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Chain125 無言で自分を責める栄光


 酒と煙草の常習で俺に与えてくれたのは無痛の快楽。しかし、それに溺れれば溺れるほど……俺を責めるものも増えていた。




 『リカルド……?』


 部屋を出てリビングや彼の部屋を見ても、誰の姿も無い。仕事に行ったのだろうか、しかしそれならいつもは出かける前に声を掛けるのに……。

 ずっと眠っていたから、声を掛けずに出かけてしまったのだろうか。そう思いながら移した視線の先には、皿に綺麗に盛り付けてある食事。


 いつものように、リカルドは俺の朝食を作ってはこうしてテーブルに簡単な書置きと一緒に残していた。

 しかし、今までそれに手をつけた事は無い。そして、それは今日も同じ事。酒や煙草の所為で、今の俺には食欲がまったく無かったのだ。それよりも、俺は煙草や酒が欲しい……。飽きるほどこの体に与えたいのに、リカルドがそれを邪魔する。


 この家にあった煙草や酒は昨日で完全に無くなってしまった。そして、また新たに買いに行きたくても鍵を替えてまで閉じ込めるリカルドによって、俺は簡単に外へは出られない。

 内側からはリカルド以外は開けられないよう、十分なロックをされていた。


 煙草も酒も無い……棚にあった酒も、今では俺の部屋の床で空になって転がっている。リカルドがストックしていた煙草も、同じようにゴミと化している。

 それでも足りない俺は、気が付くとリカルドの部屋の中へと侵入していた。彼の部屋になら煙草か酒が隠されている……そう思っての行動だった。


 しかし足を踏み入れたそこは、自分の部屋とは真逆で綺麗に片付けられていた。ある意味生活感を感じさせない部屋のクローゼットには、これまで自分が撮影で着用したであろう衣装も数点ある他、センスのいい私服がまた綺麗に並んでいた。

 そして壁には、リカルドが看板モデルでもある“ベライラル・デ・コワ”のポスターも数枚貼られていた。


 プロのモデルとしての栄光が凝縮された部屋の真ん中で突っ立っている俺は、こう見えてもそんな彼と同じ仕事をしているのだ。

 今でも栄光のど真ん中にいるリカルドと堕落した俺……そんな事実が、今の俺を鋭く責め始める。


 お前は何をしているのか? ……そう無言のプレッシャーをこの部屋は与えてくる。


 リカルドが……俺を責めている……



 ―――――


 『ただいま〜。ルイ、起きているか?』


 玄関のドアを開けて、リカルドのいつもの明るい声がかすかに聞こえてくる。そして、そのままリビングへ進んだのか荷物を置く音も微かに聞こえてくる。

 『ルイ? チョコレートを貰ったんだ、一緒に食べないか?』

 そして次は俺の部屋に行ったのか、どうやら俺を探しているらしい。しかし、散乱している俺の部屋にいない事が解かったのか、やっと自分の部屋へと近づいてきた。


 『ルイ……?』


 出かける前にはちゃんと閉めていたドアが開いている事に不審を感じたのか、ゆっくりとリカルドが顔を覗かせている。さっきまでの明るい声は、やがて暗く低いものへと変わっていた。

 外はもう暗く、電気を点けなければ部屋の中は見えない。しかし、その時のリカルドは電気を点けなくても自分の部屋に起こっている状態を把握できたのだろう……俺が中に居る事を完全に把握していた。


 『そこで、何をしているんだ?』


 部屋にいる事は解かっていても何も返事をしない俺に問い続けるが、“俺”はそれでも返事はしなかった……いや、出来なかったのだろう。


 何故なら……


 ガタンッ! バタバタ!


 『ルイッ! しっかりしろ!』


 俺の目に微かに映ったのは、電気に照らされた部屋に飛び込んで来ては俺の顔を覗き込んで必死に俺の名を呼ぶリカルドの声だった。


 そこからは、俺の意識は暗く閉ざされていった……



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