×××(kiss・kiss・kiss)(16/21)縦書き表示RDF


×××(kiss・kiss・kiss)
作:月姫



(16)何味?


『あの映画のDVD、レンタル出来たけど観るか?』

平次からメールが来たんは、晩ゴハンの片付けが丁度終わった時。

『観る!』

急いで返事を送って、待つ事5分。
今度は、携帯やなくてインターフォンが続けて2回鳴った。
この鳴らし方は平次。

「行って来ます!」

居間でお茶を飲んでるお父ちゃんに声を掛けて、玄関に急いだ。
お父ちゃんは、平次んトコやったら、連絡さえちゃんとしてれば何も言わない。

「あんまり遅うなるなや?」
「ちゃんと送り届けるよって、心配せんといてや!」

居間から声だけ掛けて来たお父ちゃんには、平次が応える。
部活仲間と駅前まで出てた言う平次はまだ制服のままで、軽そうなカバンとレンタルショップの袋を抱えてた。

平次ん家とアタシん家は、ゆっくり歩いても5分くらいの距離。

家に着くなり『ハラ減った』と騒ぐ平次が着替えてる間に、オバチャンに『お邪魔します』の挨拶をして、平次の晩ゴハンが終わるのを待って、部屋に移動した。

「帰りに寄ってみたら、丁度返却棚にあってな」

そう言って平次が袋から取り出したんは、ちょっと前に流行った洋画。
観損ねてたそれがレンタルされるんを、アタシは楽しみにしてた。

「まだ新作やから、今日中に返そ思てメールしたんや。来ない言うたら、延滞料オマエに請求しよ思てたんやで?」
「じゃあ、それのレンタル料は平次が持ってくれるん?」
「オレも観たかったしな、当日料金は持ったる」

ちょっと偉そうに笑って、平次が定位置に座る。
アタシも隣に座って、ベッドに寄っ掛かった。
二人の間には、小振りのお盆が一つ。その上には、アイスコーヒーとオレンジジュースとクッキーとポテチ。
平次の部屋で映画観る時のアタシたちの定番。
ポテチ片手に、平次がリモコンを押した。

エンドロールが流れるまでは、一緒に居っても基本的には一人の時間。
ちょっとだけ余韻に浸って、ふっと息をついて、平次の存在を思い出して、いつもの二人に戻る。

今日もそのハズやったのに……。

エンドロールが流れ始めて何気なく隣を見たら、丁度アタシの方に振り向いた平次と目が合った。

映画は別にラブロマンスやなかったんやけど、二人とも何となく雰囲気に飲まれてたんやと思う。
極々自然に近づいて、気付いたらキスしてた。

……コーヒーの香りがする。

触れてたのはほんの僅かな時間やったのに、それだけははっきりとわかった。

『ファーストキスはレモン味』とか、よく聞くフレーズやけど、アタシのファーストキスは、平次の飲んでたコーヒーの香りやった。

……アタシ、暫くコーヒー飲めんかも……。














***************
keyword
「ファーストキスはレモン味とか言うけど、アタシのファーストキスはコーヒーの味だった」(和葉)

『キスにまつわる20の御題』(http://tw.skr.jp/kiss/)












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう