77話 魔王「三千万年分の記憶」
~ストーリー~
先代の魔王の手によって、長きの間、封印され眠りについてた魔王の息子が、久々に目を覚ますと、父親である魔王が勇者に討たれた10年後の世界だった。
さらにその事情を教えてくれた、かつて先代魔王の右腕だった参謀から、魔王を討たれ力を無くした魔族は、人間に無条件降伏したと、驚くべき事実を伝えられる。
しかし驚く事はそれだけでは無く、人間側は、無条件降伏を締結させるにあたって、魔王の息子である自分を、新魔王として即位させる事を条件の一つとして言ってた来たと言うのだった。
~今回のあらすじ~
世界の破壊を始めた破壊神と化した魔王止めるべく、その場所へと向かう女勇者たち。
そして魔王を破壊神から救おうと考える女勇者だったが、破壊神は魔王に乗り移ったのでは無く、魔王本人だと言う。
その言葉に女勇者は驚きを隠せなかった…。
登場キャラ
魔王
前魔王の息子で、人間の国の要請で新しい魔王に就任した。
前魔王と違って花や動物を愛する優しさと高圧的な者には強く出れない気弱い性格。
年齢も人間換算で15歳。
そして魔王の系譜らしくとてつもない魔力の持ち主だが、その力を恐れた前魔王に自分は弱いと洗脳されている。
後妹がいる。
女勇者
口も性格も悪い外道勇者。
気は強いが逆境に弱く、泣いてしまう事もある。
また火に対し強いトラウマを持っている。理由は不明。
見た目は胸は小さく金髪ツインテール。
神官妹
聖職者だが計算高く、自分が助かるためなら平気で仲間を見殺しにする汚い性格をしている。
また性癖が年上思考で、大臣を愛している。
元勇者のパーティーで僧侶をやっていた時期もある。
神官姉
神官妹の姉。
喋る事が不得意で話す言葉が訥々になりがちになる。
そんな風だから引っ込み思案に見えるが意外に自分の意志を通す。
性癖は年下思考で子供が好き。
その事から見た目が子供な魔王が好き。
後ちょっとMっ気もあるかも知れない。
魔法使い
エルフで魔王軍に娘を殺された事から、その恨みを晴らす為魔法使いになった。
性格は真面目で固い印象があるが、子供を慈しむような優しい一面もある。
女勇者とは魔王討伐の為パーティーを組んでいた時期もあったが、女勇者の心無い言葉を言われ現在はとても嫌っている。
・魔族の子供たち
魔族子供♀
魔族の少女、少し控えめだが仲間思いの優しい子
魔族子供1
ヤンチャな性格で、すぐに無茶な行動するトラブルメーカー。
魔族子供2・3
魔族子供1の子分のような存在
魔族っ子幼
魔族の幼女。
戦魔将軍を父と呼んでいた戦災孤児。
何事も疑いなく信じてしまう無邪気な性格、後まだ喋るのになれていない。
呪族の幼女
魔族とは違い、呪いの力を使う一族の生き残りで元その女王。
前の戦いで覚醒魔王に力を根こそぎ奪われ封印されてしまい、幼女の姿になってしまう。
幼女になった当初は喋るのに慣れず舌足らずだったが、だんだん慣れてきている。
わらわなど、昔の日本のお姫様のいような喋り方をし、その喋り方通り高飛車な性格をしており、さらに呪いの一族らしく恨みがましく陰湿な性格もしている。
また性癖が同性愛者な事から若い女が好きで、見てくれが美しい女勇者が好き。
参謀
前魔王の片腕だった魔族。
魔王を復活させて今の状態を作ってしまった張本人。
行動では魔王につき従っているフリをしているが、内心では魔王を利用して魔界の再建を狙っている。
そのように表の態度とは裏腹にいつも何か隠している感じの油断のならない性格をしている。
商人
姫の専属アドバイザーとして仕えている商人。
姫に頼まれ魔王をおとしめる為にやってきた。
口が上手く、人の心をつかむのが上手いが、その反面いつも何か隠しているようにも見える胡散臭い人物。
姫
王国の姫。
常に上から目線で物を言う高飛車で傲慢な性格しており、利権など金になる物や自分が面白いと感じた物に目が無い。
