生きていく――
人混みを掻き分けるようにして、僕たちはあてもなくさ迷い歩く。
彼女は、僕の隣をとぼとぼと歩いている。
虚しく、冷たく、繋ぎあっている手と手――彼女の温かさは感じられない。
「……美樹、さ」
ずっと在り続けた沈黙を破った、彼女の声。
僕は彼女へと顔を向けた。
思わず立ち止まった僕の少し前を、彼女は単調に歩き続け。
慌てて小走りに追いつく僕は、彼女の呟きの続きをなんとか聞き逃さなかった。
「美樹……進学方針、変えるんだって」
彼女は目を細めて、言う。
「詳しくは聞いてないんだけど……多分、同じ大学には行けないと思う」
――何かを堪えるように、目を細めて。
「同じ部の人もね。分野が同じで、大学もいっしょに行けたらいいねーって言ってた人がいるんだけど……違う夢追うって、ごめんって。クラスメイトもそう……お気楽に笑ってるだけじゃ」
堪えているものが何なのかはわからないけれど。
「みんな……みんな、変わっちゃうんだ。今の自分から卒業して、一段上に――今よりもっともっと上に、上がってく」
きっとそれは――とても悲しいものだろうから。
「私は……どう変わっちゃうんだろ? あなたのこと、嫌いになりたくない――変わりたく、ないよ」
そっと、抱き寄せた。
堅く強張った彼女の肩を、トントン、と優しく叩く。
「変わったら、僕のこと嫌いになるの?」
彼女は静かに俯いた。
「僕は――もっと好きに、変わってほしい。嫌いになるんじゃなくて、もっと好きになってほしい、かな」
やっと、握り合う手に力が込められる。
惜しむことなく力を込め、しかし痛くならない程度に乱暴を避けて、握り返した。
彼女は小さな嗚咽をあげて、僕へと顔を上げた。
「……そんなこと、言われると――もっと依存、しちゃうよ?」
「気づいてなかったかな」
手を離す。
間髪入れずに彼女の肩へと手を回した。
彼女は僕より少し背が低いから、僕の目の前に彼女の柔らかなセミロングが来る。
励ますように優しく、しかしぎゅっと強く、彼女を引き寄せた。
「僕はもう依存しちゃってるから――そっちも依存してくれないと、困る」
強く、強く。
彼女の髪へと顔を埋め、これ以上続けられる言葉もなくなって。
高校生活も後数週間となった今、悩むことは途方もないくらいに多いけれど。
なくしたくないものがなんなのか、とか。それがどれだけなくしたくないか、とか。
そういうことがわかっているから――まだ、迷走なんてものをしてはいない気がする。
彼女も僕の首に頬を擦らせていたが、唐突に僕の耳元へと唇を寄せ。
「ありがとう…………」
涙に潤む顔で笑みを作って、そう言った。
ただひとつのものだけを握り締めて―― |