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第2章-13.闇オークション
しかし、ページが変わった瞬間、

「だめだ・・・。」

三月はそれまでの緊張が一気に解けたように、どっと背もたれに寄りかかった。

「これ、クレジットじゃないと会員登録できないっぽい。」

何のことはない。ユーザー名の登録蘭と共に画面に表れたのは、信販会社の選択蘭と番号入力欄。そう、会員登録はクレジットカード専用であった。
ある意味ほっとしたが、当然三月がカードを持っている訳がない。これでは先に進めない。

「左田、お前ひょっとして、クレジットカードとかも持ってたりする?」

流石にお手上げなので、半分冗談のつもりでそんな事を訊いてみたが、左田の答えは、

―ごめんね、持ってないよ。―

と意外にも普通なものだった。



・・・と、思いきや、



―でも、何かあったら一応お父様のカード使っていいとは言われてるよ。―


と、やっぱり三月の期待を遙かに超えていた。

「・・・ちなみに、そのカードってやっぱりゴールドだったりするわけ?」

―う~ん、確か「ぶらっく」って聞いたことあるような気がする―

・・・もう今後どんな話を聞いても驚くまい! 例え、家に100人メイドさんがいようが、国宝級の文化財が三月の家位はある物置きに無造作に積まれていようが、万が一私設の軍隊を持っていたとしても!


だが、問題はまだ残っている。


 仮に、本当に左田か父親のカードを使えたとしても、今のこの状態でどうやって使わせて貰えるのか? まさか、三月が直接左田家に言って事情を説明しても、恐らく素直に受け入れては貰えまい。それどころか、下手したら警察沙汰にされる可能性もある。

それに別の問題もある。

もし何らかの方法で左田父名義のカードを使えることになったとしても、それはつまり左田財閥当主の名義ということになる。つまり、もし例のサイトで何かしらの問題が発生した場合、本人だけでなく左田家全体、或いは左田グループ全体を巻き込んでの大事になる可能性も否定できない。

「いや、でもそれはどっちにしろやめた方がいい。」

三月自身が両親のどちらかに借りてしまうか? という考えも脳裏をよぎった。しかしすぐに「有り得ない」と思い直した。
いくら息子の頼みでも、流石にこんなアヤシさてんこ盛りのサイトの為にクレジットを貸してくれる程うちの親も馬鹿ではない・・・と、正直三月思いたい! 別に今更何かを期待している訳ではないが、万一貸してくれたら貸してくれたで、絶望してしまいそうだ。

「まいったなあ・・・折角ここまで情報を掴んだのに・・・。」

こうしてせっかくの手掛かりも空しく、「左田を元に戻そう計画(仮)」は、またもや暗礁に乗り上げてしまったのだった。


しかし、道は意外な所で開けることになった。

翌日は雨だった。相変わらず学校では左田は引き続き行方不明のままである。

ただ、例えクラスメイトの一人が行方不明になっていたとしても、生徒それぞれに自分達の学校生活があるし、学校自体にも行事や全体のカリキュラムの統括等、業務に支障をきたす訳には行かない訳であり、除々に日常の雰囲気に戻りつつあるように感じられた。
伊折にしても、最近は以前のように結構普通にしゃべるようになってきた。

―このまま戻らなかったら、私の事みんな忘れちゃうのかな・・・。―

―なんか、お友達やそれまで色々話したり、一緒に過ごしてきた人に忘れられちゃうのって、こんなに悲しいんだね・・・。―

左田がポツリとつぶやく。それを三月は複雑な面持ちで聴いているのと同時に、どこか罪悪感と滑稽さを感じながら一日中そんなクラスを眺めていたが、それでも今日の教室の暗さは雨のせいだけではないと思っていた。

(やっぱり、カミングアウトするか・・・?)

三月は時たまそう考えた。だが事実を打ち明けた所で、クラス中から変人扱いされて「ごく普通の男子」から「実は不思議系でした」へのレッテルにジョブチェンジするのか、よしんばもしこんなことを伊折やみんなが信じてくれたとしても、上手くは言えないがあまり良い感情を持たれないのはほぼ確実だ。


果たしてそれは「嫉妬」か「好奇」か、それともはたまた別の感情であるのか――――――。


(左田もそう言ってるし、やっぱりこんな状況じゃ止めといた方が無難だな)
 
そうして結局この結論に辿り着くのであった。


その日の放課後の事である。家に帰ってしばらくすると、三月の携帯電話が鳴った。発信者はと言えば、先日街中へ出たときに出会った探偵の高沢であった。

(まさか何かわかったのか?!)

個人的にはあの日以来あんまり関わりたくないと思っていたが、この状況ではそんなことを言っている場合ではない!三月は慌てて電話に出る。

―もしもし、三月君・・・?先日風見野の路地でお会いした高沢だけど―

「何かわかったんですか?!」

挨拶もそこそこに電話口に飛び付く。

―三月君?! 電話でそんな怒鳴ったら耳おかしくなっちゃうよ。ちゃんと聞こえるから落ち着いて・・・ね?―

「・・・すいません。」

多少大声になってってしまったかもしれないが、こちらは一刻も早く解決の糸口を掴む為の数少ないな情報源だ。謝りながらも、つい興奮してまうのはどうか勘弁して貰いたい。

「それで、何かわかりましたか?」

三月は少し声を抑えて再び同じ質問を繰り返した。

「うん、実はインターネットでちょっと気になるサイトを見つけてね。」

その答えにひょっとしてと思った三月は、

「・・・それってもしかして、『』ってヤツですか?」

と訊いてみた。

―あれ? ひょっとして三月くんもそこ見つけた?!―

「ってことはやっぱり・・・?」

―うん、僕もあるツテでそのサイトを知ってね。まあ、ということは例のの出品内容も既に知ってるとは思うんだけど・・・。ちょっと調べてみようかと思って―

やはり三月の思った通りだったらしい。

「でも、どうするんですか? あのオークション、会員専用ですよね?! まさか入会する気ですか?」

「・・・うん、そうしようかと思ってる。」

それを聞いて三月は、

「ちょっと待って下さい!それ、危なくないですか? そういう怪しいネットサイトって後で訳わからない請求が来たり、知らないうちに重大なトラブルに巻き込まれたりする事もけっこうあるんですよ?」

まあ、ぶっちゃけあくまで高沢個人で入会し、そういう羽目になっても直接的には関係無いと言えば関係ないと言ってしまえばそれまでかも知れないが、まがりなりにもこうして左沢の為に協力してくれている人間にそうしたリスクを背負わせるのはあまり気持ちの良いものではない。
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