今回も魔界の利権を狙ってやってきた。
メイド
大臣たちが魔界視察に来た時についてきたメイド。
いつの間にか魔王城に住み込み生活をしている。
メイドらしく引っ込み思案な気弱な性格。
また女勇者に拾われてメイドになったらしい。
その過去には何か色々ある様子。
戦魔将軍
元旧魔王軍の七魔将軍の一人。
戦魔名前のごとく力で全ての物事を解決しようとする戦士系タイプの魔族。
ミノタウロスがさらにマッチョになったような容姿をしており、正々堂々をモットーとする豪快で武人のような性格をしている。
ただ認めた主にないがしろにされるのは苦手で、よく魔王の言葉に素でショックを受けていたりする
また語尾にござるを付ける。
戦魔副長
戦魔将軍の右腕的存在で、柔らかい考えに冷静に場を見れる事から、頭の悪い戦魔将軍の代わりに色々考えてくれたりする。
性格も平和主義者と言うほどでもないが、むやみに喧嘩をして敵を作る事は良しとはしない性格。
妖魔将軍
魔王軍七魔将軍の一人で、戦魔将軍の弟。
家族が泣き叫ぶ顔見ながらその家族を食い殺す、魔族でも嫌悪するヘルムシュヴァイセンと言う料理を好んだり、そんな残虐な事を好む救いようない外道魔族。
戦中に女勇者によって拷問されて殺された筈だが、何故か甦って再び勇者の前に現れる。
法王
創造神教の最高トップ。
ヒップホップ系の変なしゃべり方をするグラサンをかけたデブ。
普通の喋り方も出来る。
チッパイが好き。
魔王姫
魔王の妹、魔王を死ぬほど敬愛しており、魔王のためなら命投げ出す事もいとわない。
体は「過剰魔力体質」の負荷で神経がやられているため不自由。
そのためゴーレムのような憑代を移動手段や普段の生活するための体にする。
戦士
かつての勇者パーティーの一人。
狂信的な勇者像を持ち、それを女勇者に押し付けすぎる為、本人から凄い嫌われている。
剣の腕前は勇者に引けを取らない。
かつて妖魔将軍に囚われていた女勇者を助けたのも戦士。
創造神
この世界の万物の神にして唯一神的存在。
神らしい言動をするが、予想外の言葉を振られると言葉に詰まる。
裏で妖魔将軍や戦士などを操り、何かをやっていた。
神官妹「方針は決まった物の…そう言えば魔王はどこに行ったのかしら?」
女勇者「そう言えば剣で刺されて、転移魔法か? どっか消えちまってたな…」
神官妹「あれだけ盛り上げておいて行方を知らないの…?;」
女勇者「知らねえよ、転移魔法の行き先なんて…しょ、しょうがないだろ、勇者は魔法専門じゃないんだから」
魔法使い「全く…しょうがない奴だな」
女勇者・神官妹「「え?」」
魔法使い「魔王が転移魔法を使った航跡は捉えている」
魔法使い「私が道案内しよう」
女勇者「おお! 流石魔法使い!」
神官妹「魔法の事に関してはやはり貴方に任せるのが一番ね」
魔法使い「世辞を言ってる場合ではない、まだ世界破壊まで時間がかかるとは言え、いつ世界の破壊が始まるか分からないのだ」
魔法使い「急ぐぞ!」
一同「おー!」
創造神「…」
創造神(ついにこの世界も終わるのね…)
創造神(でもこれで良かったのかも知れない)
創造神(一番辛い思いをしていた破壊神もこの世界から使命から解放されるのだから…)
女勇者「それで魔王が転移した行き先は?」
魔法使い「ああ…ここだ」
女勇者「え? ここって…」
~魔王城~
魔王「…」
魔王「…!」
魔王「来たか…」
女勇者「逃げた先は魔王城とか…結局勇者と魔王のラストバトルはここになるのか…ベッタベタだな」
魔王「…」ゴゴゴゴ。
神官姉「魔王…ちゃん…何か…凄い…事になってる」
神官妹「…恐らく世界を破壊する魔法を使おうとしてるのね…」
魔法使い「見たこと無い方陣だな…あれが神の魔法なのか?」
魔王姫「お兄さまお止めになって! 世界を壊したら、私と一緒に過ごせるスィートシスタータイムな時間も無くなってしまうのよ!」
