(9)眼鏡を外す
ちょっとばかり有名人な平次は、時々変装する事がある。
平次は基本的に周りの視線を気にせんし、女の子の秋波なん気付きもしないんやけど、それでも煩く感じる時があるらしい。
それは、剣道の大会の後やったり、新聞や雑誌に載った時やったりする。
変装言うても、前に工藤君に化けた時みたいなんやなくて、いつもはあんまり着ないジャケットを着てサングラスを掛けるだけ。
そんな格好で、Gパンのポケットに手ぇ突っ込んで立ってると存在感抜群やと思うんやけど、平次に言わせると、不思議と視線を感じなくなるらしい。
アタシに言わせれば、そう言う時の平次はちょっとだけ不機嫌な事が多くて怖そうに見えるから、見ないようにされてるだけなんやないかと思うんやけど、前にクラスメイトが駅で会ってわからんかった言うてたし、もしかしたら変装は成功してるんかもしれない。
「あ……」
どうやら今日は変装気分やったらしい。
珍しくアタシより早く待ち合わせ場所に居た平次は、ジャケットにサングラスの例のスタイルやった。
「お待たせ!」
「おう、待ったで」
「でも、遅刻はしとらんよ?」
いつもの言葉遊びみたいな会話をしながら、平次を見上げる。
……どっからどう見ても平次やと思うんやけどなぁ。
そんな事考えてたら、平次が怪訝そうに眉を寄せた。
それを無視して、サングラスを取り上げる。ついでやから、ちょっと掛けてみた。
「何で、こんな眼鏡一つで、みんな平次やてわからなくなるんやろ?」
「人の目なん、そんなモンやろ?まあ、オマエ誤魔化すんは無理やけどな」
苦笑混じりにそう言った平次は、アタシからサングラスを外すと、それをポケットに引っ掛けた。
「アタシ、平次が着ぐるみ着ててもわかると思うで?」
「確かに、オマエやったら見破りそうやな」
平次が可笑しそうに笑って、アタシのこめかみのトコに、小さなキスをくれた。
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「ちょっとばかり有名人な平次は、時々変装する事がある」(和葉)
『キスにまつわる20の御題』(http://tw.skr.jp/kiss/)
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