閑話、リザードマンたち
会話はすべてリザードマン語です、
リザードマンside
沼地の中にいくつもの20余りの小さな浮島が集まって浮いている。
リザードマンたちによって葦が束ねて作られた人工の島だ。
普段は物静かなその日村は騒然としていた。
子供が3匹居なくなったのだ。
「おい、いたか?」
「どこにもいないぞ。」
「いったいどこにもいったんだ?」
皆で探し回っているが見つからない。
子供たちの泳ぎではせいぜい島の間を行き来するのが精一杯のはずで自らの外に出ていったとは考えづらい。
「おい、大変だ‼託卵場の卵が消えているぞ‼」
「何?」
「託卵場は村の中央の浮島の中だぞ‼空でも飛べないと誰にも気づかれずに盗み出すことはできないはずだ‼」
「いったい誰が?」
ザワザワ
「そういえば、ギエとガァがいないな?あいつ等どこへ行ったんだ?」
「昨日から見ていないな?誰か見た奴はいるか?」
「まさか、あいつ等が?」
「ばかを言うな‼あいつ等がそんなことをする必要がないだろうが!!」
「では、いったい?」
「おーい、みんな、こっちに来てくれ‼」
村の入り口から呼ぶ声がする。
そこには、外に探しにいったリザードマンたちが傷ついて気を失った2体を背負ってやって来た。
「ギエ、ガァじゃないか、とりあえずワシの巣に運び込むのじゃ‼」
長老が二匹を託卵場の隣にある自分の巣のある大きめの島に運ぶように指示を出した。
「いったい誰がこんなことをしたんだ?」
ザワザワ
「エエイ!!静まらんか!!今は二匹の傷を治療して目を覚ます様にするのが先決じゃ‼騒ぐでない!!それよりもはよ呪い師オババを呼んでくるのじゃ‼あと、名持ちのものを集めよ、他の部族のもののじゃ、我ら鱗族の一大事じゃての!!」
数匹のリザードマンがあたふたと飛び出してゆく。
そして真っ白な一匹のリザードマンをつれてきた。
「騒がしいな。何事じゃ?」
「早速ですまんが見てやってくれ、白鱗のオババ。」
「で、患者はどこだい?」
「こちらです、オババ。」
オババは寝ている二匹のもとに行き診察を開始した。
「どうじゃ?オババ?」
「話を聞かんとわからんが大型の猛禽類のような生き物にやられた傷のようじゃな。傷はそんなに深くはないようじゃがショックで気を失ったようじゃ、綺麗な水を汲んで来ておくれ。」
「おい、水を汲んで来てくれ。」
「わかりました。」
「とりあえず傷口を洗って薬を塗っておけばいいじゃろう。命に別状はなかろうよ。しばらくすれば気がつくじゃろうて。」
オババは傷口を洗い薬を塗り固定の為の布を巻いた。
「こんなところかの。」
「オババ、確認なんじゃが、猛禽類の傷に間違いはないのじゃな?」
「そじゃの、人位の大きな猛禽類の爪の傷があったの。獣やわしらのようなものが噛みついた傷で爪や刃物の傷でもないしの。」
「そうすると西に現れた犬人間でも、人形どもでも蜂でもないのか。」
「傷から見るに違うと思うのじゃが、、、。」
「となれば考えたくないんじゃがハーピーどもの可能性が高いのか?」
「こいつらが気がつくまでは早計に答えを出すのは危険じゃよ。あとはわしがみとるでお主は今後どう動くか考えておくんじゃな。」
「わかったよ、オババ、こいつらが気がついたら教えてくれ。」
「わかった、わかったからはよいけ。」
しばらくして
「ン?ここは?」
「おお、気がついたのか?」
「え~、そうだ‼ガァは!!」
「落ち着くのじゃ。ガァはそこで寝ておる。」
「よかった、子供たちは?!」
「子供らは…おらん。」
「……そうか……。」
「お主に聞きたいのじゃがなにがあったんじゃ?」
「俺は、ガァと一緒に子供たちに頼まれて村の外に行ったんだ。そんなに遠くじゃない。すぐそこの風に流された浮島までだ。子供たちでも泳いでかえることのできる場所だったのでまあいいだろうとかるい気持ちでつれて行ったんだ、少し体を暖める為に浮島の上で寝転んでいたときはいきなり空から大きな鳥のようなものに捕まれて気を失ったんだ。」
「ほか、相手の正体はわかっとるのかの?」
「悪いが覚えていない。ただ、鳥の羽音だけが耳に残っている。」
「わかった、もう少し休んでおれ。」
オババはギエを寝かしつけて巣からでた。
そこに各部族の名持ちと呼ばれる強者が集まっていた。
「オババ、話は聞けたか?」
「豪腕のダガじゃの。やはりハーピーどもが濃厚じゃよ。しかしわからんの?なぜ、あやつらが?」
「理由等どうでもよい。あいつ等が子供たちや卵を連れ去った‼」
「落ち着くのじゃ、蒼鱗のクウガよ。」
「これが落ち着いていられるか!!我ら鱗族は同胞を見捨てたりはしない、同胞は必ず救う。恨みは果たす。それが鱗族だ。」
「蒼鱗のいうとおりだ。」
「ハーピーどもに目にもの見せてやるわ‼」
「みな‼戦の準備だ‼」
「「「「おう‼」」」」
雄たちは戦の準備の為に走り去った。
「何か見落としがある気がして仕方ないのじゃが、」
オババが皆の去ったあとポツリと呟いた。