女勇者「自分の事ばっかだな…;」
魔王姫「うるさいわね! 世界なんて私とお兄さまだけになってしまえばいいのよ!」
神官妹「それじゃ世界が滅んだのと変わらないじゃないの;」
魔法使い「それでどうするのだ…やはりその剣を魔王に?」
女勇者「ああ…」
魔王姫「…! 女勇者、お兄さまを助けると言ったじゃない! 嘘だったの!?」
女勇者「落ちつけって、勿論魔王も助けるさ…」
魔法使い「ほお…随分勇者らしくなったな?」
魔法使い「確かに創造神様の言った通り心を入れ直したようだな」
女勇者「い、入れ直したとか関係無いし!///」
神官妹「関係無いなら何でよ?」
女勇者「それはえーと…」
女勇者「…! 利害関係…そう利害関係あってだよ!」
魔法使い「利害関係? 無償にやっているようにしか見えんが…」
女勇者「あるよ、アイツをちゃんと魔王として戻せば? アタシが荒れ果ての地の街に住んだ時、めっちゃ優遇して貰うだから!」
魔法使い「優遇?」
女勇者「えーと税金ただとか、市民権貰うとかそんな感じだよ!」
神官妹「しょっぼい理由ねぇ、命かけるほどの物じゃ無いわよ?;」
女勇者「う、うるせえんだよ!」
魔法使い「それで破壊神になった魔王を元に戻す方法なんてあるのか?」
女勇者「へへ…その点は任してくれ!」
魔王「…!」
神官妹「何か方法があるの?」
女勇者「ああ…魔王と破壊神は別の存在何だろ?」
女勇者「だったら魔王はあいつの中にいるはずだ…それを起こしてやれば良いだけの話だろ?」
魔法使い「そんな簡単な話じゃ無いと思うが…」
女勇者「え? いやだってアイツの性格なら、こんなみんなが不幸になる世界を破壊する事なんてしたくない筈じゃないか」
女勇者「だから呼び掛けてやれば、絶対反応するさ!」
神官妹「貴方が自信満々に魔王助けるって言ってた算段ってこれだけなの?」
女勇者「え? あ、うん」
神官妹「無計画過ぎる…;」
女勇者「何だよー! やってみなきゃ分からないじゃんか!」
魔王「やってみなくても分かるさ」
一同「!」
魔王姫「お兄さま…!?」
神官妹「喋った…」
女勇者「分かるって…どう言う事だよ」
魔王「それは俺が元の魔王と同一人物だからさ」
女勇者「同一人物…お前は破壊神じゃないのか?」
魔王「そうだ…その魔王が俺を思い出した状態が破壊神なんだ…いや元々俺は魔王じゃなく破壊神だったんだよ」
女勇者「魔王が…俺を思い出したら…破壊神? 意味が分からん…」
魔王「お前は…本当に馬鹿だな」
女勇者「何だとっ!? テメーガキ魔王の癖に生意気だぞっ!」プンスカ。
魔法使い「つまり…記憶を思い出しただけ…と言う事か?」
女勇者「へ? 記憶を思い出した?」
魔王「そうだ流石察しが良いな魔法使いは…」
女勇者「だから…と言う事なんだよ!」
魔王「だから…俺は魔王が記憶を思い出しただけの同一人物なんだよ」
女勇者「だから何でそれで同一人物になるんだよ?」
魔王「まだ分からんのか…この馬鹿は…」
女勇者「ぐ…い、いや分かってるし」
女勇者「えーとつまりあれか、お前は俺たちと一緒にいた記憶がある魔王だって言うのか?」
魔王「そうだよ」
女勇者「…」
女勇者「じゃ、じゃあお前は魔王なのに世界を破壊しようとしてるのか?」
魔王「そうだよ」
女勇者「はいダウト!」
魔王「は?」
女勇者「あの異常なくらい優しい魔王が、みんなを殺して世界を破壊する訳無いだろ!」
魔王「…そうかな?」
女勇者「え?」
魔王「心と言うのは、年月が重なると変わっていく物だろう?」
魔王「俺は破壊神として三千万年ほど生きた記憶がある、そして中で何回も親しい者を作り、そして腐世新界の度に世界をリセット…破壊して殺してきた」
女勇者「だ、だから何だよ…」
魔王「つまり慣れているんだよ…親しい者が死ぬことになっても世界を破壊することがな」
