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妖怪の山の半妖譚 作者:天狼星
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第一話 日常といえば日常

 復活しました。改訂しながら投稿していきますが、わりと話の内容が変わりつつある気がする今日この頃。
 そんなこんなで、再びよろしくお願い致します。
「……だからさ、いらないっていつも言ってるじゃん」

 誰もいない洞窟でぼやく。そんな私の目の前には、大きな猪が一頭転がっていた。

「また誰かにお裾分けしないとなあ……」

 ため息を零しながら目の前にある猪を見つめる。食べやすいようにと気を利かせたのか、既に息絶えてはいるものの、今は食す気になれなかった。
 こういう事は度々ある。いらないと何度断っても頃合いを見計らって置いていく。親分思いなのは嬉しいが、少々度が過ぎてはいやしないだろうか。

 私の仲間、つまり狼たちである。妖獣である私は、この妖怪の山に生息している狼の頂点……と言える程の力はないが、まあ一応そんな立ち位置にいる。そのためなのか、彼らからそれなりの頻度でこういった物を贈られる。群れとの仲は極めて良好なので、殆ど善意からの贈り物だ。
 しかし、丸々一頭持って来ることは滅多に無い。何を持って来るにしても、彼らの生活に支障のでない余剰分を持って来るように厳命しているからだ。なのだが。

「今年は随分と実りがいいのかな……」

 心の中で豊穣神に感謝し、次会った時はいつも以上にお礼を言おう。
 そうしてから、また現実に目を向けた。

「本当にどうしよう、これ……」

 猪一頭なんて一人で消費しきれる量ではない。持ち込まれる度に山の妖怪たちにお裾分けをしているくらいだ。干し肉にでもしてまた渡そう。

「……なんか疲れた。もう明日全部どうにかしよ……」

 全てを明日に追いやって、私は今は何も考えずに寝ることにした。初春だから腐らないだろう、きっと。


* * *

 目下、私は狼の姿で山を登っている。守矢神社に食べ物を持って行くためだ。
 狼の姿なのは単なる私の気紛れである。最初に行った時がこの姿だったからそれを続けている、というのもあるが。もはや言い出すタイミングを失ったので、正体をバラす予定は今はない。

「あやや、はくじゃないですか。どこに行こうとしてるんです?」

 てくてくと四足歩行の視点の低さを堪能していると、頭上から声が聞こえた。声からすぐに分かる――文さんだ。
 私の体毛は銀色がかった白色をしているので、知ってる人なら狼の姿でいようとすぐに分かる。白で狼というと白狼天狗を思い浮かべる人もいるが、あくまで天狗と妖獣。まったく違う妖怪だ。ちなみに私の名の由来もこの辺かららしい。少々安直と思わざるを得ない。
 このままの姿では話すことが出来ないので、尻尾を三本携えた妖獣の姿に戻る。それと文さんが私の隣に着地したのはほぼ同時だった。

「こんにちは、文さん」
「はいはいこんにちは。珍しいわね、こんな時間に出歩くなんて。どこに行くの?」
「別に珍しくは無いですが……守矢神社です。食糧を献上しに」
「ああ、なるほど。まだその姿で行ってたのね」
「タイミングを逃しちゃったんですよ。今更妖獣です、っていうのも何だか」

 もともとは『神社なんだし妖怪じゃダメなのでは?』との思いから狼の姿で行ったのだ。ただの人間が行ける場所ではないし。
 後日、妖怪の信仰も集めていると聞いたときは驚いた。そういう事はもっと早く言うべきだと思う。

「そういう文さんは、どちらに?」
「今日の博霊神社の宴会を妖怪たちに知らせてる途中」
「……またですか?」

 私の記憶が正しければ一ヶ月……いや二週間くらい前にもこんなことをしてたはず。
 どれだけここの人たちは宴会が好きなんだ。

「最近暇だからねぇ……このくらいしか楽しみがないのよ」

 ……それを知らせ回っている文さんも、類にもれず暇なんだろうなあ。こんなパシリ……もとい、お使いをして回っているのだから。

「お疲れ様です。でも、ネタ探しも兼ねているんでしょう?」
「まあね。だから余計に疲れるんだけど」
「勝手に首を突っ込んで相手を怒らせ、その流れで弾幕張ったりされるんでしょう? 自業自得じゃないですか」
「はたてや貴方みたいに引き篭るのは性に合わないのよ」
「……まあ、否定はしませんけど。疲れすぎないよう、程々にしてくださいね」

 労いの言葉をかけると、何故か文さんの目が輝きだした。奇妙に手を動かしながらにじり寄って来ているので、ちょっと怖い。

「そう、私は今疲れてるのよ。癒しが欲しいのよねえ」
「そ、そうですか。ところでどうして私に近寄って来るんですか……?」

 本能的な危険を感じ、逃げようとするも時勢は既に私には無かったらしい。抱き締められて尻尾を握られた。と、そう思った時には既に撫でられ始めていた。早いよ。
 文さんに限らず、私に会うと大抵の妖怪がこうしてくる。毛並みが良いと褒められるのは嬉しいけど、正直やめてほしかったりする。尻尾は動物にとって重要な部位なので、とても敏感なのだ。

「擽ったいですって。やめてくださいよー……」
「嫌よ。白の尻尾、すごく心地がいいから疲れも取れるわ」
「私は微塵も癒されないんですけどね」

 こうなると満足するまでやめないのは身を持って知っているので、嘆息しながら抵抗をやめた。性感帯だとは言え、気の置けない間柄の人に触られた所で別にどうなるわけでもないし。
 ……あーあ、守矢神社に行けるのはいつになるんだろ。
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