ディメイション・ザ・アドベンチャー!PDFで表示縦書き表示RDF


これは連載予定で書いたのですが、好評ならしようと思ってます。『お、なんか続き読みたいかも』ってなったら、是非感想を下さいませ〜
ディメイション・ザ・アドベンチャー!
作:宮座頭数騎


 日曜日の朝、天気は良好、しかし僕の気分は最悪だった。
 目が覚めて上体を起こしてみれば、部屋のドア手前で、どっかのアフロダンサーみたいに腰をくねらせ右手を天井に指差している男がいた。
 深紅のコートのようなロングジャケットに黒い長ズボン、機械的な鉄のブーツにグローブ。頭にヘッドフォンのような、桃色の艶やかな長髪を露出させたヘルメットを被っている、明らかにこの畳部屋の雰囲気に合わない変質者。
「あ、あの……誰?」
 僕は恐る恐る男に訊ねてみた。
 すると男は人形のような整った、しかし左目元から唇の位置まで糸で縫われた後がある特徴的な顔を僕に向け、口元を吊り上げた。
「起きるの遅ぇぜぇ! 名前が平凡、山田良助」
「え? 何で僕の名前を――て、ほっとけ!」
 名前が平凡は余計だ。
「お前があんまり起きるの遅いから、ずっと踊ってたんだぜい。まぁったくよ、そんな寝助ちゃんだと学校遅刻決定だなぁ、こりゃあよ!」
 クルリと一回転し無駄にスタイリッシュにポーズを決めながら、僕にビシッと指差す男。微笑む際に唇から見える八重歯が、無駄にキュピーンと変な音を立ててキラめいた。
「今日は日曜日で学校は休みです。てゆーか、何なんですかあなたはいきなり! 一体何者ですか!」
「え? 俺が何時からここにいるかって?」
 いや、それ聞こうとは思ったけどさ、質問を飛ばすなよ!
「しょうがねえなぁ、良ちゃんは」
「良ちゃん言うな! 初対面だろ!」
「聞いて驚きな!」
「僕の話聞けよ!」
「俺は深夜二時から、お前が起きるまでこの部屋で踊ってたのさ!」
「えぇ!」
 そんな時間から! 全然気づかなかったよ!
「てゆーか、何故僕の家! それに、さっきから聞いてるけど何者なの!」
「俺か? ふふん――俺は――」
 男はいきなりまたクルリと一回転して天井に右手を翳すと、高らかに名乗った。
「ディメイション! 次元の神様ディメイションさ!」
「次元の――神様?」
 ぶっ飛んだ冗談にも程があるぞ。次元の神様って、どこの神様だよ。
「どこって、だから次元の神様だ」
「ハイハイそうですか――……って、えっ!」
 今何で僕の考えてることがわかったの!
「神様だから当然!」
 してやったりの笑顔で、親指を立てる次元の神様。
 何か見ててムカつく。しかし。本当に神様なのか?
 それ以前に次元って……嘘臭いよ。
「臭くない。臭わないない」
「いや、その臭いじゃなくて」
 て、どの臭いだ。自分で言って訳解らなくなった。