女勇者「だから魔王はそんな事は言わないって言ってるだろ」
魔王「…小さい頃優しさや愛情を本気で信じてる純粋な時期ってあるよな?」
女勇者「はあ? 何だよ突然…」
魔王「でも大人になると、そんな事を本気で信じるのは馬鹿らしいって感じになるよな?」
魔王「そう年月が過ぎればそんな風に考え方も変わる」
魔王「優しかった魔王だった時期があっても、そんな少ない年月で刻まれた記憶なんか、三千万年分の記憶が甦れば、人格も変わるって事さ」
女勇者「…そ、そんな事あるか! 心は簡単には変わったりしない!」
魔王「そうか? お前だってそうじゃないのか?」
女勇者「え?」
魔王「前にお前が子供の頃の話をしてくれたよな?」
魔王「お前が小さい頃に村の連中に非道な事をされた時の話だ」
女勇者「あ…」
魔王「お前はそんな目に会う前は、勇気や愛を信じる立派な勇者の卵だった筈だ」
魔王「だが今のお前はどうだ? あの頃のように勇気ある人物になっているか?」
女勇者「それは…」
魔王「随分変わっているだろう? そう時が経てば心だって変わるんだ」
魔王「あの優しかった魔王だって非道に変わっていてもおかしくない」
魔王「だから破壊神と魔王を分ける事なんて出来はしないんだ」
魔王「何故なら…俺は魔王自身なのだから!」
女勇者「…そんな、じゃあ本当にお前は俺たちの記憶がある魔王本人なのに世界を破壊しようとしてるのか?」
魔王「そうだと言っているだろう」
女勇者「そ、そんな…」
神官妹「…手詰まりのようですわね」
魔法使い「…のようだな」
神官妹「女勇者…その黒い剣で、破壊魔法を発動される前に、倒すしか無いですわ」
女勇者「…!」
戦魔将軍「な、何だと魔王様を殺させる訳にはいかんぞ!」
神官妹「だったらこのまま世界を破壊されて死ぬつもり!?」
戦魔将軍「そ、それは…」
魔王姫「そうよ! 世界を破壊されてもお兄さまは殺させないわ!」
魔法使い「魔王姫! やはり邪魔するか…」
魔王姫「当たり前よ! 敬愛するお兄さまに絶対に手出しはさせませんわ!」
神官妹「馬鹿ね! 今更庇ったところでどのみち魔王は毒で死ぬのよ!?」
魔王姫「…!」
魔王姫「…関係ありませんわ」
神官妹「魔王姫…!」
魔王姫「例え少ない余生でも、その時間お兄さまを裏切らない事が重要なのですわ」
魔王姫「だから何もかも知った事では無いですわ!」
魔王姫「ゴーレムチェンジ!」ガシャガシャ!
魔王姫「さあ何処からでもかかってらっしゃい!」
神官妹「魔王姫…ガチで馬鹿なやつね…!」
戦魔将軍「儂はどうしたら…魔族はどうすれば良いのだ」
参謀「…」
魔王「魔王姫…」
魔王姫「あ、お兄さま、安心して下さい、ここは私が食い止めますゆえ、お兄さまは術に集中を!」
魔王「…邪魔」
魔王姫「…え?」
魔王「…」カッ(魔王の手が光る)
魔王姫「あ…きゃああああああっっっ!!!」
一同「!」
戦魔将軍「ま、魔王姫様っ!?」
女勇者「あ、あいつ自分の妹に攻撃した!?」
魔王姫「がはっ」ドサ!
魔王姫「ううう…」
魔王「ふん」
魔王姫「…お兄さま…う」ガクリ。
女勇者「テメー何考えてんだっ!」
魔王「何をとは?」
女勇者「魔王姫の事だよ!」
女勇者「庇ってくれた妹を攻撃するなんて、おめー頭イカれてんのか!」
魔王「別にただ邪魔だったから、石コロを蹴っただけさ」
魔王「言っただろう? 三千万年生きた俺はな、果てしなく外道なんだよ…魔王らしくな!」
女勇者「何だと…てめえ…」
魔王「そうだ! 敵意を向けろ!」
女勇者「何っ!」
魔王「俺はここに来た連中は俺の邪魔しに来た者として全て排除する」
魔王「プログラムの命令に従ってな!」
魔王「それを止めたいなら、お前もその黒い剣を使って本気で来る事だな」
女勇者「く…」
神官妹「女勇者どうするの!?」
魔法使い「もはや話し合いは無駄だ!」
女勇者「…くそ!」ダッ!
