閑話 とあるダンジョンマスターの食生活
俺の名は、モーブ、20層のダンジョンの主だ。
最近できたダンジョンの街で評判のエリーゼの店に来ている。
店主のエリーゼはスレンダーな若い狐人の女性でとても人気がある。
俺もよく通っているのだが、とにかく飯がうまいんだ。
ダンジョンマスターになった当初は、悲惨だったな。
特に飯の問題が大いに困ったんだ。
ダンジョンポイントで買えるものは、黒パン以外は素材しかなかった。
黒パンと野菜や果物を丸かじりする日々だったな。
料理?最初はスキルを取ってやったけどな、よくわからん物質ができていた。
ダンジョンマスターになる前だって料理なんかしたことがなかったんだからしかたないだろう。
唯一芋を茹でることは覚えたので少しましになったのか?
しばらくして誰が出品したか知らないが、パペットをオークションに出したものがいたんだが、ランクEのモンスターに2000ポイント近く出すのはどうかとおもい、放置してしまった。
後で聞いたのだが、料理スキルと家事スキルを保有していたそうだ。
落札したものは食生活の改善されたといっていたな。
次第に貧しい食事にも馴れて来た頃、ダンジョンが開放された。
攻略に来た冒険者との戦いや知恵比べは、心踊るものがあり楽しいものだった。
とある時に、ダンジョンのなかで冒険者を捕縛することがあった。
男なんかどうでもよかったが、外の情報を取ってみようとおもい捕縛することにしたんだ‼
本当だぞ‼
女の子捕まえて、あんなことやこんなことしようなんて思ってなかったんだぞ‼
しかし、前世では、魔法使いで間もなく妖精さんになりかけていたからな。
俺のなかで野獣が暴れだしたのはしかたないだろう。
結果を言うと男は情報を得たあと殺したんだが、女は一人がおかしくなり、一人は自殺していてしまった。
ただ、お気に入りのおもちゃが壊れた位の感情しか出なかったのが、人とは違うものになったことを自覚させられた。
そう思うようになると人類の女性にさほど興味を失った。
捕縛するのが、週1,2人位捉えるようになったが、活用法がイマイチない。
オークションに女を出して見たがまったく売れない。
ふと、家事をさせればよいと考えてさせて見たんだが、冒険者になるような女に家事は向かなかった。
掃除は適当だし、洗濯もイマイチだが、自分でするよりはましなので、まあいいか。と思うのだが問題は料理だ、一応作れはするんだが、とりあえず食べれるといっところだな。
下手と言う訳では無いらしいが、庶民の料理がこんなものらしい。
店等やっているものや貴族の食事はもう少しよいものらしいが、冒険者をしているものにそれを求めるのはこくだな。
食事に諦めかけていた頃に、ダンジョンマスター用の街ができた。
ちょうどそのころ、割りと強い冒険者に攻められていて手が離せなかったので街にいくのが2日ほど遅れた。
閑散とした街の一角に行列ができている。
そこは狐人の女がやっている飯屋だった。
行列に並び店内へ入るとそこかしこでうまそうなものを食べている。
そこから懐かしい醤油や味噌の香りが鼻をくすぐる。
カウンターでお好み焼きを買い空いている席に持っていく。
ソースではなく醤油が塗られたものを箸を使い一口食べる。
………………。ああ、これは…………。前世であれば絶対に文句を言うようなものなのに………………。
俺の心に《うまい》と言う言葉しか出てこなかった。
懐かしい醤油の香りが、キャベツの甘みが、心をゆさぶる。
気がつけば、俺は泣きながらそれを食べていた。
そして、俺は《ご馳走様》と食を与えてくれた女神に感謝を込めて呟き、明日もこようと心に決めた。