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嫌がらせって優しさかもしれない

作者:十蛇秋紅
思いつきで書いてみた
「エルーナ・ヴォルケン!貴様がアウラ・ヴィスタに対して、夜会で悪質きわまりない嫌がらせの数々を行ってきた事は分かっている。俺の恋人に対してその心身を傷付けた事は伯爵令嬢として、いや、人として最低だ!我が婚約者として相応しくない!」

「それで?」

「貴様のような女を我が家に迎える気はない!貴様との婚約を破棄する!」

「で?」

「それだけではない!貴様は十分に罪に問われるような事をしたのだ、司法院に訴えを出させてもらうぞ!」

「?」

・・・何が言いたいんだろう、こいつらは?
私の周囲を囲んで敵意と怒りに満ちた目で睨んで来る、相当顔の良い男達と可憐な儚げ美少女に訝しげな目を向ける。
何か言いたい事があるなら、要点を絞って箇条書の書状を差し出すところからやってくれないだろうか。話が面倒だから。

「聞いているのか!」

「聞こえてはいるけど、何言ってるかは分かりませんわ」

「白を切ると言うのか!」

「なんで私に言うの?」

しれっと返すと、男達の視線が一段と鋭さを増したが、知った事か。私はつまらない茶番に強制登場させられて不機嫌だから。

「婚約破棄したいなら、両家の親に言って。私が何回も婚約破棄したいって言ったって、「お前に決定権はない」って言われたのよ?決定権のない私に、婚約破棄したいって言われたって知ったこっちゃないわよ」

イライラと扇でパシパシ掌を叩きながら言うと、何故かぽかんとされた。
なんだ、泣いて縋るとでも思ったか。
元来、こんな夜会の類にはデビューの一回以外、力一杯拒否ってきたのに、陛下の名を使ってまで呼び出したのはどこのどいつだ。

「そういう事は私に言わないで。ホントに腹立つから」

婚約破棄についてはこれで終了、もう話す気もない。
さて、次に嫌がらせだったか?
なんで婚約破棄したい程、顔以外取り柄のない男のために見ず知らずの令嬢に敵意を向けなきゃならないのか。熨斗と菓子折りつけて満面の笑顔で謝辞を述べながら差し上げたいぐらいの代物なのに、誰が盗らないでと泣くものか。

「そもそも、夜会に来たのはデビュー以来2回目よ?そんな、見ず知らずの令嬢に嫌がらせするために面倒臭いドレスなんか来て着飾ってくるわけないじゃない」

「嘘だ!年末年始の夜会だって、伯爵家主催の夜会だってあるのに、2回目なんてそんな嘘通じるとでも思ったか!」

ドヤ顔で言ってくる婚約者だった男に、泣きながら「どうか罪を認めてください」とか言ってる女。
・・・この女は何がしたいんだろう?

「私をエスコートした記憶ある?自称・元婚約者?」

「う・・・でも」

「毎回毎回病欠よ。ドレス着るぐらいなら、毒を煽って体調不良になるわ」

女の子の感性は私の中ではお亡くなりになっております。
ちなみに。罪を認めてくださいにも答えてあげたんだよ?
出席必須の夜会に毎回自ら毒を煽って病欠していると自白してあげたんだから。あとで怒られそうで怖いけど。

「っ、でも!嫌がらせの事実はあったのだ!言い逃れするつもりか!?」

「私がやったの?」

「ああ!アウラがそう言っていた、間違いない!」

「私がやったと?」

「ああ!そうだよな、アウラ?」

婚約者が優しく聞けば、令嬢は目に涙を浮かべて頷いた。ぽろりと涙がこぼれ落ちる。

「はい・・・わ、私も最初は信じられなかったです。でも、何回も何回も・・・お、恐ろしくて、我慢していたのですが、エルーナ様に、これ以上罪を重ねて欲しくなくて・・・!」