魔王「ようやくその気になったか…」
魔王「…?」
女勇者「たあっ!」キィン!
魔王「聖剣だと…?」
女勇者「ぐぐ…」
魔王「馬鹿か! 今更そんなゴミが効くと思ってるのか!」バキ!
女勇者「ぐあっ!」ズサーーー!
魔王「絶対不可侵の神であるこの俺に、神を傷つける事は出来ない聖剣で攻撃するなど…どこまで馬鹿なんだお前は?」
女勇者「…はあはあ」
女勇者「うるせえ…良いから魔王を返せ!」
魔王「…まだそんな事を言ってるのか? 魔王は俺だと言ってるだろ?」
魔王「俺はお前らだと理解して攻撃を…」
女勇者「うるせえって言ってるんだよ!」ダッ!
女勇者「は!」
魔王「…」キィン!
魔王「…!」バキ!
女勇者「ぐはっ」ズサー!
女勇者「くうう…」
魔王「…効かない武器で、効かない攻撃を繰り返すとかどこまで馬鹿なんだ…」
魔王「だいたいお前が俺に敵わないのは、よく分かっているだろう?」
魔王「なのに何故無謀で無意味な攻撃を繰り返すのだ…」
女勇者「うるせえ…良いから魔王を返しやがれ…!」
魔王「だから俺が魔王だと…」
女勇者「だったら目を覚ましやがれ!」
女勇者「はあ!」ダッ!
魔王「…」キィン!
魔王「ちっ…」ドゴォ!
女勇者「…! ぐお…!?」メキメキ。
女勇者「ぐ…は…」ドサ!
魔王「いい加減イライラするぞお前…やる気が無いなら倒れていろ…」
女勇者「…」
女勇者「…お前はそんな事を言わないんだよ…」
魔王「何?」
女勇者「どんな事があっても、他人を傷つけない」
女勇者「馬鹿みたいに優しくて、誰も傷ついて欲しくないなんてお花畑みたいな話をするのがお前なんだよ…」
女勇者「それ以外お前じゃ無いんだよ!」
女勇者「そんなお前を見て…」
女勇者「お前を見て…アタシも変われたんだよ…」
女勇者「だからそんなお前が、そんな昔アタシみたいになっちまうのなんか嫌なんだよ!」
魔王「…!」
女勇者「三千万年だか何だか知らねーけど!」
女勇者「どんなに時が経とうがお前はお前だろっ!」
女勇者「目を覚ませよ! このバカヤロー!」
魔王「…女勇者」
魔王「…く」
魔王「黙れ! そんな友情ごっこには飽々してるんだよ」カッ。
女勇者「あ…」
魔王「死ね!」
魔法使い「ブルームライトニング!」ピシャーーーーンっ!!
魔王「…!」
魔法使い「女勇者の言う通りだ! お前の優しさは素晴らしい! それはお前が言う三千万年などちっぽけに思える素晴しさだ!」
神官妹「汚い事をするのは私たち、それをおかしく思うのが貴方の役割でしょう!」
新官姉「魔王…ちゃんは…なら…何でも好きだけど、やっぱり優しい方が…好き!」
魔王「…」
魔王「うるさいっ!」カッ!
ズガーーーーン!!