「とにかく、ディメイションさんが百歩譲って次元の神様だとして、何で僕の家、それも僕の部屋で踊ってたんですか?」
 僕は気を取り直して、もう一度順に沿って質問する事にした。
「うん、よく聞いた。よし、聞いて驚け!」
「ハイハイ……」
 よく聞いたって、その質問を待ってたんなら、最初の質問にもすぐ答えろよ。内容に大差ないだろ。
「俺がこの部屋で踊っていたのは――ノリだ!」
「ノリかい!」
「つうのは冗談だ。実はある“モノ”を追って次元を開いてこの世界に来たんだけどな、その時出た場所がお前の部屋でさ、俺はどうすればいいのか困ってよ。とりあえず部屋の中を探ってエロ小説発見して読んだり、パソコン起動させて面白い動画観たりして、飽きたから踊って暇を潰してたら、お前が起きたってわけ」
 本棚の隠し引き出し、机のパソコンと順を追って淡々と説明するディメイションさん。
「なるほど――って、何勝手に人の部屋探ってんの! 行動がほぼ空き巣じゃんか!」
「安心しな。お前がなかなかマニアックなエロ小説を持っているのは、俺とお前だけの秘密だ!」
 何言ってんの、この野郎は!
「ちなみに、お前の名前が平凡だと解ったのも、部屋を探ってる時だ」
 平凡が余計だ! せめて名前が解ったと言えよ!
「おいおい、心でツッコミ入れるなよ。それじゃあ伝わらねえぜ」
 伝わってんだろ! 心読めるんだから解るだろ! 顔にも出してんだろ! 不快な気持ちを!
「んまぁ、それはどうでもいいとしてだ」
「どうでも良くないよ!」
「とりあえず、着替えて準備してくれよな」
「は?」
 またいきなり意味が解らない、どういうこと? 何で着替えるのさ?
「俺はこの世界に来て、此処がどんな場所か解らないんだ。だから案内してくれよ」
「……嫌です」
 格好からして変なのに、こんな人と一緒に歩いていたら、僕まで変に見えてしまい兼ねないよ。
「安心しろ。お前は凡人だから一緒とは思われない」
 何その理屈は。しかもそれって何気に遠まわしに僕をバカにしてない?
「してないよ。あ、いや、しているかもしれない。あ、いや、やっぱりしてないかもしれない」
「どっちだよ!」
 どっちにしても、そう真剣に腕組んで俯きながら考えてもらっても僕は困るんだけど。
「せめて、その格好どうにかなりませんか」
 アキバとかならコスプレとか言って不自然さを少しはカバー出来るけど。生憎此処は西田町と言う、アキバから遠く離れた場所だ。先ず無理だね。
 だから、彼自身に格好を変えてもらわないと行けない。
「なるほどなぁ。まあ、お前の世界じゃあ俺の格好が異質なのは仕方ねえか。だけどなぁ……。この体は人のように着替えてる訳じゃねえしなぁ」
「え――て、うわぁああ!」
 く、首が外れた! カチッと音がしたと思えば、いきなり首が三百六十度回転して首がポンと外れたよ!
 首の中から機械が覗いているし。もしかして本当はロボットなの?
「あぁ、説明すんの忘れてたな。俺には実体がねえんだ。本当はこんな感じの思念体みたいなものなんだぜ」
 そう言うとディメイションさんの体から、モクモクと赤色のガスのようなものが出て来る。
 ガスが抜けた後、首無しの体は糸が切れた人形のように倒れた。
「てゆーか、これ人形だし」
「うわっ!」
 ガスが喋ったのか今? よく聴くとディメイションさんの声みたい。そうなると、やっぱりディメイションさんの言う通り、ガスが本体なんだ。
「まあ、そういうこった。俺はお前の世界に来る前から、いろんな世界を行き来してるんだ。ちなみに、お前の世界に来るのは八回目な。だけど、この日本っつうのに来たのは今回が初めてだ」
 そうなんだ。
「俺はどんな存在にも乗り移って意のままに操れるんだが、当然、操られるやつが嫌がってさ。仕方ないから、科学だの魔法だのが発展した世界で体造ってもらったんだ」
「それがコレ?」
 僕は抜け殻同然の人形を指差す。
「そっ。何でも戦闘能力はその世界では最強で、一日で星を滅ぼせるだのどうのこうの言ってた。アンドロイドなんだとさ」
 危なっ! 核兵器が目の前に置いてあるようなもんじゃんかコレ! そんなもん造ってあげるなよ! どこのマッドサイエンティストが造ったんだ!
 何かこの話聞いた瞬間、畳に転がってる頭が。精気が抜けたような人形の無表情が無駄に恐く見えるよ。
「とりあえず!」
「うわぁ!」
 いきなり立ち上がるなよ! いつ人形に戻ったのさ!
 心臓が飛び出すかと思ったよ全く。
 そんな心の訴えを出してる僕を尻目に、ディメイションさんは首をカチッとはめて元に戻した。
「ここを案内してくれよ」
 にっこりと、無邪気な笑顔を見せるディメイションさん。
 仕方ない。ある程度事情を知ったんだ。断ると後がヤバそうな気がするし、どっちにしろ散歩するつもりだったわけだし、案内するか。




「おおぉ、良ちゃん見ろ。人がゴミのようだ!」
 コラァ! 指さすなよ。周りの人に失礼だろ。しかも見ているだろ!
 あぁ恥ずかしい。とんでもなく恥ずかしい。周りの視線が痛い。そこ女の子達! 写メ撮るな!
 僕達は今、公園に向かう為に商店街を歩いているのだけど、この神様と来たら何て落ち着きのない。全く、子供かあんたは!
「落ち着けブラザー。俺は今、興奮しているぜ!」
 お前落ち着けよマジで!
 てゆーか、無駄に大袈裟なポーズして指差すの止めて下さい。僕まで変人の仲間入りになってしまいます。
「手遅れだ」
 この野郎!



