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  魔王物語 作者:ragana
お久しぶりです。
最近、酷い地震により凄まじい影響が出ましたが皆様は大丈夫でしょうか。
第四十話 -武器のバージョンアップとか無駄だから最初から最強をくれ-
「おわっ! 魔族ってやっぱ魔法発展してるだけあって道が舗装されてる!」
 これで突如の崖に怯えなくていいじゃん。
 先の台詞でわかるかもしれないが、無事瞬間移動で魔族大陸へと移動できたのである。
 さて、取り敢えずベルベンド(仮)がものすごく何か言いたそうにしてるしさっさとどこかに隠れるべきだろう。
 俺は空気をある程度読む人間なのである。
 敢えて読んだ上で空気をぶち壊すときも無くはないけれども。
 私的に言うのであれば、神の恩恵で破茶滅茶に魔法を使えるようになったが故に人外に入ってしまってるんじゃないかと思わなくもないのである。
 さて、無駄な思考はこの辺りでカットすることにしよう。
 幾ら何でも、敵陣地と言える魔族の大陸に入っているにも関わらず道端で突っ立ってる状態は宜しくないだろう。
 確実に正気の沙汰ではない行動である。
 俺が慌てない理由としては、付近に魔族の気配が感じられないからというモノがあるからなのだが。
 気配を感じられないとか、気配が近くにあるとかなら急いでそこいらに隠れている。
 そのぐらいの思考が浮かぶ程度には頭を回転させているのが俺である。
 さて、隠れる場所であるが、初めて来た場所なので心あたりがあるはずもない。
 とは言ってみたが、ここにいるメンバー全員が初めて来たことになる。
 例外が居るのであればその人物は魔族か魔族に繋がりのある人物ということになるだろう。
 前世は魔族でしたから、なんて電波的な事を言い出すのであればそれは電波的な方々の意見を否定すると自身の身の危険を発生させる要因になると勝手に先入観的なモノを作成してしまっている俺からするならばカウントせざるを得ない意見である。
 まあ、そんな意見を吐く人物とは是非ともお付き合いになりたくはないので距離をおくことになる訳だが。
 ――閑話休題しとこう。
 いい加減に無駄な思考を切り上げておかないとだめだなぁ。
 決意でもしない限り無駄な思考がRPGゲームの雑魚キャラ並に無尽蔵に現れてくるとしか思えないので決意をする事にしよう。
 身を隠すまでで良いかな、と自身の縛りを最大限緩めた状態の決意をする俺の決意は決意と呼べるのか首を傾げた。
 その傾げた首を灯台のライトの如くグルングルン回して周囲を確認するも、ここで舗装されていることのデメリットに気がつくだけでしか結果を出せなかった。
 そこそこに長い間野性的というか原始的というか未開発的な地形の地域にいたので自然溢れる場所に慣れてしまっていた。
 よくよく考えれば前いた世界で脱獄した際に一番困ったのは隠れる場所の確保であった。
 今回はそれを思い出す形である。
 舗装されていたら木とか無いしそりゃ当然の帰結だよね、と隠れる場所がすぐ見つかると安直に考えていた少し前の自分に少しの怒りと呆れを抱きつつ考えた。
 野生化してしまったのか判りはしないが、少なくとも今は自然が恋しい俺は自然が溢れていそうな場所を探して歩を進めなければならない。
 主に視界に入る緑を目指すだけなので、緑の着色を施した家などがあるならばそこに向かってしまいかねないという欠陥を秘めているのだが、魔族が近くに居たら流石に宇美音子さんが言ってくれるだろうと他人任せな思考であるので、ある意味で――悪い意味になりかねないけれど吹っ切れてみた。
 船便やら空便を介さなくともこの魔族大陸に来ることが出来た感動を噛み締めるが如く大地を踏みしめる喜びを味わいつつも足だけは動かすことにした。
 頭は現在、船便及び空便を回避したことを思い出して有頂天であるのでまともに稼動していないと言って問題ではないだろう。
 喜ばしくない現象であるが、状態は喜ばしいモノである。
 船便・空便はこの世界に来てから最も危機感を感じたモノであると断言できる。
 ソレほどまでに危機的状況であったのである。
