61話 魔王「法王様?」
女勇者の凄惨な過去を聞いた魔王は、そんな辛い思いをした事が無い自分が、女勇者の問題について軽々しく首を突っ込んで良いのか悩む魔王。
そんなおり、神官妹が帰ってきて魔界観光業で、姫から借りた王国の国家予算に相当するお金を返せる算段を付けてきたと言うのだが果たして?
登場キャラ
魔王
前魔王の息子で、人間の国の要請で新しい魔王に就任した。
前魔王と違って花や動物を愛する優しさと高圧的な者には強く出れない気弱い性格。
年齢も人間換算で15歳。
そして魔王の系譜らしくとてつもない魔力の持ち主だが、その力を恐れた前魔王に自分は弱いと洗脳されている。
後妹がいる。
女勇者
口も性格も悪い外道勇者。
気は強いが逆境に弱く、泣いてしまう事もある。
また火に対し強いトラウマを持っている。理由は不明。
見た目は胸は小さく金髪ツインテール。
神官妹
聖職者だが計算高く、自分が助かるためなら平気で仲間を見殺しにする汚い性格をしている。
また性癖が年上思考で、大臣を愛している。
元勇者のパーティーで僧侶をやっていた時期もある。
神官姉
神官妹の姉。
喋る事が不得意で話す言葉が訥々になりがちになる。
そんな風だから引っ込み思案に見えるが意外に自分の意志を通す。
性癖は年下思考で子供が好き。
その事から見た目が子供な魔王が好き。
後ちょっとMっ気もあるかも知れない。
魔法使い
エルフで魔王軍に娘を殺された事から、その恨みを晴らす為魔法使いになった。
性格は真面目で固い印象があるが、子供を慈しむような優しい一面もある。
女勇者とは魔王討伐の為パーティーを組んでいた時期もあったが、女勇者の心無い言葉を言われ現在はとても嫌っている。
・魔族の子供たち
魔族子供♀
魔族の少女、少し控えめだが仲間思いの優しい子
魔族子供1
ヤンチャな性格で、すぐに無茶な行動するトラブルメーカー。
魔族子供2・3
魔族子供1の子分のような存在
魔族っ子幼
魔族の幼女。
戦魔将軍を父と呼んでいた戦災孤児。
何事も疑いなく信じてしまう無邪気な性格、後まだ喋るのになれていない。
呪族の幼女
魔族とは違い、呪いの力を使う一族の生き残りで元その女王。
前の戦いで覚醒魔王に力を根こそぎ奪われ封印されてしまい、幼女の姿になってしまう。
幼女になった当初は喋るのに慣れず舌足らずだったが、だんだん慣れてきている。
わらわなど、昔の日本のお姫様のいような喋り方をし、その喋り方通り高飛車な性格をしており、さらに呪いの一族らしく恨みがましく陰湿な性格もしている。
また性癖が同性愛者な事から若い女が好きで、見てくれが美しい女勇者が好き。
参謀
前魔王の片腕だった魔族。
魔王を復活させて今の状態を作ってしまった張本人。
行動では魔王につき従っているフリをしているが、内心では魔王を利用して魔界の再建を狙っている。
そのように表の態度とは裏腹にいつも何か隠している感じの油断のならない性格をしている。
商人
姫の専属アドバイザーとして仕えている商人。
姫に頼まれ魔王をおとしめる為にやってきた。
口が上手く、人の心をつかむのが上手いが、その反面いつも何か隠しているようにも見える胡散臭い人物。
姫
王国の姫。
常に上から目線で物を言う高飛車で傲慢な性格しており、利権など金になる物や自分が面白いと感じた物に目が無い。
今回も魔界の利権を狙ってやってきた。
メイド
大臣たちが魔界視察に来た時についてきたメイド。
いつの間にか魔王城に住み込み生活をしている。
メイドらしく引っ込み思案な気弱な性格。
また女勇者に拾われてメイドになったらしい。
その過去には何か色々ある様子。
戦魔将軍
元旧魔王軍の七魔将軍の一人。
戦魔名前のごとく力で全ての物事を解決しようとする戦士系タイプの魔族。
ミノタウロスがさらにマッチョになったような容姿をしており、正々堂々をモットーとする豪快で武人のような性格をしている。
ただ認めた主にないがしろにされるのは苦手で、よく魔王の言葉に素でショックを受けていたりする
また語尾にござるを付ける。
戦魔副長
戦魔将軍の右腕的存在で、柔らかい考えに冷静に場を見れる事から、頭の悪い戦魔将軍の代わりに色々考えてくれたりする。
性格も平和主義者と言うほどでもないが、むやみに喧嘩をして敵を作る事は良しとはしない性格。
妖魔将軍
魔王軍七魔将軍の一人で、戦魔将軍の弟。
家族が泣き叫ぶ顔見ながらその家族を食い殺す、魔族でも嫌悪するヘルムシュヴァイセンと言う料理を好んだり、そんな残虐な事を好む救いようない外道魔族。
戦中に女勇者によって拷問されて殺されたと言うが…?