「ふんふん、ふふん♪」
「鼻歌を鳴らしてダンスしながら歩かないで下さいよ」
 じっとしてるの出来ないのだろうか。さっきからずっと腰をクネクネさせたり、ムーンウォークで歩いて電柱に後頭部からぶつかったり。とにかく無茶苦茶だ。
 案内しろ言っても、お勧めの店とか紹介しても全く別の方向に顔を向けて、「ありゃ何だ?」と言い。仕方なく説明し出した瞬間には、「おお、あれ何だ!」と自動車や飛行機を指差す。
 この野郎――。
「ちゃんと聞け!」
 すぐ別の物に興味持つな!
 せめて説明終えてから聞いてくれよ。
「冗談だぜ。実は全部知ってんだなコレが」
「は?」
「この世界に来んのは八回目だかんな。全国共通の店や乗り物はある程度知ってるし、お前のパソコンのインターネットで日本を調べた」
 オイイ! 僕の説明や紹介不用じゃねえか!
 この人知っているクセにワザと聞いて僕をからかっていたのか。性格悪いぞ!
「へっへへ。よく言われるぜ!」
 筋がね入りかよ!
 何なのこの人。もう疲れる。だいたい僕と一緒に商店街歩く必要ないじゃんか。
「いや、まあそうなんだが、こうやって出会った者に案内してもらうのは、俺の習慣なんだ」
「習慣?」
「俺は次元を切り裂いて世界に来て、その際に出会った存在とはフレンドリーな関係を作っておくのさ。縁ってのは大切だからな」
 そう説明しながらウインクするディメイションさん。
「次にこの世界に来ても、俺を知っている人がいる。親友がいる。そう思うと嬉しいじゃねえか」
「ディメイションさん……」
 この時、笑顔で話すディメイションさんが凄く輝いて見えた。元々明るい感じの神様だけど何て言うか、この話しをしている彼は、雄大な威厳さと言うか。尊敬に価する何かを感じた。


 それからお昼頃――僕とディメイションさんは公園に到着した。
 少し公園内を散歩して、今はベンチに腰掛けている。
 周りの人の痛い視線も相変わらずだけど、もう慣れてしまった。と言うか、気にするだけ無駄だし疲れるので、諦めました。
「そういえば、すっかり言いそびれてたけど、ディメイションさんは何でこの世界に? 確かある“モノ”を追ってきたとか言ってたよね」
「ああ、そうだな。まあ、まだそいつの場所が特定出来ないんだよな」
「その。ある“モノ”って何です?」
 僕が問い掛けると、ディメイションさんはピクリと顔を上げて勢いよくベンチから立ち上がった。
「奴だ! けっこう距離はあるが、間違いない」
「え? 奴って?」
「へへ――口で全部説明するより、実物見せた方が手っ取り早いわな」
「え? ちょ! 何――て、うわあああああ!」
 ディメイションさんは戸惑う僕を片手でヒョイと摘み背中におんぶさせ、物凄いスピードど走り出した。
 あまりの速さに僕の体はディメイションさんから剥がされそうになる。
 体は鯉のぼりのように宙を浮いて、腕を首に巻き付けしがみついてる状態になっている。
 うぅ、ぐるじい! 風圧で息が出来ない!
「おっと、風がキツいか! フィールド!」
 ディメイションさんが叫び、正面から薄く蒼い壁のようなのが現れ、風が来なくなった。
 おかげで息もでき、眼も開けられるようになったのもつかの間、僕はディメイションさんの足の速さに驚愕してしまった。
 高速道路の中を、周りの車をあっさり抜き去って行くディメイションさん。スルリと車と車の間を何の苦もなく曲がりくねったりして追い抜いていく。
「もちっと飛ばすぜ! しっかり掴まってろよ!」
 いきなり加速し出したディメイションさん。あまりの速さに、もはや周りの世界は凝視すら出来ない。
 これが光速の世界と言うのだろうか?