 アレを回避するためであるならばよくゲームなどに登場する一切合切の幻想種等に喧嘩を押し売りして肉体言語で語り合うという明らかに無謀で視察行為で無意味な行動を決行するほうがまだマシだというものである。
 ――目指していた緑は幸いにも建造物などの人工物ではなく森林であった。
 幾ら文明が発展していて自然が少ないとは言え、自然がないわけではないようである。
 森林の奥には山がある格好で、山に木は無い。
 所々に見られる掘り起こされた人工的な洞窟やらつるはし等を見る限りここは鉱山の機能を果たしているらしい。
 今はどういう訳か周囲に気配を感じられず、沈黙を発生させる場所になっている。
 見れば、所々に放置されている採掘道具には埃が被っており、どうも随分放置されている様である。
 ――廃鉱山か何かだろう。
 この辺りであればそうそう見つかることもないだろうと考えなくもないが、文明が発展してるということは監視カメラのようなものが存在するやもしれないので注意は必要である。
 銀行強盗を繰り返した経験があるので防犯カメラを探すことは慣れているためなんとかなるだろう。
 そう警戒してはいたが見るからに何も見当たらない。
 発展具合からして元いた世界ほど科学は発展してはいないようだが、それと並行して魔法が発展してるはずなのだ。
 少なくとも人間以上に魔族の魔法は発展している。
 それを踏まえると警戒は怠れないのである。
 魔法の面は魔導書を展開し、知識を潤わせる事でどうとでもなるだろうから、まあ当面は大丈夫といえば大丈夫なのだが。
 ただ、魔法で言うならば遠見の魔法とかあるなら、下手すればこの状況も見られている、なんて事がありえ無くはないから魔法は厄介である。
 こっちが使うなら便利な手段なんだけど。
 廃鉱山には無数の穴があった。
 やはり、これは掘り尽くした鉱山なんだろうな。
 その中の一つを目指して歩を進め、皆はソレについてくる。
 穴は大凡2mから3mといった程度の直径で、手作業で掘り起こした感満載の不恰好でシンメトリーを保っていない形状である。
 よくよく見れば穴はまっすぐに奥に繋がっているわけではなく、若干左右にぶれたりしている。
 科学が発展していると思ったが、あまり発展していないのだろうか、それともかなり手抜きで掘ったのだろうか――などと考えたが、別段鉱山道をシンメトリーに象る必要がないし、芸術性で評価が変わるわけでもない。
 そう思うとこの一連の思考は正しく無駄であることを理解し、己の思考の流れ方を恨めしく思った。
 無駄もまた必要なものであるとは思っているが、この思考は掛け値なしに無駄であるからである。
 入った穴は鉱石採掘の為に作ったのではなく、迷路でも作っているのかと聞かざるをえない程度に中は入り組んでいた。
 外から見える範囲では少し曲がった穴――その程度しか印象は受けなかったが、外から見えない所に来るやいなや本性を表したようである。
 なぜコレほど無駄に入り組んでいるのか――非常に気にはなる。
 明らかに直線で掘ったほうが内部で採掘できたモノを運び出しやすいというのに。
 歩いて数十分という距離は中々のものである。
 恐らく、ここである程度の声量でなら叫んでも外には響かないだろう――その程度の距離である。
 この穴が開けられた鉱山はここまで大きいものではないように思ったのだが、中が入り組んでいたのでそれ程の距離は進んでいないが、時間だけを食ってしまったという可能性もなきにしもあらずであるけれど。
 まあ、良いか――別段叫ぶわけでは無し、話すだけなのだから。
「んじゃ、この辺でいいかな――形状実装(リード)
 俺は鉱山の一端を椅子に変化させ座れと促すと皆大人しく座った。
 今の今まで宇美音子さんが喚くわけでも茶化すわけでも反抗期に入るでもない事に対して驚嘆の念を抱かざるをえないだろう。
 日本に本当にゴジラがいるレベルの驚嘆を送っておくとしようかな。
「――それで、あなたの正体を教えてくれるのよね?」
 皆が座ると一呼吸も置くこともなくベルベンドが口を動かした。
「あー、うん。そうだな。簡単に言うと神に不可思議能力貰って異世界から飛ばされた一般人ってトコかな」
 牢屋に入れられるパターンの一般人である。
 語弊がありそうなら撤回して民間人と言い直してもいい。
