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第2章-12.そのサイト
「お!・・・これか?」


 パソコンの画面を見ながら三月が呟く。あの後、店を出てから急いで駅まで行き、そのまま自分の家まで戻った。もちろん左田も一緒である。最初、そのまま近くのネット喫茶にでも行こうかと思ったが、とりあえず帰る前にサイトを見たところで情報も持っておらず、準備も何も無い学校帰りに出来そうなことがある確率は低く、無駄に料金を取られる位なら落ち着ける家でじっくりと作戦を練った方が良い。
 
と、言うことで家に着くなり着替えもそこそこに、パソコンを立ち上げインターネットに繋いだのだった。ケータイから送って貰ったメールを更にパソコンのメールアドレスに転送し、そこに本文に書かれているURLをクリックする。すると、「いかにも」な画面が表示された。

―・・・なんか、見るからに怪しそうだね。―

左田が呟く。

「うーむ、後で覚えの無い、やたら高額な請求とか来たり変なウイルス貰ったりとかしないだろうな。」

三月はちょっと冗談っぽく言ってみたが、内心、あまり笑えなかった。しかも、よく見れば、

「あなたは20歳以上ですか? YES/NO」

年齢認証付きである。

怪しさに更に磨きが掛かる。さて・・・、自宅のパソコンで観て果たして平気なものか・・・。もしそれ系のフィルタリング機能が設定されていたのなら、明らかに「閲覧不可」になっていたことだろう。しかし、幸か不幸か、三月の(と言うか三月家の)パソコンはそう言ったものは設定されていない筈だ。

その上、実際の姿はないとは言え今は左田も一緒である。こういうサイトを彼女でもないクラスメイトの女子と共に気兼ね無く見られる程、三月の神経が図太くないつもりだ。

・・・ちなみに、一応三月の名誉の為断っておくが、このパソコンにおけるフィルタリング設定について知っているのは、決して昔やたらと肌の露出の多い女性の画像を探した経験があるから・・・、とかそういうことでは無い。決して、いや、多分・・・、恐らく。

だが、ここで考えても始まらない。もしかしたら左田が元に戻れる重要な手掛かりがあるかも知れないのだ。

「なんか、その・・・エロいのとか変なの出てきたらごめん・・・。」

とりあえず先に謝っておく。最早、「見るのを諦める」という選択肢は無い。進むのみだ。

―いいよ、三月君は私の為にやってくれてるんだもんね。ちょっと位なら平気だよ。―

まさにその通りの筈なのだが、何故か少し後ろめたい気がするのは何故だろう?何はともあれ、気を取り直して「YES」にポインタを合わせる。そして。いざ・・・


ポチっとな。


結果から言うと、別に「エロいの」は出てこなかった。

と言うか、そのサイトは一見ごく普通のオークションサイトであった。三月は今まで知らなかったが、何に使うのかよくわからない機械のパーツや、やたらと難しそうなタイトルの書籍やらが出品されていて、どちらかというと専門的というかマニアックなオークションがメインであるらしい。
だからと言って、人間の身体丸々一体なんて人身売買的な出品がこんな不特定多数に公開されるサイトでできる筈がないとは思うのだが・・・。

一応、時間を掛けて出品物をくまなくチェックしてみたが、案の定、それらしきものは見付からなかった。


と思った矢先、三月はふとサイトの隅っこの方に「VIP会員専用ページ」というのがあるのに気付いた。


・・・これは怪しい。

三月は試しにそこをクリックしてみた。
すると、「会員IDとパスワードを入力して下さい」というメッセージと共に別のウインドウが表れた。

「やっぱりそのまんまじゃダメか。」

―どうしたの?―

そんな三月の様子を見て左田が心配そうに尋ねる。

「いや、なんか怪しそうな所見つけたんだけど、会員専用らしいんだ。」

―会員になればいいんじゃないの?―

尤もな意見ではある。しかし三月は、左田のその言葉を聞いて、彼女に気付かれないように小さく、「はぁ」とため息をついた。

「まあ、それが一番早いんだけどこういう所って大概お金掛かるんだよ!」

しかも、さっきは半分冗談で言ったが、身に覚えのない請求が来たり、ウイルスに感染したりするのは、この辺が一番危なかったりする。

-そうなんだ・・・。あ、でも何だったら私のお小遣い使ってもいいよ。-

慌てて今の少々安易な発言を取り繕うような左田に、三月は苦笑するしかなかった。

「いや、恐らくそういう場合はマトモな額じゃないと思う。下手したらウン十万とかそんな場合もあるらしいしな。」

一応、三月はここが月数千円程度の、それこそまともな有名大手サイトとかだったらその位が払ってもいいと思っていた。同級生の、しかも女の子の異常事態ならば多少なりとも身銭を切る位の甲斐性は自分にはあるつもりだ。

しかし、まだごく一般的な高校生である三月にそんな大金払えるツテがある訳もない。学校はバイト禁止だし、そもそもバイトしているとしてもそんな額が払えるまで経済的余裕ができるとは到底思えない。

同学年である左田にしてもそれは同じだろう・・・と、思ったが次の瞬間三月は自分の庶民感覚と世間的知識の狭さを同時に思い知ることになった。

-・・・それ位だったら、何とかなると思う。-


予想外の左田の返事である。


お嬢様って、お嬢様って・・・。


ちなみに、

「お前って、月に小遣いいくら貰ってんの?」

という問いに対しての答えは、

「う~ん、元々月に上限いくらっていうのはないんだよね。必要に応じて貰ってたりするから・・・。」

だそうである。なんかもういちいち突っ込んだら負けのような気がしてきた。


とりあえず気を取り直し、少し躊躇ったが、このまま考えていても仕方が無い!「虎穴に入らずんば虎子を得ず」とばかりに覚悟を決めて「新規会員登録」のページへと進むことにした。


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