泣き崩れる令嬢に、元婚約者が抱きしめる。私は無表情でその光景を眺める。令嬢の取り巻きが睨んで来るが、知るか。

「貴様・・・これを聞いても何とも思わないのか?」

「なんとも?」

「貴様!」

つかみ掛かる勢いで来る男を軽く脛を蹴り飛ばして転ばす。さりげなくやったので、勢いつけて転んだようにしか見えないだろう、ざまぁ。

「私、今何もかもが面倒臭いの。だからもう口調とかどうでもいいわ、言葉選びも面倒だし」

今更なことを呟き、侮蔑を全力で込めてアウラとか言う令嬢を見る。

「何聞いてたのよ?あんた。馬鹿じゃないの」

「ひ、ひどい・・・」

泣き出すけど、普通に考えたらわかるでしょうに。

「なんで私があんたに嫌がらせするの?」

「それは、もちろん貴女が彼を愛してるからです。だから、邪魔な私を排除しようと...」

「何聞いてたの、花畑頭。私、ソレと別れたかったのよ?ソレに他に女が出来たって知って、やったぁっ!て思ったぐらい」

心の底からの本音に、何故か全員ポカンとした。

「なんで?いつ私がソレのこと愛してるなんて言ったの?むしろあんたに対する嫌がらせを抑えてあげたのよ、あんたの彼氏たちが何もしていない間に」

「彼氏って」

「まともに自分の婚約者と今後についての話し合いしないで、ポッと出の女といちゃつくから、普通に将来あんたの彼氏たちと結婚するつもりだった令嬢たちは怒り心頭よ?あんたさえいなければと思うのは当然でしょ?」

ずっと婚約者として拘束されたままだと、新しい婚約者選びもできない。手遅れになってから捨てられたのではたまらない。
相手が何も言わない以上、このまま結婚するはずなのだから、良好な結婚生活を邪魔する泥棒猫に消えてもらおう。
そう思うのは、普通だと思うのだが。

「貴女。自分の状態分かってる?大勢の男が騎士みたいに自分を守ってくれるなんて幸せ♪な状態じゃないわよ?」

「え?」

・・・やっぱり、状況を理解してなかったみたいね。まぁ、自分をお姫様とでも勘違いしてる痛々しい女だしね。

「この男達は、今後の事を何も考えないであんたに愛を囁いてるの。あんたとの将来だって考えてないし、親の決めた女を捨てるつもりもないのよ」

「違う!俺たちは真剣にアウラの事を!」

口々にどれほど真剣にアウラとの事を考えてるのかという事を喚き始めたが、そんなもの口先だけだ。行動と言葉は矛盾しているので、そんな男の言葉なんて聞かない。

「じゃあ、なんでアウラさん?と愛し合う前に婚約破棄してないの?彼女に愛を囁く他の男を排除しないの?婚約者との仲について親と相談してないの?彼女との事を真剣に考えてるならおかしいでしょう?」

言われる度に彼女の顔色が悪くなってくる。

「若気の至りの恋愛ごっこを楽しんでるだけ。結婚する頃には捨てる予定の玩具。嫌がらせは、優しさなのかもしれないわ?」

とっとと身分違いの恋愛なんて甘い夢から覚めて、身の程を思い出すべき。さもないととことん搾取されて汚されて行き場を失うのだから。そういう令嬢達の、憂さ晴らしを兼ねた優しさ。

真っ青な顔で震える彼女と、顔色の悪い男達。

夜会は気まずいままお開きとなった。


私は無事婚約破棄した。
喜んだ私は、全ての身分を失った彼と結婚した彼女に菓子折と熨斗にそれなりの現金をつけて満面の笑顔で謝辞を述べて手渡した。夢から覚めた彼女は現金を一番喜んでいたけど。
お花畑だった今までの自分を黒歴史として封印した彼女はなかなか強く成長したので、今や彼女とは良き友である。

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