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Chain102 そして小鳥は自由になる


 俺が親友と過ごしている間、君には変化が起きていた……




 その夜……



 「それじゃあ……俺、帰ります」


 そう言ってシャワーも浴びずに着替えると、ベッドで横になっている女を残して車のキーを掴もうとする手を女が掴んできた。

 「ねぇ、朝までいたいと言ったらダメ?」

 「分かってるくせに、俺がそういうの嫌いだって事」

 丁重にその手を離すと、そのまま俺は部屋を後にした。マンションの自動ドアを出ると、ひんやりとした風が俺の体に吹き付ける。そして、ポケットから一枚の名刺を取り出す。


 “○○美容専門学校 理事 杉田夏子”


 それを細かく破って空中に投げ捨てる。これであの女とも終わり。一度きりの関係なのに、こんな名刺を押し付けてくるなんてルール違反だよ。そんな目で女の部屋を見上げると、案の定女が窓からこちらを覗いて軽く手を振っていた。

 そんな風にしても、俺は媚びたりしないのに……。


 君が高月賢一と付き合ってから、俺は何事も無かったかのようにこうしてまた幾多の女性たちと関係を持ち始めたが、やはりそこには俺が満たされる場所は無かった。体を何度重ねても、俺は空気を抱いているかの如くただ空しさが残るばかりで……

 「これも全て俺が悪いんだけれどね」

 車を運転しながら自然と零れた笑みは徐々に暗い表情へと変化していく。俺がこうしている間も君は今頃はあの男と会っているんだろうか。会って楽しい会話をして、キスして体を重ねて……今まで俺としてきたことを今度は恋人という名の男と。



 家に帰っても両親は海外にいるし、兄貴は仕事中だから当然誰もいないこの家がとても広くそして空しく感じる。いつの日かは君の笑い声が絶えない場所だったのにね。

 「馬鹿馬鹿しい……終わった事なのにな」

 ボソッと独り言を言うと、そのままベッドに倒れこんでそのまま眠りに付く。その頃、君に何が起きたかも分からずに……




 〜♪〜♪


 早朝なのにしつこく鳴り響く携帯の着信音で目が覚める。関係を持った女性たちは俺の番号など知る筈もないから、メンバーの誰かか? そう思って携帯に手を伸ばす。

 「……はい」

 寝起きだったので声ももの凄く枯れている。ったく、梓以外だったら怒りますよ?

 「琉依? お願い迎えに来て!」

 夏……海? どうして君がこんな時間に掛けて来るんだ? アイツは? まだ残る睡魔に抗いながら今起きているこの状況について色々駆け巡らせる。

 「……何? また飲んでいたの? で、今どこにいるの?」

 高月はどうした? と言いたいのを我慢してとりあえず居場所を尋ねる。なんだかんだ言って、既にベッドから出て着替えてる俺も甘いのだろうけれど。

 「ホテル? クイーンホテル」

 「ホテル!?」

 思わず叫んでしまいそのまま切ってしまった。クイーンホテルは聞いた事があり、ラブホでは無いがどうして俺がヤッて朝帰りの幼馴染みを迎えに行かなければならないのか……。

 「馬鹿らしい」

 そう言って携帯を投げると再びベッドに倒れこむが、しばらくして投げた携帯を拾って車のキーを持って階段を降りて外に出る。そう、なんだかんだ言って俺は君に甘い男なんだ。こんなの君の為にならないんだけれど。



 車を走らせると、見えてきたホテルの看板。そこに向かって走らせると、ホテルの傍で俯いて座り込んでいる君を発見。見たところ一人だが、アイツはどうしたんだ? まさか、一人で帰った訳じゃないだろう。とりあえず車から降りて君の傍まで近付き声を掛ける。

 「おうち、帰ろうね」

 その一言で君は顔を上げたが、すぐにその瞳から涙が溢れては流れていた。そんな君を抱き上げると、そのまま車の方へ戻り助手席に座らせて発車させた。



 一体、何が起きたのかと思っていた俺に、君は丁度その答えを俺に与えてくれた。

 「賢一にね、振られたの」

 ……何だって? 高月に振られた? 何故?……次々と疑問が出ていたが、それらを全て飲み込んで

 「そう」

 その一言だけを素っ気無く口に出した。ちらっと横目で見たが、君はただ俯いたまま。君は何も聞かない事に対して、俺なりの優しさとまた勘違いしているのだろうか? 

 それから君も俺も何も話さず、沈黙が続きそのまま君の家に到着した。何も言わず車から降りる君に俺はただ

 「じゃあ、また後でね」

 そう言うと、君は頷いて門の方へ足を進めて行った。それを確認するとそのまま車を発車させ自分の家に向かう。


 「……そう、高月に振られたんだ」

 そう、じゃあ君はまた自由に飛び回っているんだね。俺がせっかく君から離れようとロンドン行きを決意した時に、よりによってそんな時に君は再び自由になってしまったんだね。


 でも……


 「……いい気味」


 そんな時でも脳裏に浮かんでいたのは、君の泣き顔だったんだよ

 そして、俺の口元は自然と笑みを浮かべていたんだよ……


 それでも……今頃君は、俺の歪んだ感情を勘違いしたまま優しさと受け止めているんだ。



 やっと、シリーズ第1弾の設定にたどり着きました。次回には、尚弥も登場致します。


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