 そんな時間も直ぐに過ぎ去り、いきなり速度が下がり始めて視界も良好になり始めた頃、ディメイションさんは口を開く。
「よし、着いたぜ! 左側見てみろよ良ちょん」
「え? あ、な、何あれ!」

 言われた通り左側を見た僕は目を疑った。
 一見、路線を走る新幹線だと思ったのだが、よく見たら先端が青虫のような形状をしていて、その後ろの車両箇所と思われるとこから沢山の機械的な手が出ている。
 まるでこれは、機械のムカデだ。
 言うのを忘れていたが、今、ディメイションさんと僕は、機械ムカデの横にいる。
「ふふん、驚いただろ?」
「何ですか! あのムカデのような怪物は!」
「あれが俺の追って来た“モノ”さ。俺は“次元の悪魔”って呼んでる」
「次元の悪魔?」
 僕が愕然と呟く中、その次元の悪魔は腹部から出ている機械的な手を、こちらに振り下ろして来た。
「おっと!」
 ディメイションさんは加速してかわす。しかし手はしつこく追い掛けて来る。それどころか、その手から銃口みたいな形状の機械が飛び出し、緑色のレーザーを放ってきた。
「はっは! 本格的にきやがった!」
 ディメイションさんはレーザーを跳躍して回避すると、機械ムカデの車両の側面を走る。視界は水平に傾く中、ディメイションさんは楽しそうに口を開いた。
「俺のように次元の中を行き来し。来た世界に存在する個体に取り憑いて、姿形を変えて暴れ回る破壊衝動の塊。そいつが次元の悪魔さ。俺と似て非なる存在だ」
「え? 取り憑いてるって事はコレもしかして新幹線なの!」
「みてぇだな! へっへ、デンジャーでスピーディーな雰囲気ぷんぷんだぜ」
 いや、意味が解らないよ。何でそんな楽しそうなのさ! 危機感無さ過ぎだよ!
「危険を楽しむのも娯楽の一つさ。ギャンブルにもあんだろ? ロシアンルーレットとか」
「僕はそんな娯楽はしたくなぁい! て、きたよディメイションさん!」
 てゆーか、何でロシアンルーレットなんか知ってるの!
「ほっと! 安心しな、俺がいる以上。お前は絶対に死なない! だからこのスリルを楽しみな!」
「楽しめるかあぁ! だいたい娯楽にならないだろコレェ!」 
 振り下ろされる手を避け、また地に足を着けて駆け出すディメイションさん。
 その根拠の無い自信はいったいどこから来るんだ。
 等と思っていれば、何か手が沢山増えてる。しかも蛇みたいにうねって襲ってきた。
「よっと! ほっと! はっとな!」
 ディメイションさんはそれを難なく飛んで走って、しゃがんでまた走ってとかわして行く。
 声の明るさからして、明らかに楽しんでいる。


