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  メスと珈琲 作者:GFJ
第10話 ネット検索
 日曜日。アパート。私はベランダに布団を運んだ。何ていい天気なのだろう。
 掃除機をかけながら、気持ちは昨日の”森”に飛んでいた。景子を連れて行ったために、とんだ一日になった。でも、冷静に考えてみると、昨日の収穫は大きかった。
 掃除機を動かしながら、昨日のできごとを思い出す。復習は早い方が身につくのだ。なんて、普段、学校での復習なんてほとんどしないけどね。だから試験前に慌てるのだ。

 マスターの名前はモロオカコウイチ。昨日の男は、どういう人物か不明。ただ、何らかの形で、以前からマスターと接点があった。その接点とは、7年前の「地中海病院事件」と関係がある。
 マスターは地中海病院に勤務していた? そして、その事件で人生が変わった。マスターの右手には掌に傷がある。
 ちょっと待って。マスターは本当は右利きなんだろうか。コーヒーカップを置く時はいつも左手。雨の日、カウンターでマンデリンをオーダーした日、マスターはコーヒー瓶を右手に持っていた。オーダーを記入するとき、ボールペンは……確か右手に持ってる。
もともと左利きで、右手に矯正した?

 突然ズズズっという音がした。掃除機がマアヤの尻尾を吸い込んでいた。マアヤはネコのぬいぐるみ。掃除機のスイッチを切って、マアヤを引っ張る。マアヤとクッションをよけて、私はまた掃除機をかけ始めた。

 地中海病院事件。7年前かあ。一体どんな事件だったのか。
 そうだ! 母さんなら知ってるかも。
 私は、掃除機をそこに置いて、電話をかけてみた。

「もしもし、お母さん」
「ああ、おはよう。珍しいね、こんな朝早く。どうしたの? 元気でやってる?」
「うん。元気元気」
「お金ならこの前、送ったでしょ。あれ以上は無理よ」
 まったく、私が電話をするときは、お金の無心だと思っている。
「そうじゃなくて。あのさ、ちょっと聞きたいんだけど……」
「何?」
「地中海病院事件って知ってる?」
「どうしたの急に。地中海病院事件? ああ、そうねえ。5年くらい前の事件かしら」
「5年じゃなくて7年前」
「あら、もうそんなになるの? ああ、そう〜」
 ちょっと、そんなことで感慨に耽らないで。
「知ってるんだ」
「まあ、事件当時はニュースで毎日流れていたからね」
「で、どんな事件なの?」
「確かね、地中海病院で医療ミスがあって、患者さんが亡くなったのよね。お医者さん、逮捕されたんじゃなかったかしらねえ。カルテ改竄なんかが問題になって。本当に病院にかかるのも怖いわねえって思ったもの」
「ふーん。医療ミスか」
「何でそんなこと聞いてきたの? まあ、あなたもこれから医療に従事するわけだからねえ。充分気をつけなさいよ。ふふふ、医療ミスより先に、お前の場合、ちゃんと看護師になれるかどうかが心配だわね」
 何て口の悪い親だろうか。

 地中海病院事件。医療ミス。”森”のマスターは、この事件と何らかの関係がある。
 私はPCを立ち上げて、インターネットに接続した。
 『地中海病院』と入れて、検索ボタンを押す。ずらっと出てきた。

 地中海病院のホームページはこちらです
 地域の病院……地中海病院
 病院長ごあいさつ
 救急指定病院リスト
 ピロリ菌除菌で血小板正常化を来たした症例の……
 糖尿病研究会のご案内
 お肌のケア。ピーリング等のご相談は……
 ……

 スクロールして検索結果を流してみたが、役に立ちそうな情報は……
 とりあえず、ホームページを開いてみる。
 大きな病院だね。診療科目も多い。職員募集、研修受け入れの情報。
 カチッカチッと次々にクリックしてみる。
 院内の庭園にある池の写真。これが地中海ねえ……。形が似てると言われれば、そうかもしれないけどさあ。外来担当医の紹介。
 
 取り立てて面白い情報はない。わかったことは、院内にある池の形が地中海の形に似てるってことくらい。変わった名前の病院だって思っていたから、その点はすっきりしたけど。

 『地中海病院事件』で検索してみる。7件くらいヒットした。
 地中海病院で入院患者死亡。真相は闇の中……
 これだ。クリックする。
 Not Found
 だめか。

 医療ミス。地中海病院で。病院の対応に遺族の怒り……
 クリック
 Not Found

 地中海病院院長の謝罪会見、医療ミス認める……
 クリック
 Not Found

 どれもこれも詳細がわからない。一体、どういう事件だったのか……。

 『もろおかこういち』で検索をかけてみた。
 ”見つかりません”
 姓と名の間を一文字空けてみた。
 山のように出てきたが、その時点で、私は検索を諦めた。
今回はあまり話が進展しませんでした。すみません。次回から新たな展開が待っています。

焙煎豆を購入してコーヒーを淹れられる方へ、是非。
コーヒーは生豆の状態では保存がききますが、焙煎したら、どんどん劣化します。どうぞ、新鮮な焙煎豆を購入してください。それから、できれば、淹れる直前に挽いてください。挽くことによって、豆の表面積が無限大になり、急速に酸化され、まずくなります。

豆が多すぎるときは、冷凍しておくと便利です。凍ったまま必要量だけミルにかけて、そのまま淹れればOKです。


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