(5)冷たい手を暖める
合気道の演武大会に和葉の応援に来て、準決勝が始まる言う時に事件が起きた。
女子更衣室の一つで起きた殺人事件の原因は、よくある三角関係。
ちゃちなトリックは偶然に助けられて上手い事機能して、崩すのにちょお時間が掛かった。
「ん〜」
『KEEP OUT』のテープを潜って、大きく伸びをする。
不思議なモンで、あの黄色いテープの内と外やと空気が違う。
一種の結界みたいなモンやな。
深呼吸を一つして、廊下の窓から夕焼けに染まる空を見上げた。
「和葉、勝ち残っとったんになぁ……」
事件が起こらんかったら、優勝もいけてたかもしれんのに。
そう思うと、何や悔しい。
和葉はあんまり後に引きずるタイプやないから、今日の事も自分の中でケリ付けるんやろうけど、ちゃんと最後まで試合させたりたかった。
そんな事考えながら、建物の入り口で野次馬が入り込まんように警備しとる警官に会釈して、外に出る。
思った以上に、空気は冷えとった。
「もうすぐ冬やなぁ……」
事件が起きてすぐ大会が中止になったから、今残っとる人は少ない。
参加者や観客の熱気の引いた会場は、気温以上に冷え込んどるように感じた。
「平次!」
私服に着替えた和葉が、スポーツバッグ片手に駆け寄って来た。
「終わったん?」
「おう」
胴着やら何やら入れられて、ちょっとばかり重くなっとるバッグを取り上げる。
今日は試合で疲れとるやろし、まあ、たまにはな。
ついでに手を繋いだ。
「ありがとぉ」
嬉しそうに笑う和葉の手は、すっかり冷えとった。
「……ずっと外に居ったんか?」
「うん」
「あったかいトコに居ればええのに」
「そうしよかなて思たけど、ここの方が平次が出て来るん、すぐわかるやん?」
あっさり返す和葉の手を持ち上げる。
気持ちは嬉しいけど、心配になるセリフやな。
「何?」
「あったかくて安全なトコに居れや」
白い指先に軽くキスして、繋いだままの手をポケットに突っ込んだ。
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「冷え切った白い手をそっと包み込んで、指先に口づけた」(平次)
『キスにまつわる20の御題』(http://tw.skr.jp/kiss/)
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