一同「きゃああああああっっっ!!」
魔王「はあはあ…」
女勇者「うう…」
神官妹「ダメ桁外れ過ぎる…」
魔法使い「やはり…黒い剣で殺すしか無いのか…?」
神官姉「う…うう…魔王…ちゃん」
魔王「そうだ…破壊を止めたいなら俺を殺せば良い…何故使う事を躊躇うんだ…」
創造神「それは…貴方が大切だからですよ」
魔王「創造神…!」
女勇者「う…創造神…?」
魔王「俺が大切だと…? 世界と天秤にかける事か…!?」
創造神「貴方だって…簡単に彼らを消滅させる事が出来るのに、それをしないどころか彼らに自分を倒すチャンスを与えているでは無いですか…」
魔王「そんな事は…無い」
創造神「なら何故黒い剣を使うようしきりに言うの?」
魔王「…!」
創造神「魔王姫を攻撃したのもそうだわ、貴方は女勇者が攻撃しやすいように悪役を演じたようにしか見えないわ」
創造神「そうどこをどう見ても自分を殺してもらうように立ち回っているようにしか見えないわ」
女勇者「魔王…?」
創造神「それでも世界を破壊しようとするのは、私たちを作ってくれたマスターに義理立てるからなの?」
魔王「…」
魔王「…お前のただの深読みだ」
創造神「貴方は…マスターに作られた時から心優しい性格だった」
創造神「それはあの魔王のように」
創造神「この世界の神様になるなら平和な世界を作りたいと、私によく言ってましたよね?」
創造神「そんな優しい性格の貴方が本来の姿だった」
創造神「だから記憶を分割し、器が生きた時間しか記憶が無い時の貴方は凄い優しい性格になる」
魔王「そんな昔の事は…覚えていない」
創造神「私ははっきり覚えているわ」
創造神「貴方はとても優しい性格…」
創造神「だから貴方は世界をリセットする事を誰よりも深い悲しみを感じていた」
魔王「…創造神」
魔王「…」
創造神「…もう人類知的進化抑制プログラムも瓦解する事は決まった最後の時なのです」
創造神「そんな最後の時くらい、そんな悲しみから解放されても良いのでは無いですか?」
魔王「解放…」
創造神「そうです、平和が大好きな貴方が、この人間を滅ぼす事を繰り返さなくてはいけない悲しい世界から…」
魔王「…」
魔王「お前の言う通りかも知れん」
創造神「破壊神…」
魔王「だが…今更遅い…」
創造神「え?」
魔王「もはや俺の体は撃ち込まれたウイルスで死を待つのみ…」
魔王「今更解放されても、俺にはもう未来は無い! お前にもな!」
魔王「ならば最後にマスターの命令を守り、自分の使命を果たす事こそが俺の最後の道だ!」
女勇者「馬鹿…野郎!」ガッ(魔王の足首を掴む)
魔王「!」
女勇者「まだ分かんないのか…お前は」
女勇者「お前は…お前は…そんな事をしちゃいけないんだよ…!」
魔王「お前…!」イラ。
女勇者「アタシが…」
魔王「何?」
女勇者「アタシが…助けてやるから…早まった真似すんな…バーカ…!」ニコ。
魔王「…!」
魔王「助けるだと…? 馬鹿かもうお前にどうにか出来る次元の話じゃ無いんだよ!」
女勇者「次元…そんなの関係無いぜ…」
女勇者「何故なら…」
女勇者「アタシは…勇者だからな…!」
魔王「!」
女勇者「どんな事があっても諦めないのさ…それが勇者って奴だろ?」
女勇者「そして…その対象が友達なら尚更だぜ…!」
魔王「…」
女勇者「お前らが…何をやってるのかアタシにはよく分からねえ…」
女勇者「だけど…まだお前を助ける方法はあるはずだ…アタシが必ず見つけてやる、だから諦めんなよ!」
女勇者「それに…」
魔王「…?」
魔王「…」
魔王「…るさい」
女勇者「え?」
魔王「うるさーいっ!! 今更手遅れ何だよっ!」
創造神「破壊神!」
魔王「創造神!」
創造神「え?」
魔王「まだ俺の本気が分からないなら…教えてやる」
魔王「この勇者を今すぐ破壊する事によってな!」
女勇者「!」
一同「!」
創造神「や、止めなさい破壊神、そんな事をしても無意味ですよ!」
魔王「黙れ! どうせ世界は破壊するんだ…死ぬのが遅くなるか早くなるかだけの違いだ!」
魔王「はああ!」ゴゴゴ!!
神官妹「とんでもない魔力ですわ! まさか魔王本気で女勇者を!?」
魔王「死ねーーーっ!!」
女勇者「く…!」
女勇者(…ここまでか、へっ柄にも無いことするんじゃ無かったかな…)
女勇者(でも…妙に満足だ…)
女勇者(これが…勇者の生き方って奴だったのかな…)
女勇者「う…」
???『止めて!』
魔王「うぐ…!」ピタ。
女勇者「え…?」
神官妹「魔王が」
魔法使い「動きを止めた…?」
創造神「破壊神…?」
魔王「こ、これは…」
???『もう止めて…』
魔王「お前は…!」
続く
破壊を止めようとしない魔王を何とか説得しようと考えるが、魔王は自身がどうせ死ぬ事に変わりない事に逆上し、ついには女勇者を殺そうとしてしまう。
しかしその時内側から不思議な声が聞こえて、破壊神と化した魔王の動きを止める。
その声の正体は何なのか?
次回に続きます。