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恋文

作者:浅葱
5/23は恋文/ラブレターの日(他にもいろいろありますが、うちはこれで)
「いまどき、ないよねこんなの」

 水色の封筒をダイニングテーブルに置いた娘の頬は、わずかだが赤くなっているように見えた。
 あて名は娘の名前。「ちょっと失礼」と裏を見ると男の子の名前が書いてある。
「ラブレター?」
 呟いた途端娘の顔がトマトのように赤くなった。
「そ、そんなんじゃないし!」
 プイッ、とそっぽを向き、ひったくってどすどすと階段を上がっていった。微笑ましいことである。

 そういえば、かつて私が高校生だった時、ある日下駄箱に一通の手紙が入っていたことを思い出した。
 あて名は私の名前で、裏には何も書いていなかった。
 いたずらかなと思いながらも、どきどきしながら開けた封筒。
 中にはパールグリーンの紙が一枚だけ入っており、真ん中あたりに丁寧な文字で、

 あなたが好きです
 大好きです

 とだけ書かれていた。
 その時の気持ちをなんというのか、今でも私には表現できない。
 差出人の名前はなかったが、私はそっとその手紙を学生鞄にしまい家に持ち帰った。
 自分の部屋で改めて見たその便箋は、いたずらとは思えなかった。けれど差出人の名はないし、よしんば筆跡で誰が書いたかわかったとしてもそれを指摘する勇気は私にはない。
 それもまた青春の一ページだろうと、甘酸っぱい気持ちと共に引き出しの奥にしまったことを覚えている。

「ただいまー。あれ? ユリは?」

 夕飯に間に合うように帰ってきた夫は娘を溺愛している。最愛の娘が誰かからラブレターをもらったと知ったらどう思うのだろうか。

「としごろなのよ」
「?」

 ふふっと訳知り顔で笑む私に夫は不思議そうな表情をした。

 高校生の時にもらった恋文が縁で一緒になるなんて。
 ありえなさそうでありえた私たち夫婦の話を語るのは野暮というもの。

 私はなにごともなかったかのように、二階に向かって「ごはんよー」と声をかけた。

 終

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