闇守護業 6《赤賊》(10/13)PDFで表示縦書き表示RDF


闇守護業 6《赤賊》
作:祐太



第二章『変人達の交響曲』(4)


「「てやあぁぁ〜!」」

 様にならない高い声で、ピンクと銀の女二人がぶつかる。石とスパナを投げ合ったりして、戦闘というよりはケンカに近い感じだ。

「痛っ、何すんのよ!」
「そちらこそ、可愛げもないくせに生意気ですわ!」
「そんなビラビラのマントしてる人に言われたくないっつの! なぁーにが『可憐』よ、笑っちゃうわ!」
「貴女こそ、自分で『天才』とか言ってるあたり馬鹿丸出しですわっ。仕事しか出来なくて、恋の一つも知らないんでしょうねぇ!」
「なーんですってぇぇ〜!」
「何ですのぉ〜!」

 ……激しい女の戦いが繰り広げられる。そこには男達が介入できる隙などあるはずもなく。

「し、真君、あれ止めなくていいのかな……?」
「純也、エエか、覚えておくんやで。女のバトルに首突っ込んではいかん。これは人生の法則や」
 おどおどする純也に、真が首を振る。一方で遼平VSヘラクレスも始まろうとしていた。


「ロスレッドと言ったな、お前のような残虐者にヒーローの名は似合わない! 今度こそ成敗してくれるっ! 覚悟しろロスレッド!!」
「うるせーっ、その名で何度も呼ぶな! 俺だって好きでこんな事してるんじゃねーんだよ!」
「再び聞け! 一撃必殺『狂気共鳴クレイジーシンフォニー』をっ」

 またあのガラスを取り出すヘラクレス。ナイフを握り、ガラスを前に突き出す。
「二度も同じ技が通じると思うなよ! 喰らえ、必殺『クラッシャーフォルテ・ヒールメテオ』っ!」
「何ぃ!?」
 遼平の姿が消え、ヘラクレスは周囲を見渡す。ふと、月光が遮られたと感じた瞬間に、長い脚が降ってきて、手にしていたガラスが落ちてきた踵に粉砕された。

「あぁっ、ガラスが!」
「へっ、見たか必殺『クラッシャーフォルテ・ヒールメテオ』!」
「おのれぇ〜っ」
 得意気な遼平と悔しそうなヘラクレスのやりとりを見ていて、再び純也と真の実況解説が入る。

「……ねぇ、あれってただの踵落としだよね?」
「しかも『必殺』やないしなァ。結局特訓の意味無かったやん」
「ヘラクレスさん、本当にこの方法に気付いてなかったのかなぁ……」
「子供でも五秒で気付くと思うがなァ……。まぁ、同レベルの勝負なんとちゃう?」


 一通り感想を終えた二人の元に、白髭の老人が近寄ってくる。杖を支えにして、やっと進んでくる感じだ。
「もしもし、ロスホワイト殿、わしと戦っていただけますかな?」
「え、僕ですか!?」
「なにせあなたがわしの四歳になる孫に似ておりまして……名を千春と言うんですがねぇ」
「四歳って……しかも女の子?」
 複雑な心境になる。幼女に似ているから戦ってほしいとは、怒るべきなのだろうか?
「リーダーも戦うと言っておりますし、是非わしと戦ってくだされ」
「は、はぁ……わかりました」

 今時ドコに行けば手に入るのかと思うようなローブから、老人フェニックスは二本の棒を取り出す。アレが武器らしい。
「では、参りますぞ」
 重々しい言葉に、純也は身構える。あの棒が繰り出すと思われる、あらゆる攻撃手段を想定して。


「地を焦がせ、天を駆けよ、我が前に立つ者に驚愕を。万物が灰燼と化すまで、我と共に焔よ舞え!」

 何やら本当に魔術師のような呪文(?)を唱え始めたフェニックスは、両手に持った棒をクルクルと回しだして。
 突如として棒の両端に火がつく! 四つの火は回転しながら、美しい円舞を……。
「フハァァァッ、ハアアアアア!!」
 先ほどまで杖で立っていたのが嘘のような、凄まじい、


 ファイヤーダンス……。


「すっごーい! フェニックスさんカッコイイー!!」
 純也が喜んで拍手喝采をしている後ろで一人、真だけが。

「……で?」

 あの年齢で、確かにスゴイ特技だが、だから何だというのだろう。いや、老人養護施設で披露すれば、人気者になれるには違いないが。
 まず、それは攻撃ではなかった。

「ハッ、ハァッ、オホホーウッ!!」
 よくわからない奇声をあげ、老人は熱いダンスを踊り続ける。更に純也にウケたのが嬉しかったのか、どんどん激しくなっていく。
 だが、調子に乗りすぎたらしく、

 その長い口ヒゲに着火!!

「うわあぁー!?」
「たっ、助けてくだされ!」
「真君っ、水! 水!」
「えぇ!? んなコト言うたかてそんな急に……」
「燃えるぅうぅ!」
 一気にパニック状態に。仕方ないので純也と真で叩き消した。
「フェニックスさん、お怪我はありませんか?」
「助かりました……わしの負けです、ロスホワイト殿」
 ヒゲを焦がした老人が、深々と頭を下げる。決着がついた……らしい。一体、何が勝敗の原因になったのだろう。

 一息吐いて顔を上げ、希紗と遼平、真しか視界にいないことに純也は気付いた。


 ……何か、とても重大な人を忘れている気がする。












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