(21)ばいばい。
「なあ、平次ぃ……」
声を掛けたけど、返事がない。
振り向いてみたら、ベッドに寝転んで雑誌を読んでたハズの平次は、そのまま昼寝に突入してた。
アタシの目の前には、平次の右手。
掌を上にしてだらんと投げ出されてるその手に、ベッドに乗り上げるようにしてアタシの左手を重ねてみた。
大きな手。
アタシがこの手を傷付けたんは、冬。
今はもうその傷も、薄く痕が残っとるだけ。
あの時はただ夢中で。
アタシを切り離す事でしか、平次を助けられんと思って。
あの言葉に全ての想いを託した。
それでも平次はアタシの手を離さずにいてくれたから……
重ねてた手を離して、今度は両手で包み込んでみる。
ちょっとだけ持ち上げて、手の甲にうっすらと残ってる傷痕にそっとキスしてみた。
多分もう、アタシからはこの手を離せない。
だけど……
もしも……
もしも、いつか平次がこの手を離したいと思った時に……
そんな事考えたくなんないけど、平次がアタシの手を離して飛び立とうとした時に……
その時に、この温かい手を解放して、アタシはもう一度あの言葉を言えるやろうか?
きゅっと平次の手を握り締めたら、強く握り返された。
「起きたん?」
平次の様子を窺おうとしたら、いきなり抱き込まれた。
「何?」
「……余計なコト考えんと……ずっと此処に居り」
「え?」
「……此処に居り」
「……平次?ちゃんと起きとる?」
「………ん」
半分寝惚けとるみたい。
せやけど……うん……。
まだ不安はあるけど、この手が離される事はないんやと思う……きっと。
……でも、今は離して欲しいかな?
「アタシは抱き枕やないんよ……」
寝てる人間は重いんよ?
そのまま寝返り打ったら、アタシが潰れてまうやん!
お願いやから、離して!!
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「平次の右手の甲に残る傷に、キスをした」(和葉)
『キスにまつわる20の御題』(http://tw.skr.jp/kiss/)
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