記憶に残るその少年は黒、とも、茶、ともつかない深い色の瞳をしていて、影の薄いおとなしい子供だったと思う。 話しかけると恥ずかしそうに笑って、白い肌がピンク色になった。女の子みたいに細い声で、それでも、正しいと思うことははっきりと口にしたからびっくりしたことを憶えている。 ある晩、すさまじい青嵐が空を駆け、海や川、森や町をなぶっていった。 翌朝、母親がいつまでたっても起きてこない息子を起こしに部屋へ入ると、少年の姿はなく、開け放たれた窓辺は雨で水浸しになっていた。 青嵐に攫われた。 竜樹は戻って来ない。