五話「メール」
「いやー、本当にごめん。あの時は動揺してて・・・」
「あのなぁ、照れ隠しだとしても頭が数ミリへこむほど強く叩くか、普通? 飛んだ災難だよ・・・」
「だからごめん・・・。もし本当に頭へこんでたら治療費出すから・・・」
当たり前だ、と吐き捨てる。
頭を強打するという事態が起きながらも図書室での仕事は無事終わり、俺たちは帰路に着いているところだった。
「で、結局、なんで俺を叩いたの? まさかだとは思うけど本当に照れ隠し?」
「て、照れ隠しじゃ、な・・・・・・そうだよ、照れ隠しだよ。恥ずかしかったのよ!」
草本はむきになって投げやりな感じになる。
「でも照れ隠しでそこまでするか? 前に和也もお前に同じようなこと言ってなかったっけ。そのときはこんな反応しなかったじゃん」
「えっと・・・それは・・・」
草本は突然立ち止まる。
「草本?」
俺も足を止めて振り返り、彼女を見る。
「だって・・・私は・・・私は・・・」
そう呟きながらほおを紅潮させてモジモジと指をいじる。
その仕草に思わずドキッとする。
「私は・・・私は・・!」
彼女はキッと俺を見てくる。瞬間、彼女の顔がさっきよりも赤くなる。トマトみたいだ。
・・・なんなんだこいつは?
「私は・・・私は・・・こっちの道だから! じゃあね!」
彼女はどもりながらそう言い残し、そのまま左の道に、走って消えていく。
今のは一体なんだったんだ? それに・・・
「俺も帰り道そっちなんだけど・・・」
家に帰ってテレビを点けると、例の失踪事件のニュースがやっていた。
「発見された大島聡樹さんの話によると、失踪直前に不審なメールが一通送られてきたらしく、現在警察はこのことを調べるためにも大島さんの自宅を捜査中です。ただ、これは単なる迷惑メールの可能性もありますが、手がかりは今のところはこれしかありません。このこと以外には何も覚えていないらしく・・・」
「不審なメール、ねぇ。事件に関係してるのかそれ?」
「そんなことよりお前と女の子のメールは恋愛に関係してるのかー?」
「ああ、そうだな。あんたが黙れば俺があんたを殺害する事件はなくなるな」
親父を黙らすためにそんなことを言う。
親父は、その言葉にショックを受けたのか、母さんの胸にうずくまってわんわんと泣きじゃくっている。母さんはそんな親父を撫でてあやしている。
「母さ〜ん、宗谷がいじめるよ〜」
「おーよしよし。あら? 宗谷、二階行くの?」
「ああ。リビングでテレビ観てるより、部屋で勉強してるほうがゆっくり休める気がするからな」
そう言い残して、俺は自分の部屋へと向かった。
部屋に入ると、壁際にあるベッドに横に倒れる。
「うう・・・疲れた。図書室で仕事といい、草本の謎の行動といい、親父の空気読まない発言といい・・・なんか今日は無駄に疲れるな・・・」
思わずあくびがでる。なんだか眠い。
するとポケットに入れてある携帯からメールの着信音が鳴る。
目をこすりながら携帯を取り出し、画面を開く。
メールが一件きていた。それも知らないところから。
件名には「心得」と書かれている。意味がわからない。メールを開く。
『件名 心得
本文 生き残りたいのなら戦え。
戦わなければ生き残れない。』
そこにはこう書かれていた。
誰がこんなメール送ってきたんだ?
俺は思いまぶたをうっすら開けながら考える。
メアドまで変えてこんなわけのわからないメール送ってくるのは・・・草本、ではない。クラスの信原、でもない。やっぱり和也、か?
意識が朦朧としているせいか、頭が回らない。
・・・ったく。メアドまで変えて、意味不明な件名や文章を、送って、きやがって・・・あいつに明日・・・文句・・言って、やろう。
今は・・・眠い。もう、寝よう。
まぶたをゆっくり閉じる。
こうして俺は、何もない無の世界のように暗くて深い闇へと落ちていった。
長編小説ランキングに投票
よろしければ投票お願いします。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。