「て、遊んでないでどうにかしてぇー!」
 上下運動が激しくてキツいよ。必死にしがみついてる僕の身にもなってよ!
「そうだな。そろそろ攻撃しねえと、被害がデカくなるな」
 被害がデカく? あ、そうか、このまま行けば機械ムカデが街の駅に着いちゃう。そうなったら、駅にいる人間を始め、多くの被害が出る。
「じゃ、じゃあ早くどうにかしないと」
「焦るなよ。何が起きても問題ないない! それが俺のモットーさ」
 いや、早くしないとヤバいでしょ!
 今はまだ富士山とか見えて自然が目立つ場所だから大丈夫だけど、このまま進んだら都市に着いちゃうんだよ!
「わかってるって良ちゃん。よっしゃあ! なら一気にキメるとしますか!」
 気合いの入った声を出すと、ディメイションさんはいきなり速度を落とした。
「え? 何で?」
「良いから見てな!」
 不可解に思う中、ディメイションさんは機械ムカデの攻撃を避けながら、さらに速度を下げていく。そして、機械ムカデの後ろ、つまり車両最後尾と並んだ。
 すると、ディメイションさんはチョンと跳んでまた車両の側面を疾走する。
 しかし、ここからがさっきと違った行動をディメイションさんは見せてくれた。
「いっくぜえええ! うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあぁ!」
 徐々に速度を上げながら、ディメイションさんは機械的な黒鉄のグローブで拳を作りグルグル腕を回す。
 まるでグルグルパンチの動作だが、意外にも機械ムカデの腕をあっさり両断していく。
「す、凄い!」
「いよっし、左側も行くぜ!」
 ディメイションさんは言うと、同じ手口でもう片側の車両から出ている機械ムカデの腕を破壊する。
 全て破壊した後、機械ムカデの正面を走る。
「後は正面だ!」
 青虫の頭を象ったような機械ムカデ。口が縦にパカッと開き、何か青白い光が集まってくるのが見えた。
「ディメイションさん!」
 何か嫌な予感がしたと思って叫べば案の定、機械ムカデは開いた口から青色のビームを放つ。
「おっと、へへ。タイミングドンピシャだぜ!」
 ディメイションさんはとっくに危険を察知していたどころか、寧ろ狙ったらしい。
 放たれたビームを跳躍して避け、クルリと振り向く。そして拳を作った右腕を左手で支えながら機械ムカデの開いた口に向ける。
 そして――。
『ぶっ飛べえええ! ブリット・フィスト!』
 妙にエコーが掛かった声で叫ぶと、拳を作った黒鉄グローブがロケットパンチのように右腕から発射され、機械ムカデの口から最後尾までを貫いた。
 とんでもない破壊力だ! やっぱり星を一日で壊滅させられるのは本当かもしれない。
「ハハッハー! どんなもんだい!」
 戻って来たグローブを右腕にカチッとはめ、着地して駆け出しながらハシャぐディメイションさん。
 ハシャぐほどガキじゃないでしょあんた。
「童心を忘れちゃあいけないぜ良ちゃん。若ぇんだからもっと人生楽しみなって!」
 僕は少なからず、ディメイションさんより楽観的になるのは無理です。てゆーか、ここまでぶっ飛んだ楽観者になりたくないよ――って、あれ?
「ディメイションさん!」
「あぁ、解ってるよ」
 貫通して穴が開いた機械ムカデが、止まる気配は無く、寧ろ速度を上げている。ついでに穴をよく凝らして見たら、何と人が何名か乗っているのが見えた。
 眠っていると言うか気絶している。
「そりゃあ、走ってる新幹線に取り憑いたんだかんなぁ。人は当然乗ってる訳だ」
「オイイ! あんたまさか解ってて攻撃したのかああああ!」
「すげぇだろ。エッヘン!」
 エッヘンじゃねえ! あのロケットパンチ当たっていたらどうすんだよ!
「ノンノン、ロケットパンチじゃねえ。ブリットフィスト。それに安心しな、それらを配慮してぶち込んだんだ。」
「え?」
 僕が疑問に思うと、ディメイションさんは自分の紫色の瞳を指差し話す。
「俺の眼は、対象物をスキャナー出来んだ。更にそこから計算して、どうすれば良いのか割り出せるスーパーコンピューターが詰め込まれてる」
 そんな無茶苦茶な。あんたロボットじゃ――あ。
「そっ。アンドロイドって言ったろこの体」
 そうか、何にでも取り憑けて、意のままに操れる。つまり、その存在で出来る限りの動作が可能なんだ。ディメイションさんはアンドロイドの体に憑いてる訳だから、そういった機械的なことや、スーパーコンピューターが使えても何も不思議じゃない。
「その通り! んじゃあ、仕上げと行くぜえ!」
 言い放つと共に、ディメイションさんは速度を減速させる。そして徐々に後ろの機械ムカデとの差が縮んでいく。
「ど、どうするの!」
「こうすんのさ!」
 ディメイションさんは振り返り、機械ムカデを押し止めると言う暴挙に出た。
「ちょっと! む、むりでしょおおお!」
「うおおおおお!」
 鉄が激しく擦れる音を鳴らし、そして足下から火花を散らしながら、ディメイションさんは押し止めようと力を込めている。
「うおおおおおおおぉ――っと、力む振りしたり」
「えぇ!」
 フリだったのかよ!
「雰囲気出した方が燃えるっしょ?」
「遊ぶなぁああああ!」
 ふざけてないで、止められるなら止めてよ!
「止めるさ、だけどすぐには危険だ」
「どうして? ――あ!」
 そうか、突然止めてしまったら、中の人達の体も突然の急停止のGが掛かってしまい、車内で大怪我を負う可能性がある。
「ご名答だぜ! 中をスキャナーする限りじゃあ。まだまだガキンチョもいる。下手に急停止させたら――もう解るだろ?」
「うん、じゃあゆっくり減速させて行くしかないのか」
「そういうこった。と言っても、そろそろ駅だけどな」
 え! うおおおおお! かなり遠くだけど、都市が見えるぅ!
 ヤバいよこれ、急がないと大惨事になるよ。
「へっへへへ。まあ、見てな」
 ディメイションさんは自信に満ち溢れた笑顔を一旦僕に向けると、機械ムカデに視点を戻し、活が入った声を出し、力を入れる。
 機械ムカデの速度が徐々に落ち始めて来た。
 そして――。