魔王(助けようとしていた親類や家族に…裏切られる)
魔王(勇者さんにそんな過去があったなんて…)
魔王(実の家族がそんな事をするなんて…)
魔王(魔王城では父上や妹の魔王姫も他の魔族もみんなみんな優しかったから、知らなかった…)
魔王(そんな凄惨な状況が、魔王城から少し離れれば普通にあったなんて…)
魔王(僕は…僕は、本当に世界と言う事を知らなかった…)
魔王(何とか勇者さんの力になってあげたいって追いかけて来たけど…)
魔王(そんな苦労や酷い体験をした事がない僕何かに、そもそもそんな事を言う資格なんか無かったんだ…)
魔王(封印される前はただ静かに平和に平穏に花や植物を育て…)
魔王(毎日父上や魔王姫と歓談し)
魔王(そして戦中は何も知らず眠っていただけ…)
魔王(そんな僕が勇者さんに力になってあげよう…心の悩みを解決してあげようなんて…)
魔王(何ておこがましかったんだ…)
魔王(この手を血で一度も汚した事が無い僕に…何も…言う事は出来ない…)
魔王「く…」
魔王(でも悔しいよ…)
魔王(何かしてあげたいのに…何も出来ないなんて…)
魔王(…本当に僕に出来る事は無いのだろうか?)
魔王(…何もないのか)
魔王「…」
魔王(いや…諦めちゃ…ダメだ)
魔王(確かに僕は酷い目にあった事なんて一度も無い、世間知らずでダメな魔王だ)
魔王(だから…そんな僕が勇者さんのためとかおこがましいのは分かっている)
魔王(でも…それでも友達のために何かしてあげようってこの気持ちが正しくないなんて思えない)
魔王(だから考えろ! 世間知らずでも酷い目にあった事が無くても)
魔王(そんな僕でもきっとちゃんと考えれば…少しでも何か…きっと何か出来る事があるはずだ)
魔王(何か無いか何か…)
魔王(そうだ…まずは勇者の事を良く考えて見よう…)
魔王(とりあえずうまく言えないけど…そんな過去を持っていた勇者さんは)
魔王(口では恨んでないって言ってもやっぱり魔族は恨む、恨んでいる対象だったんだ…)
魔王(例えそれが妖魔将軍一人がやった事でも、当然だけど魔族全体を恨む理由になってたんだな…)
魔王(だから勇者さんは会ったときからあんなに魔族を恨んでいたのか…)
魔王(…でもそれだと何で…魔族子供♀さんだけには心を開いてたようにしてたのだろう?)
魔王(…う~ん…)
魔王(よく分からないけど…とにかくせっかく魔族子供♀さんと仲良くなったのだから……)
魔王(それをきっかけに魔族を許してほしいって流れになって欲しいとまでは思わないけど…)
魔王(勇者さんと魔族子供♀さんは仲良くし続けて欲しいなって思う…)
魔王(だって…上手く言えないけど勿体無いよ…せっかく仲良くなれてたのに…)
魔王(でもこう思うのもまた僕の身勝手な願いなのだろうか…)
魔王(魔族子供♀さんも、怒りはしない…とは思うけど、角を切られた苦痛…そして一生角を失ってしまったと言う恥辱…)
魔王(やっぱり仲良くなれば良いなんて…簡単には言えない問題だよな…)
魔王(ああ~僕はどうすれば)ブンブン。
魔王(気を使うのも間違ってると思うし、かと言ってほっとくのも…違うような気がするし)
魔王(何だこれ…これしか選択が無いのに、どっちも間違っているような気がして選べない…でも他に選択は無い)
魔王(何だこれ…何だこれは…!)
魔王(分からない…何も思い付かない…うう…気持ち悪い)
魔王(こんな事初めてだ…前なら何でも誠心誠意やれば分かってくれるって思ってたからガムシャラにやってたけど)
魔王(今回の事は…下手に手を出すと、とんでもない方向に話がいってしまいそうで…そ、それが恐い…)
魔王(間違った選択をしちゃうともう勇者さんとは、これまでになってしまうような気がする…)
魔王(何とかしてあげたいけどそれが恐い…)
魔王(ああ、でもそんな事気にしている僕も、僕みたいじゃ無くて何か嫌だ…)
魔王(ああ~本当に僕はどうすれば良いのか?)
