56、新たな料理人
さて、店を出てエリーゼの店の様子を見にいこうと思ったのだが、先に土中のところにいこうか。
多分エリーゼの店はうちと同じような有り様だろう。
しかし、よくあの値段でみんな買うよな。
まあ、一過性のものだろうけど。
そういえば、オークションに米を出した時も異様な値がついたな。
そんなことを考えていたら、ポツポツと屋台らしきものを出しているものがいるのに気がついた。
焼鳥のようなものやお好み焼き、焼きそばなんかを売っているようだな。
昨日の店の売上はいつもより多かったが先住のダンジョンマスターが出しているのかな?
屋台の後ろの方におれが売ったであろうパペットがいるのが見える。
多分一時のものだろうな。
お祭りには屋台が必要だと思ってやっているのだろう。
しかし、その屋台を見つめてため息をついている者もいるようだな。
ポイントがギリギリのダンジョンマスターのようだ。
まあ、男だからほおっておくかな?
新規ダンジョンマスター全員を救えるほど俺の手は広くないからな。
ん?視線を感じるな、前の屋台の客からか。
店主と話ながらこっちを見てそして近づいてきた。
「あの~少しよろしいでしょうか?」
「何の用かな?」
「あそこの屋台の店主さんからあなたが食材を卸していると聞きました。私もお店を開きたいんですが、食材を卸していただけませんか?」
「商談かな?」
「ええ、そうです。あ、ここではなんですのでうちの店にいきませんか?」
さて、どうしようか?
エリーゼや土中の様子を見にいくつもりだったんだがな。
まあ、約束した訳ではないし少し付き合っても問題なかろう。
こいつがどんなものを作りたいのかも興味があるしな。
「その前にすることがあるだろう?」
「え、なんですか?」
「自己紹介だよ。俺はネスだ、よろしく。」
「あ、すいません‼サンガと言います。よろしくお願いします。」
そういって握手を交わしサンガの店にいくことにした。
サンガの店はエリーゼの店と真逆のところにあった。
「なにもありませんがどうぞ気楽にしてください。」
本当になにもないな。
あるのは備え付けのカウンターとイス、後はナビピクシーの寝床位だな。
「お恥ずかしいところで申し訳ありません。」
「いや、気にするな、ここに来たのは今日が初めてだろう。人を呼ぶ予定がなければこんなものさ。」
「そういっていただけると助かります。さっそくでわるいのですが、仕入れの相談をさせていただきたいんです。」
「ああ、なにがほしいのかな?ただし向こうの世界のようにはいかないぞ、特に卸しの場合はな。たとえば、牛肉の一定部位だけ欲しいとかは無理だからな。それに肉なんかはモンスターを解体したものだから、値段は召喚費用+αだからな。」
「え、そうなんですか?参ったな。そこまで要らないんですよね。」
「まあ、とりあえず欲しいものをあげてみな、融通が利く範囲で対処できるかも知れないからな。」
「そうですか?では、まず欲しいのは、鶏ガラ、豚骨、ネギ、玉ねぎ、…………………………。」
ラーメンか、まあ、大体のものは在庫にあったと思うのだが、しかし問題は豚骨と昆布かな。
豚,猪は手持ちにいないし、野生のオークを使うのは嫌だな。昆布は気候的に取ることが出来ない。その事を伝えると別段気にした様子もなく、こういった。
鹹石はないが苦汁は成分が近かったように思う。
「無いものは仕方ありません。後は創意工夫でなんとかできます。どのみち向こうの世界とは違うことは理解しています。それに苦汁でも麺は打てますし、他にも手段がありますから問題ありません。」
「そうか、ならいいんだが、そういえば道具類はどうする?どんぶりなんかは俺の所でなんとかなるが寸胴なんかは無理だぞ。」
「え、そうなんですか?ポイント購入にもなかったのでどうしましょう?」
「知り合いに鍛冶をしているやつがいるから紹介してやろう。」
「お願いできますか?」
「作れるかどうかは知らないが当たって見てもよいだろう。じゃあいこうか。」
「ハイ、お願いします。」
金属加工なら土中に任せておけばなんとかなるだろう。
エリーゼの所にいくのが遅くなりそうだ。