「ふぅ。停車したな」
「な、何とかね」
 僕達は今、駅舎の線路にいる。ディメイションさんは腰に手を当てて首を鳴らし、僕は腰を落として溜め息をついてた。
 周りの人が、僕達と完全に沈黙した機械ムカデを困惑と動揺しながら眺めている。
 そんな中、突然機械ムカデから青色のガスのようなモノが噴き出てきた。
「もしかして、あれって」
「あぁ、本体だな。よっと」
 ディメイションさんはガスまで跳躍して接近すると、腕でガスを払うように振るった。腕から赤い光が放たれ波紋のように広がると、ガスは薄くなり、遂には消滅した。
「これでよしっと、ニィ!」
 着地すると、僕に満面の笑みを見せてピースサインを贈った。僕もつられ、ディメイションさんに笑顔を返した。


 この後、警察やら何やらと面倒な事が起きると思いきや、ディメイションさんがいきなり不思議な水色の光を放った事により、僕以外の周りの人達はさっきまでの記憶を忘れ、何で壊れた新幹線があるのか、乗客や車員達が無事なのか、結局彼らは思い出せないまま、この出来事は謎の事故と言う形で事は済んだ。



 そして、夜。もう人気の無い駅舎。ベンチに僕は腰掛けていた。
「ねぇ、ディメイションさん」
「ん、なんだ?」
 目の前でロボットダンスしているディメイションさんに、僕は訊ねる。
「ディメイションさんって、今日みたいにいろんな世界であんな怪物と戦ってるの?」
「あぁ、そうだぜ」
「どうして?」
 そう問い掛けると、ディメイションさんは一旦首を傾け考える素振りを見せると。
「うーん。忘れた」
 相変わらずの笑顔で答えた。
「わ、忘れたって。本当に理由は無いの?」
「まあ、何かあいつらはほっといてたら危険かなって気がして、倒さなきゃって何となく戦ってんだ。飽くまで暇つぶしだな」
 これほどの事が暇つぶしって。その神経は本当に呆れるよ。
「あぁ、そういえば、俺は次元の神様って自称したけどさ。次元の悪魔も含めみんな、いつの間にか名付けられたんだ。何時、何処で、誰にかは忘れたけどな」
「そうなんだ……」
「へへへ、考えたら、いろいろ謎だらけだわな」
 何がそんな楽しそうなんだか。
「いやさ、こういう謎解くのもまた、面白いと思わねえかな? まだまだ知らない世界も沢山あるし、退屈しなくて良いんだ。じっとしてるのは問題外。俺のモットーの一つさ」
 なる程、どんなことも楽しく遊ぶ、はしゃぐ、好奇心と探究心に満ち溢れた純粋な童心の塊。それがディメイションさんなんだね。
「よし、そんじゃ。俺は行くぜ!」
 そう言うと、ディメイションさんは空を手で切り裂く動きを見せた。すると何もない空間から割れ目が現れた。
 割れ目にヒョイと入ると、中からディメイションさんは笑顔で僕に手を振った。
「また来たら、会いにくるぜ良ちゃん」
「うん」
 そのために、僕の記憶は消さなかったんだったよね。
「ああ! 俺たちはもう、友達だからな。んじゃあな!」
 僕は笑顔で手を振り、割れ目の中に入って行くディメイションさんを見送った。
 無茶苦茶な一日だったけど、今では凄く良い体験だったと思う。
 この体験は一生忘れ無いだろう。そう思いながらも、僕の日曜日は終わった。


 それから、僕はいつもと変わらない毎日を過ごして――ると思いきや……。




 また一週間後の日曜日の朝。
「よっ!」
「ディ、ディメイションさん!」
 僕の家にまたディメイションさんは現れた。



 僕とディメイションさんのハチャメチャな物語は、まだ始まったばかりだ。

 


はい、あとがきです。
ああぁ。妖狐玉藻伝が文章が上手く書けないから、上達の為にこの作品を書いたんですが。なんか執筆力が下がった気がして、ちょとスランプ(汗













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