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Chain177 歪んだ愛情・束縛したい欲望3



 回想のまとめ第三弾です。





 君が高月あいつの本性を目の当たりにしたのを、隣りで確認しては快感を覚えた俺だったが……


 “つまらない女でも、夏海は真剣に心からお前を愛していたんだ。不器用なりに、お前との愛を大切にしていたんだ。お前みたいな奴を一生懸命愛したあいつの事をつまらない女の一言で片付けるのは……許さない”


 尚弥を巻き込んで高月に復讐した日、俺は自分の足元で座り込んでいる高月のシャツを掴んでそう告げていた。

 傷付いた君を見て俺は長い間秘めていた君への復讐が果たされたと思っていたのに、それでも実際に君の涙を目の当たりにするとその憎悪は君から高月へと移されていたのだ。

 憎しみよりも愛情が強いと判った瞬間とき……やはり俺は、君を完全に憎む事が出来ないのだ。

 そんな俺の歪んだ愛情に光が差す時がやって来たのだ……


 俺が大学を退学した事がメンバーにも判明した日、一人自室で待っていた俺の元に君はやって来た。そして、俺に抱きしめられる君に告げた一言……


 “俺、ロンドンに行くんだ”

 “な、何言っているの?”


 俺の告白に思わず俺の腕を抜けて問い返す君の表情は、とても驚いて蒼くなっていた。今まで離れる事が無かった俺と君の突然の別れは、やがて君の口から思いがけない言葉が出てくる。そして、そんな君に触発されたかのように俺もまたとんでもない言葉を発していた。


 “私、まだ琉依を自由に出来る自信が無いよ……”

 “一緒に付いて来てくれる?”


 なんて勝手な君の告白セリフ……今まで散々俺をいいように扱ってきた君。しかし、そんな君もまた俺は歪んだ愛情を抱いてしまうのだ。

 そして、弱い君に告げてしまった衝動的な言葉。それは、俺が思っていた事とは正反対の言葉。君から離れたいのに、そんな君に付いて来て欲しいと開いた口から出た言葉。

 君とやっと想いが通じ合ったのに、それでも俺を蝕む歪んだ愛情は決して消える事無くむしろ判断力も欠けていくほど増していった。


 君の口から一緒にロンドンへ行けないと告げられた時、俺は何故か君の分のチケットを手配していた……

 君が一緒に行かないと判っているのに、それでも俺は君は俺の元から決して離れないと勝手に決め付けていたのだ。君は俺無しでは生きていけない……しかし、本当に依存していたのは俺の方だったのだ。


 “狂っているよ……宇佐美”


 そんな俺の異常行為に真っ先に気付いたのが、その年に知り合ったばかりの尚弥だった。十年以上付き合いのあるメンバーよりも先に気付いた尚弥は、そんな俺の心の闇を理解しようと何度も俺の話を聞いてくれた。

 君も家族にも言えなかった俺の本音……それを、つい最近知り合ったばかりの人間に告げるなんて俺の狂気も相当限界を迎えていたのだろう。


 そんな不安定な状態のまま迎えた別れの日。俺は空港にいる間も、ポケットの中には君のチケットを忍ばせていた。しかし、君はもう日本こっちに残る事を決意していたので、もはや俺を見送る側として次々と言葉を交わしていく。


 “手紙……書くから”

 “手紙なんか出しても、返事なんか書かないよ”


 “で、電話掛けてもいい?”

 “だめ。一生出ないから”


 自分は日本に残る……そんな君に対してちょっとした意地悪も込めて告げた俺の返答を、当時の君はどう思っていただろうか。

 そして、ついに来た別れの時に俺は君に不覚にも見せてはならない滴を流してしまった。


 ――だ君が恋しいよ


 なんて依存しているサイン……それは、俺がロンドンに到着した時まで枯れる事は無かった。その手には君に渡る事が無かった君へのチケットが握り締められたまま……。


 君と出会って十五年の時を超えて、俺は君を守るため……自分を守るため君から離れる事を選んでロンドンへと旅立った。

 心の中に潜む歪んだ愛情と束縛したい欲望を無くして、いつかここへやって来るであろう君を純粋な気持ちで愛せるようになる為に……

 俺はそんな気持ちを抱き、モデル仲間でありライバルのリカルドと一緒に慣れない環境での生活を始めた。


 しかし、そんな俺を待ち受けていたのは癒しではなく更なる堕落への道だった。



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