闇守護業 6《赤賊》(11/13)PDFで表示縦書き表示RDF


闇守護業 6《赤賊》
作:祐太



第二章『変人達の交響曲』(5)


「あなたなんかこのエンジェルがやっつけちゃうから!」

「……」

「な、何か言ってよ! あたしは負けないわよっ」
「…………」
「こ、恐くなんかないもんっ、恐くなんか……」
「………………」

 周囲を見回し、真と純也はやっと澪斗の姿を確認した。いつも通り険しいその視線の先に、幼い長髪の少女が一人。
「もしかして澪君の相手って……」
「あの嬢ちゃんなんか……?」
 少女も真剣な顔で睨み合いをしているが、くりっとした眼がどうも可愛らしくて恐くない。見つめられたら抱きしめたくなるほどの愛嬌だ。歳は十歳程度ではないだろうか。

 じーっと澪斗は黙ってただエンジェルを見つめる。睨んでいるつもりなど無いのだろうが、普通のその視線が恐いのだ。少女の瞳が、潤み始める。
「うっ、うぅっ……っ。エンジェルは負けないもん……ヒック……こわ、恐くなんかない、もん!」

「……あのさ真君、なんだか澪君が悪役に見えるよ……」
「澪斗は何もしてないんやけどなァ……」
「してはいないんだけどねぇ……」

 彼は、ただ敵を前にしているだけだ。たったそれだけ。そう、いつもの彼の瞳で。

「いくわよっ、エンジェルの得意技! 催眠の術〜!」

「え、あの子催眠術が使えるの?」
「人は見かけによらんなァ。あの澪斗相手に頑張るわ〜」
 トテトテと走り寄って、少女は至近距離で男を見上げ、人差し指を高々と突き出す。澪斗はその顔に向けられた指に視線を移した。

「えーいっ」

 ゆっくりとエンジェルは指を回し出す。ぐるぐると何度も何度も指を動かし続けて。


「……何、あれ」
「……知っとるか純也、あれをトンボの前でやると捕まえられるんやでー」
「ゴメン、東京でもうトンボは見られないよ。っていうか、澪君昆虫扱い?」

 トンボを見たことがない純也に、真が豆知識を教える。新たに手に入れた無駄知識よりも、純也はその技が人間に効くのかどうか医学的に考えてみた。……たぶん、効果皆無。

「……」
「い、いつまで耐えていられるかしらっ? 早く倒れなさい!」
「…………」
「早く……は、やく……」

 とかなんとか言ってる間に、少女の方が倒れてしまった! 目を回して地面にへたり込み、クラクラと小さな頭が揺れる仕草は、星が飛んでいてもおかしくない可愛さ。

「ふにゃにゃぁ〜……世界がグルグルぅぅ〜……」
「おぉっ、澪斗が相手の自滅を誘いおった!」
「違う……絶対になんか違うよねコレ……」
 どんどん警備とは違う方向に流れていく。いや、ヒーローごっこをしている時点で気付くべきだったか。

「まだだよっ、まだ負けないよぉ!」
 なんとか立ち上がったエンジェルが、最後の足掻きをみせる。澪斗の腰あたりまでしかない背で、ポカポカと男の腹部を叩きはじめた。



「…………もう、いいか」


 冷たく低い声が放たれ、彼の仲間に氷柱が突き刺さる。細い腕で叩かれながら、男が腰から取り出したのは一丁の銀の銃。
「ちょ、ちょっとっ、まさか澪君撃たないよね!?」
「あかんって……しかもあれはノアやなくてマグナムや……!」
 激鉄を起こし、ゆっくり、だがずらすことなく少女の眉間に銃口を突きつける。髪で隠れた暗い顔で……引き金を……!


「「待ったあぁ――――っ!」」


 純也と真の二人がかりで澪斗に飛びかかり、地面に押しつけ、のし掛かった。淡緑の髪が抵抗して揺れる。

「貴様ら、何をする!」
「澪斗本気か!? 嬢ちゃん相手にマグナムはないやろっ?」
「やめてよ澪君っ、本当に悪役になっちゃうからー!」
「俺はこんな猿芝居に付き合ってやるほど愚かではない! 貴様ら皆殺しだあぁ!!」

 やけに黙っていると思ったら、とっくに我慢を切らしていたらしい。二人に押さえ込まれながらジタバタと暴れまくる。

「俺は負けん! 徹底的に潰す!」
「澪君どうしたのっ、いつもの冷静さを取り戻してー!」
「わかった! あんたの勝ちでエエからっ、だから大人しくしてぇな!」

 変な格好をさせられた上に恥ずかしい台詞を叫ばされ、更に敵は幼女。澪斗だって怒りたくもなるだろう。……ここまでもった事を感心するべきだろうか?



「あ、あのぉ……」

「なんやねんっ、今こっちは取り込み中やで!」
「す、すみません……。でも自分はあなたと……」
「は?」
 真が顔を上げると、気が弱そうで地味な男が恐る恐るこちらを窺っている。(こんなヤツいたか……?)と真が記憶を辿っていくと、そういえば。

「えーっと、確か……スフィンクスとか言ったか?」
「はい、そうです。ロスイエローさん、自分達が残っちゃったんですけど……」
「あぁ……せやな、一応戦っとく?」
「どど、どうかお手柔らかに……」


 ロスレンジャーVSレッドスティラーズの戦いに、ついに決着がつくのか!?
 死闘の果てに勝つのはどっちだ!?







 ……誰もの思考から、本来の目的は忘却の彼方……。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう