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Chain152 パーティー後のお楽しみ


 久しぶりの日本でのショー。君に知られてしまうのが怖いという思いで誤魔化していたが、本当は一刻も早くこの地でショーに参加したかったのだ……





 “ベライラル・デ・コワ”との合同ショーは、大きな拍手と歓声に包まれて成功に終わった。モデル達に囲まれて登場したK2とベルに花束を渡す俺とリカルド。

 “K2”スタッフとして初めての大仕事であった今回のパーティーが無事に成功を収め、やっと肩の力を抜く事が出来た俺は控え室に戻ってシャワーを浴びる。

 「終わった……」

 自然と出てくる言葉の後に出てきたのは、穏やかな笑み。しかし、今回の成功の裏にはたくさんの人々の協力がある。俺が安心して今回の仕事に専念できるよう協力してくれた、兄貴や尚弥……ついでにK2も。そして、“K2”と“ベライラル・デ・コワ”両スタッフに、共に進めてきたリカルド。

 数々の協力があったからこそ、大きな拍手と歓声を頂く事が出来た。


 ご機嫌な状態でシャワー室から出た俺を、リカルドが立って待っていた。そして、手にしていた大きな袋を俺に渡してくる。

 『何? コレ……』

 『俺も貰ったんだけど……開けて開けて!』

 不審がる俺に早く開ける様勧めてくるリカルドに言われるまま、俺はその袋の封を開いた。そんな袋の中に入っていたのは……

 『嘘……』

 『なっ? 驚いただろ?』

 思わず絶句した俺の肩に手を置いて言うリカルドに、俺はただ何度も頷いた。

 袋の中に入っていたモノ……それは、数点の“ベライラル・デ・コワ”の新作だった。次のショーで発表されるという、店頭にも出ていない作品を手に取っては高く上げて広げる。今回のショーの打ち合わせの際に、ベルからそんな話を聞いてはいたがまさかそれを誰よりも先に手に入れる事が出来るなんて思いもしなかった。

 『今回の成功の御礼にって、ベルが帰り際に俺とルイにってくれたんだ』

 『はあぁ……』

 リカルドの説明にも、そんな声しか出ない俺はただ感激のあまり固まっていた。“ベライラル・デ・コワ”のショーには必ず出ている俺とリカルドだから、もちろん作品も数点持っているし愛用している。そんな俺たちへの今回のサプライズは、文字通り本当に驚いてしまった。


 『いいパーティーだったよな。また、こういうイベントをしたいね』

 『あぁ、そうだな』

 手にしていた作品を綺麗に袋に入れながら、俺はリカルドの言葉に頷いて答える。以前ヴァンと仕事した時と同じくらいの感動が、今こうして再び感じる事が出来て俺はこの仕事を選んで良かったと改めて実感していた。

 『あぁ、そうだ。ナオヤが先に店で待っているって、さっき会った時に言ってたよ』

 『尚弥が? じゃあ、今日は本当に来てくれたんだ』

 嫁さんとかなぁ……。俺とリカルドのショーの後の楽しみというのは、尚弥との二度目の食事だった。まぁ、俺の予想ではその時に嫁を紹介してもらえると考えているのだけど。

 しかし、尚弥曰く“俺だけには紹介したくない”タイプだそうだから、可愛い女性なんだと今から楽しみにしていた。でもまぁ、尚弥も俺の性格は知っているからそんなに警戒しなくてもいいとは思っているのだが……



 ―――――



 『宇佐美、リック。これが俺の……』

 『なるほど! なるほどねぇ!』

 尚弥の紹介も虚しく、尚弥の隣に現れた女性を見て思わず俺は手を叩いて叫んでいた。そんな俺の歓声に顔を覆っている尚弥に、状況を理解できていないリカルドと尚弥の嫁さん。しかし、そんな夫に代わって彼女は俺たちの前に一歩近付くと丁寧にお辞儀をする。

 『初めまして。私、浅井の妻でひろ……えぇっ!?』

 『いい、いい! そんな挨拶なんて、君らしく無いよ! 俺達の挨拶はこうだったじゃないか!』

 嫁さんの挨拶もまともに聞かずに、俺はそんな彼女を尚弥に遠慮なくギューッと抱きしめる。初対面の筈の人間からの突然の仕打ちに、彼女はとても驚いては戸惑っている。

 『あ〜、久しぶりの感触だわ。懐かしいなぁ……』

 「き、きゃ〜っ! きゃ〜っ!」

 更にエスカレートする俺のスキンシップに、とうとう絶叫する尚弥の嫁さん。それでも、俺は構わずに抱きしめていたが……


 『宇佐美!』

 バシッという俺の頭を叩く音と共に聞こえてきた尚弥の怒声。その拍子で緩くなった俺の腕から必死になって尚弥の方へと逃げる嫁さん。そんな彼女を未練がましく見つめている俺をリカルドが笑っていた。

 『お、お前! 人妻にも手を出すようになったのか!』

 お腹を抱えて笑うリカルドに反省の色も見せずにへらへら笑う俺。そんな俺を、尚弥は呆れたように見ていた。

 『宇佐美、だから言ったんだよ。紘佳こいつはお前には会わせたくないって……』

 そう言って嫁さんを自分の後ろに隠す尚弥。そんな尚弥を押してもう一度……そう思っても、尚弥がそれを許さなかった。

 『だって、アンタの奥さん梓にそっくりなんだもん。だから、つい手が……』

 梓によく似た尚弥の嫁さんを、俺は惜しそうに見ていた。すると、彼女は梓と同じく顔を赤くしては顔をそらし始める。そんな所までそっくりなんだから……

 すると、そんな俺を呆れた顔を浮かべては尚弥が口を開き始めた。


 『似ていて当然だよ。紘佳は、倉田の従姉妹なんだから……』

 『えっ!? そうなの?』


 そう言って彼女の方を見ると、顔を赤くさせたまま頷く彼女。あら〜、尚弥コイツってば身近な人間に手を出しやがって……。すると、もしかして……

 『ねぇ、尚弥。それなら、アンタは梓と親戚になるの?』

 『まぁ……遠いけれど、そうなりますね』

 尚弥の答えに思わずショックを受ける。だって、俺よりも梓に近い……羨ましい。俺が何を考えているか検討がついているのか、尚弥はそんな俺を放っておいてはリカルドと嫁さんを連れて席に着く。

 それから遅れて席に着いた俺だが、その後も何かと尚弥の嫁さんにちょっかいを出しては尚弥とリカルドによって抑えられる事を繰り返していた。


 それでも、その時の皆の表情は笑っていた……懐かしい時間を過ごす俺と尚弥。新たな友人が出来たリカルドと紘佳さん。それぞれが様々な思いを抱きながらも、皆が笑顔を見せていたのだ……


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