魔王(考えれば考えるほど…答の出ない泥沼にハマって行っているようで…うう…もうこんな状況から逃げたい…消し去りたい…)
魔王「破壊したいっ!」
魔族っ子「きゃ!」
魔王「え? あ…魔族っ子さん?」
魔王「どうしてこんなところに…?」
魔族っ子「…」
魔王(そう言えば魔族っ子さんとこうやって会うのは久しぶりだな~)
魔王(何か…最近は忙しそうで…会ってもすぐ何処か行っちゃってたからな~)
魔族っ子「…」
魔王「…? 魔族っ子さん?」
魔族っ子「え? あ、あはい魔王様」
魔王(…? 何か余所余所しいな…)
魔王「…えーと…あのーこんなところでどうしたんですか?」
魔族っ子「あ、はい…その神官妹さんと姉さんがお戻りになれらまして…大至急魔王様に戻って来て欲しい見たいでそれで呼びに来ました」
魔王「え? そ、そうですか…お戻りになられたのですか…それで私を呼びに…」
魔族っ子「はい…まさかここにはいないと思って来たのに…」
魔王「ここにはいないと思って呼びに来た?」
魔王「…? 探しに来たのに、いないと思っていた場所を探しに来たのですか?」
魔族っ子「あ…! いえその…」
魔王「?」首かしげ。
魔族っ子「えっと…その」
魔族「…! 灯台もと暗しと言う事もあるので…一応探しに来たと言う感じです」
魔王「なるほど! それでいなさそうな場所を探しに来たのですね!」
魔族っ子「は、はい」
魔王「それはお手数をおかけしましたね…ありがとうございます」
魔王「では…神官妹さんを待たせる訳には行きません、早く戻りましょうか…」
魔王(…そうだ、ついでに女勇者さんの事も神官妹さんに相談してみましょう…)
魔王(もしかしたら…この問題を解決する糸口のような物が見つかるかも知れませんし)
魔王(仲間として長く勇者さんと一緒にいた神官妹さんなら何かヒントが分かるかも…)
魔王(うん…でしゃばる前に、まずは勇者さんの事をもっと知りましょう)
魔族っ子「…」
魔族っ子 (やっぱり…)
魔族っ子(あれは…あの時の魔王様は…)
魔族っ子(魔王様自身…なの…かな?)ブル。
魔王「どうもお待たせしました…」
神官妹「あ、魔王様ご足労ありがとう御座います」
神官姉「魔王さん…ちゃん! ひ…久しぶり…!」ガタッ。
魔王「あ、神官姉さんもお久しぶりです」
魔王「ってまだ3日も経ってませんが…」
神官姉「私に…取っては…長い…よ!」
魔王「そ、そうなんですか?」
神官姉「そう…魔王…ちゃんの存在は…私に取って…元気…の源!」
魔王「は? な、何ですかそれ…」
神官姉「定期的に…補充しないと…死にます…!」
魔王「そんなにっ!? って親指立てながら何故かとても誇らしげ!?」
神官姉「…後、とりあえず…魔王ちゃんのために…頑張ってきた…ので撫でて…下さい」
魔王「はい?」
神官姉「撫でて…下さ…いっ…!」
魔王「え、えーと…」
魔王「はい」なでなで。
神官姉「♪」
神官妹「はい、話が進まないのでそこまでね」ドカ!
神官姉「きゃん!」
神官姉「うう…妹ちゃん…酷い」
神官妹「それで魔王様首尾についてのご報告なのですが…」
魔王「あ、はい…確か魔界観光行を儲けられるようにしてくれるために色々回ってくれたとか…」
神官妹「はい、何とかそれでたぶんお金を稼ぐ算段は付きました…」
魔王「ほ、本当ですか…!?」
神官妹「はい、百聞は一見にしかず…もうすぐ到着すると思うのでそれでご判断下さい」
魔王「到着…それは?」
神官妹「それは…」
ガヤガヤ…ガヤガヤ。
魔王「? 何やら表が騒がしいような…」
参謀「魔王様…!」
魔王「? どうかしましたか参謀さん? 珍しく慌てた様子で…」」
参謀「じ、実は表に…とにかく来てください」
神官妹「うふふ…さあその答えが分かりますよ魔王様」
魔王「…?」
魔王「…!」
皇帝「ふん…随分辺鄙なところだのう…まあ魔界らしいと言えばらしいか」
帝国側近「全くで御座いますね」
帝国貴族「人が多いな…これじゃ先立って魔界に来た事はあんまり自慢にならんかも」
大公「たいした自慢にはならんかも知れんが…ここに来たのはそれだけじゃないしな…」
共和国指導者「敬虔な創造神信徒なら、来なくてはいけませんからね」
各国の創造神信徒「ガヤガヤガヤ」
魔王「な…何ですかさこの人の多さは…!」
