×××(kiss・kiss・kiss)(12/21)縦書き表示RDF


×××(kiss・kiss・kiss)
作:月姫



(12)「これでよければ。」


平次の家には小さな離れがある。
小さい言うても、8畳の座敷が3つと手入れされた水回りがあって、ちょっとした家くらいはあるんやけど。

「いい天気やね」

離れの縁側に並んで座って、淡く霞む春の空を見上げる。
風はまだ冷たいけど、陽射しがぽかぽかと暖かい。

『花見しようや。明日昼までには帰るから、家に来とれ』

依頼で出掛けてる平次からそんなメールが来たんは、昨夜の事。
アタシに異論がある筈もなく、予定通り帰って来た平次と、離れでお花見する事にした。

本当は、どっか出掛けたかったんやけど………

そっと隣を窺ってみた。
のんびりと桜を見てる平次は、何となくキツそうに見える。
身体的にやなくて、精神的に。

他人には絶対に悟らせないそれに気付いても、アタシに出来る事なんて何もない。
ただ、邪魔にならんように傍に居るだけ。

「お茶、煎れ直そうか?」
「ん〜?それより、何や眠いわ」
「ブランケット持って来とるし、少し寝る?」
「せやなぁ……」

大きな欠伸をした平次が、座敷の方に移動して寝転んだ。
ガラス戸を閉めると、陽射しだけが入って結構あったかい。
それでも、そのまま寝たら冷えてまうから、ブランケットを広げた。

「一眠りしたら、スッキリするやろ?」
「……そんな疲れた顔しとるか、オレ?」
「ううん、ただ何となくキツそうやなぁと思って」
「………バレとるんならええわ。ちょお手ぇ貸せ」
「手?」

この手の事?と右手をひらひらさせたら、ぐいっと引っ張られた。

「暫く貸しとけ」
「うん」

平次は、大抵の事は自分の中で処理してしまうから、アタシに出来る事なんて殆どない。
時々、それが酷くもどかしい。
せやけど………

「こんなんで良かったら、いくらでも貸したるで?」

すっかり寝入ってしまった平次に小さく囁いて、瞼にそっとキスをした。














***************
keyword
「アタシは何も持ってない」(和葉)

『キスにまつわる20の御題』(http://tw.skr.jp/kiss/)












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう