行ったのか分からなくなってしまったけど、どうせ見つけてもどうしようもなかったのでそれはそれでいいとも思った。
僕は長い間父さんの父さん、つまり僕のじいちゃんの所で暮らしていた。父さんも母さんも気がついたらいなくて僕はじいちゃんとの生活を当たり前に今日まで暮らしてきた。別に二人とも死んだわけじゃない、らしい。僕自身本当の事をよく知らなくてじいちゃんに小さい頃はよく聞いたが結局、さて今頃どこにいるのやら。のじいちゃんの一言で済まされていた。実際、そこまで知りたい訳じゃないから別にかまわないのだけど。
そんなじいちゃんが今年に入っていきなり老人ホームに入ることに決まった。これは父さんの兄さん、つまり僕の伯父さんにあたる忠司伯父さんが持ちかけた話で前々から考えていた事だったらしい。確かに僕がおじいちゃんの所でお世話になっているとは言っても実際普段から物忘れの多いおじいいちゃんの身の回りの世話をやいているのは僕なわけだから世話をしているのは僕の方だった。だから僕もじいいちゃんが老人ホームに入ることに反対はしなかったし、むしろその意見を押した方だった。けど唯一僕が心配していたのはその後の僕のことで、あわよくば僕一人だけでもこのままここで暮らせればいいと思っていたが、やはりそれは反対された。忠司伯父さんの奥さんはよければ自分のところで引き取ってもいいと言っていたがそれは僕が嫌だったからすぐに断った。あの人が嫌いなわけじゃあないけどどうも僕にはあの人の性格が合わない、それに忠司伯父さんも困った顔をしていたからなおさら僕は断った。
それからすぐに僕のこれからは決まった。僕は東京から離れる。もちろん転校もする。そしてそこは山の奥の奥にひっそりと存在する小さな村だと言う。
そこがどこだろうと僕には関係ない。どこだろうと結局は人間なんてそうそう変わるものでもなし、同じ人間はまた同じことを繰り返すだけだ。
今車を走らせているのは忠司伯父さんで、僕は後部座席に座って外の景色をボウっと眺めていた。 そしてまた一つ鼻をすすると今度は鼻の奥がむず痒く僕は大きなくしゃみをした。と、同時に走っていた車はトンネルを抜け見下ろす港町が一望できた。
景色は綺麗なところなんだろうが、なかなかそこまで喜べはしなかった。これから僕の新生活が始まるのだ。 |