神官妹「恐らくは…街の許容量の10倍は集まったかと思います」
神官妹「勿論お金の方もそれ以上に…」
魔王「し、神官妹さん…貴女は一体何を…!?」
姫「こ、これは一体どう言う事じゃ…!」
商人「…;」キョドキョド。
神官妹「あ~らご機嫌麗しゅうお姫様、まだ借金を返す期日まで日がありますが、今日は一体何のご用で御座いましょうか?」
姫「く…神官妹…貴様何をやりおった…!」
神官妹「何をですって? まあ姫様に聞かれたら、一王国民として答えなければいけませんよね?」
姫「ええいっ! 早くしろっ!」ダンダン(地団駄)
神官妹「まあ焦らず…焦らず」
姫「く…」
神官妹「話は簡単ですよ…法王様にこの街に来て貰えるようお願いしただけです」
商人「…!」
姫「ほ、法王じゃと!?」
神官妹「はい、そうです法王様です」
神官妹「法王様に来てもらい、魔族と人間が仲良くなれるように、世界平和記念式典を執り行ってもらう事にあいなりました」
神官妹「聡明な姫様なら、もうお分かりと思いますが…そんな式典は創造神信徒に取ってはとてつもないビッグイベントっ!」
神官妹「その開催により、国を超えて莫大な信徒数を誇る、創造神信徒たちが王族貴族一般人から一同に会して集まったとそう言う訳で御座いますよ姫様?」
姫「ぐぬぬ」
神官妹「これだけ集まれば…たった7日でもどれだけお金が動くか…オランピックより凄い事になるかも…」
姫「!」
神官妹「まあ…姫様に借りたお金の位は、元金ごと返すくらいは楽々稼げそうですけどね! おほほ…」
姫「むうう…」
姫「しかし…王国以外は魔界には入れないようにしてたのに…どうして…」
神官妹「はあ、まあ全部の国のお偉いさんが国境付近に集まって、国の者に魔界に行っても良いと言われたら…あのお気が小さい王様じゃ頷くしか無いですよね」
姫「く、国の者じゃと!? 一体誰が…」
神官妹「さあ…話に聞くととても美人だったとか…」
姫「…」
神官妹「…」
姫「とぼける気か?」
神官妹「はて何の事でしょう~?」にっこり。
姫「く…! まあ良い…」
姫「じゃが何故じゃっ! たった3日で何故これだけ段取りを、そ、それに法王様をそんな簡単に動かす事など…」
神官妹「出来ますよ」
姫「!」
神官妹「私たちはお願いの仕方を知っていますから」
姫「…!」
姫「ふん…なるほど、色々な国を旅して回った勇者の一行の顔は伊達では無いと言う事か…」
商人「神官妹っ! 姫様に対して…」
姫「良い…帰るぞ」
商人「は? し、しかし…」
姫「良い…置いていくぞ?」
商人「は、はっ! い、今行きます」
姫(ちっ…奴らの顔の広さを侮っていたわ…)
姫(じゃがまあ良い…今のうちに精々良い気になっておるが良い)
姫(何をやっても最後に笑うのはわらわじゃからなっ!)
神官妹「べろべろばー! ばーかばーかっ!」
魔王「…;」
神官妹「あースッキリした…♪」
魔王「あの…お二人はそれをやるために国々回っていたのですか?」
神官姉「うん…!」
神官妹「そうです、とりあえず法王様にぱぱっと約束取り付けてきて、後は二人で手分けして全部の国に宣伝してきました」
魔王「そんなことを…」
魔王「そ、それにしても凄いですね!」
魔王「魔族なのであんまり詳しくは分かりませんが…法王様と言う、これだけ人が集まってしまうような人物をお願いするだけで動かせるなんて」
神官妹「まあそうですけど…でもそのお願いがちょっと難問ですけどね…あはは」
神官妹「女勇者キレるだろうな…まあ説得する暇なんて無かったからしょうがないけど」
魔王「え…女勇者…さん?」
神官妹「そうです。そう言えば女勇者は何処に言ったのかしら」
神官妹「お願いには、女勇者が必要なのですが…」
魔王「女勇者さんが…」
魔王「く…」
神官妹「…? どうしました…?」
魔王「女勇者さんは…」
神官妹「?」
続く
様々な国々からやってきた創造神教の信徒が、法王が演説する世界平和式典を一目見ようと集まった。
確かにこれなら王国の国家予算並みの借金をたった7日で返す事は出来そうだが…。
しかしそれには女勇者が必要となる法王のお願いの代償を払わないといけないらしい。
その代償とは? そしてこんな状態になってしまった女勇者が果たして協力してくれるのか?
次回に続きます。