(11)無理やり
乾いた音を立てて、和葉の平手がオレの頬を打った。
オレは何も言えずに、ただ熱を持ち始めた頬の痛みを、遠くに感じてた。
きっかけは、他人に言わせれば多分些細な事。
オレが過剰に反応しただけの事。
せやけど、オレにはガマンならんかった。
自分がこんなに心の狭い男やなんて知らんかった。
一人のオンナにこんなに執着するとは思わんかった。
いや、どっかで気付いとった。
今までは自分ではめた枷で抑えとっただけで、オレは本来、人一倍独占欲や支配欲が強くて、嫉妬深い男なんやと。
口の中に広がった血の匂いで、やっと周りが見え始めた。
学校内でも滅多に人の通らん、特別教室棟の裏。
コンクリートの壁に背中を預けた和葉。
髪もリボンも制服も、うっすらと灰色に染まってるんは、オレが押さえつけたから。
……嫌がる和葉を押さえつけて、無理矢理キスしたから。
「何でこんなコトするん?」
大粒の涙を浮かべた和葉は怒っとるワケやなくて、ただただ哀しそうで、胸が痛んだ。
「アタシは平次しか見とらんのに……平次しか要らんのに……信じてもらえないん?」
俯いた和葉を、そおっと抱き締める。
今度は抵抗されんかった。
和葉はいつだって、オレに全てを預けてくれる。
それすらわからんようになる程に、頭に血が上っとった。
「……すまん……オレが悪かった」
腕の中で小さく震える肩と、縋り付くようにオレのシャツを握り締める手の感触が、堪らなく愛しかった。
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「拒む和葉を押さえつけて、無理矢理奪った」(平次)
『キスにまつわる20の御題』(http://tw.skr.jp/kiss/)
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