第6話 冷静になれよ俺 めんどくさい約束
じゃれ合うのを早々にやめて俺はクレイブのことを相談していた。
「へ〜、で、そいつがどこの人間なのかをボクに調べろって言うわけだね」
噴水の縁の部分に腰掛け、レンズを布で拭きながらクレイブとの話を聞き終えた。
短く溜め息をつきながらディーノはメガネを掛け直すと俺を見た。
「ああ、さすが、話がわかるな」
内心ではディーノの無意識におこなった仕草があまりにもキザなのでイラつき気味だが、情報の為にぐっと我慢した。
「だが、それならボクでなくても良いだろ?」
「いや、リサが蒼焔の龍ってことを知ってる中で信頼できる奴がお前ぐらいなんだよ」
「そうかそれなら仕方ないな。キミの話で聞いてはいるが実際に会ったことが無いから。一度そのリサちゃんに合わせて貰いたいな」
爽やかな微笑を浮かべて立ち上がる変態――ディーノ=マテナカル
「そうそう、実はね彼女も此処に来てるんだよ。まあ、実際にはキミに会いに来たと言った方が正しいかな……」
爽やかだった口元の微笑を悪戯っぽい笑みに変えて最後の部分を濁す。
彼女? 誰だ?コイツの女性関係は精霊だけじゃ無かったのか?
「ふふふ、誰だか見当がつかないようだね」
「サッパリだな、俺に会いに来る女なんて…… 俺を殺しに来そうな奴なら何人かあがるんだが、そいつらか?」
即座にディーノが大袈裟に天を仰ぐマネをする
「ああ、可哀想に彼女はキミの事を想い焦がれ、胸を痛めているというのに。そんな彼女の事を、キミは覚えていない、知らないと言って突き放そうというのか」
芝居がかったセリフと動作で言い終え、「よよよ」と顔を両手で覆う。
よせ、これは安い挑発だ。 なにか罠が隠されている筈なんだ。
忘れるなコイツに何度嵌められ、死にそうになったかを、もしそいつが下級や中級竜の雌とかいうオチだったらどうするんだ!
一言発言を間違えれば死亡という今の状況。
意味なく焦る理性を必死に落ち着くように言い聞かせるが、できそうに無い。
理由はカンタン、手で隠れてない口元が俺を挑発するように意地悪く歪んでいるから。
挑発してきてやがる、ああも露骨にされるとマジで頭にきそうだ
俺は焦っていた理性を冷静にさせて危機を回避しようと頭の中で言葉を選択する。
「知らないって言ってるだろ、からかっているならいい加減止めてくれ」
俺は会話の中で一番当たり障りの無い一言を選択したはずだ
「ホントに知らないの?じゃあ、お互いに連れを紹介し合うことにしようか」
しまった、コイツは今のを期待してやがった。
いきなり距離を詰めると俺の顔をお互いの息が、かかるところまでのぞき込む。
「30分後に森の近くにある野原においで、そこで会おう。ついでに今のキミがどれだけ強くなったか見てあげるよ」
舐めるような眼で俺の顔を見つめ、それだけ言って満足したのか、踵を返して去っていってしまった。
「めんどくさい……」
ディーノの背中を見ながら俺はガクリと肩を落として呟いた。
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