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Chain130 閉じた瞼から見える君


 長かった地獄のような生活から抜け出した俺は、再び昔と同じ光の中へと立つ事が出来たのだ。



 『ルイ〜! いい加減、連絡先教えてよ〜』


 ベライラル・デ・コワのショーのリハが終わった後の俺の元へ、同じショーに出る女性モデルに声を掛けられる。

 『ハイハイ、また今度ね〜』

 『また今度ね〜って、いつもそんな風に言うじゃない!』

 椅子に座って雑誌を読みながら適当に答える俺に、そう言いながらモデルのアンジェは寄り添ってくる。

 その結果、しつこいくらい鼻につく彼女の香水に少々苛立ちを覚えながらも、俺はひたすら雑誌に目を通していた。

 それでもしつこく言い寄ってくる彼女アンジェを見ていると、どこかの誰かを思い出してしまい苛立ちもさらに増幅する。


 『ねぇ。今夜、あたしの部……』

 『ルイ! 次の撮影に行くぞ!』


 アンジェがとどめの一言を言いかけた時、打ち合わせをしていたりカルドが声を掛けてやって来た。そんな彼を見て、アンジェは小さく舌打ちをする。

 そんなアンジェを見て、やって来たリカルドは笑みを浮かべると


 『ア〜ンジェ、お前またモデルを捕まえてはクッサイ香水が付いた体を密着させてるのか?』

 『な、何ですって!?』


 リカルドの言葉に顔を赤くしては俺から離れて叫ぶアンジェを見て、俺は思わずその通りだと笑ってしまう。

 そんな俺に構う事無く、アンジェはリカルドの前に立つと

 『リカルド! ちょっとルイと親しいからって、邪魔しないでよ!』

 『友人だから、毒蛾から守らないといけないんじゃないか〜』

 ギャンギャン騒ぐアンジェに対して、終始落ち着いた態度を見せるリカルド。この二人はよく同じブランドのショーにも出ているが、相性が悪いのか会う度にこうして言い争っている。 ケンカするほど仲が良い……とかじゃなくて、本当にこの二人は仲が悪いのだ。


 そして、今回もやはり期待を裏切る事無くこうしてケンカしている。そんな二人を見ては呑気に笑うのが、毎度の俺の役割だった。


 『リカルド〜、もう時間だから先に行くよ〜』

 『ルイ! あの、ちょっと待って!』


 そんな二人を見ていたかったが、次の仕事の時間なので外へ出て行く俺を後ろからアンジェが声を掛けてくる。

 『無駄だって』

 そんなアンジェの肩を叩きながらそう言うと、リカルドは俺の横へと走って来ては一緒に外で待つ車に乗り込む。 



 俺がロンドンへやって来てはや一年半の時が過ぎた。長いリハビリ生活を終えた俺は、正式にモデルを再開してはこうして数々の仕事をこなしていった。

 もちろん、始めの方はあまり有名なブランドの仕事は入らなかったが、昔からの付き合いがある“ベライラル・デ・コワ”のデザイナーがこうして俺にオファーをくれてからは再び数多の仕事がやってきたのだ。


 『でもね、さすがの俺も未だにヴァンから仕事は貰えていないよ?』

 『それは、アレだ。ヴァンの目が確かなんだよ』


 車の中でボヤくリカルドに、俺はのど飴を口に含みながら答える。

 『ロンドンやパリを始めとする数多の国で活躍しているのに、それでも俺が一番欲しい仕事が貰えないなんて……』

 俺もまだまだだなぁっと呟くリカルドに、俺は笑みだけを浮かべるとそのまま目を瞑る。


 ロンドンやパリで色々な仕事を始めた俺だったが、オファー全てを受けたのではなく“ある条件”をクリアした仕事しか受け入れなかった。


 その条件とは……


 “日本には一切映像も写真一枚すら流れない”事……


 その理由は、君には手紙や電話など一切の連絡を断っているのに、俺がこうして自分の成長過程をやすやすと君に見せたくは無かったから。

 だから、仕事を始めたばかりなのに我が侭だと解かっているがそうして俺は仕事を選んでいた。

 君がロンドンにやって来た時に驚かせたいから……死ぬ思いをしながら俺は廃人のような生活から抜け出したのだ。


 『ルイ? お〜い、寝たのか?』


 微かに聞こえるリカルドの呼びかけにも応える事無く、俺は目を瞑った先に見える君の幻影を追いかける為そのまま心地よい眠りへと体を預けていた。


 いつ会えるか解からない君の姿を思い浮かべては、俺の心も癒されるのだ。



 こんにちは、山口維音です。

 遅れましたが、新年あけましておめでとうございます。今年もこの作品を始め、『これも恋の始まり?シリーズ』をどうぞよろしくお願い致します!


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