(3)腕を引く
休日の駅前、どっからこんなに湧いて来てん!?ってくらいの人込みを掻き分けて、前に出る。
先々週は事件追いかけて奈良に行っとって、
先週は剣道部の練習試合。
勿論、一緒に居たんやけど、今週は特に依頼もないし、久し振りにデートやと浮かれとったんに……。
「遅刻や〜っ!!」
二人で出かけるんはいつもの事。
どっちかが迎えに行ったりするんも、いつもの事。
せやけど、それじゃあ面白くない。
今までの『幼馴染』って肩書きに、やっと『恋人』って肩書きが加わったんやし、恋人っぽい気分も味わいたい。
ツレらが話しとるんを聞いとると、デートは待ち合わせからが基本らしいし、たまにはそんなんもええなあって、滅多にしない『待ち合わせ』なんぞしとるワケやけど……。
待ち合わせは午前10時。
今現在、時計は午前10時30分。
たとえ待っとるんが同じオンナでも、『幼馴染』待たしとるんと『恋人』待たしとるんは、気分的にかなり違う。
まずはとにかく謝って、昼メシん時にケーキの1つも付けたって、なんて走りながら考えとるあたりで、大違いや。
何はともあれ、目的地たる待ち合わせ場所まで、後およそ……。
「……ええ度胸やんけ、兄ちゃん」
ドスのきいた呟きが漏れたんは、ご愛嬌や。
残りの距離を一気にゼロにして、和葉の腕を掴んで思いっきり引っ張って、ナンパ野郎の視界から掻っ攫う。
「きゃぁっ!」
倒れ込んで来た身体を抱き留めて、これ以上ないってくらい優越感を込めて、身の程知らずのナンパ野郎に見せ付けるように、和葉の頭のてっぺんにキスをした。
「平次?」
「おう、遅れてスマンな」
呆然としとるナンパ野郎には、たっぷりと殺気を込めた視線をくれてやる。
オレのオンナに手ぇ出そうなん、10億年早いんじゃ、ボケ!!
慌てたように人込みに紛れてく背中に、心ん中で思いっきり悪態ついて、嘲笑一つ。
「いきなり何するんよ!」
「スマンて。ケーキで手ぇ打ってくれんか?」
赤い顔してぶつぶつと不満を並べる和葉を腕ん中から解放して、代わりに手を繋ぐ。
「……アップルパイとフルーツパフェ」
「了解」
案外安上がりなお姫様を連れて、デートに繰り出した。
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「オレのオンナに手ぇ出すなや?」(平次)
『キスにまつわる20の御題』(http://tw.skr.jp/kiss/)
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