 宇美音子さん以外は'神'という単語を聞いて驚いた表情を浮かべている。
「その不可思議能力でこのあり得ないほど強力な封印を装飾品程度の媒体に付加できるって事?」
 頷いてみせると「デタラメね」と、ベルベンドは肩を竦める。
 そうは言われても神はチートなのである。
 この能力を望んだのは俺だけどな。
「摩訶不思議能力は幾つあるのです? この装飾品を作った能力、先の戦闘での異常な動き――常人では得られないものだと思いますが」
「俺に与えられた能力は物質操作――なのかなぁ。まあ、物質の変化が主な役割だしそれで間違いじゃないだろう。で、さっきの戦闘の動きってのは元からあったもんで神は関係ないよ。多少神に身体の性能を勝手に上げられたようでそれで以前出来なかった行動が多少は出来るようになってるけどな」
 信じられない――そんな顔である。
 んー、確かに武術の奥義に近いものになればなる程どう足掻いても会得出来ない人間ってのが出てくるからなぁ。
 才能というか適正というかそういうモノがあるんじゃないかな。
 と、一人顎に手をやり思う。
 そう考えると、完全ではないにしろ多少は扱える俺はマシな部類だったってとこかな。
「まあ、特別な動きをするって技術だよ。簡単に言ったらだけどな。内容については種類が多いから気になったヤツがあったら随時聞いてくれたらいいよと言いたいけど、俺よくわかってないしな。興味あるなら宇美音子さんに聞けばいいよ。少なくとも宇美音子さんの扱うモノならば明らかに俺より卓越してるし」
 と、どさくさにまぎれて宇美音子さんに面倒そうな説明を押し付ける。
 ――実際、原理などわからんし勘でやってるようなもんだしな。
 説明のしようがない。
 宇美音子さんも同様であるのか、恨めしそうな顔でこちらを見て――いや、あの眼力になると睨むってレベル――でもないな。
 ソレを超越した目だわ。
 今、人を殺してきましたって目ではなく、今人を殺してますってレベルの目だな。
 後が怖いが逃げに徹すれば物理的にあの世に逝く条件を整えることはなくて済むだろうとタカをくくってどっしりと構えることにした。
 逃げという選択は明らかにどっしりと構えてはいないけれど。
 腰が引けている。
 どっしりの対義語があるなら今ここが使うタイミングである。
「あー、後、神からはこれも貰ってるよ」
 宇美音子さんの視線を意識し続ける事に絶えきれず話をすすめる。
 沈黙は長時間に感じられたが、周囲の反応を見る限り一瞬だったようである。
 身も竦む思いとはこの事だろうか。
 今の俺は心臓も竦むどころか、心臓が裸足で全力疾走で逃走しかねない状態である。
 心臓が逃げるとしたら足はないから血管を蠢かして足がわりにして逃げるのかな――なんて現実逃避としか効果を発揮しない思考に没頭しかけるレベルである。
 さて、話を円滑に進める為に魔導書を展開し掲げる。
 風の魔法で浮かばせて見えやすいようにと心遣いも発揮してみた。
 パッと見只の本である。
 宇美音子さんを筆頭に頭にクエスチョンマークを浮かべている――そんな顔である。
 ただ、オッドは違う。
「それ、本物?」
 恐る恐る、といった調子でそう漏らした。
 顔は真っ青という程ではないが少し血行が宜しくないように感じられる雰囲気である。
 オッドにそんな顔色をさせる程ヤバいものだったのだろうか。
 もしそうだったら俺的には動力が核とかそんな感じのモノとかじゃないかと思わざるをえない。
「――一応神に貰ったモンだし本物じゃないかなぁ。神器の変わり臭いしコレ」
 魔の勇者の神器とかなら主人公真っ盛りとか戦隊モノで言うと後から仲間になるヤツ的な立ち位置に成れただろうに。
 後から仲間になるならカラーリングは白とか黒かな。
 魔導書は黒とも取れるし紫とも取れるなんとよくわからない色だ。
 絵の具ぶちまけちゃったような色、つまりきったねえ色と言ってもいいけど。
 明らかに使い古してるか使ってないけど古いモンだし。
 生物でもないのに貫禄を感じそうなレベルで年季が入っているのである。
「ちょっと見せてくれないか?」
 誰でもない友人のオッドの頼みならば吝かではない。
 当然俺は首を縦に振る。
 オッドのことだから歓喜の声を上げつつ我武者羅に魔道書の中身を観るんだろうかと思っていたが、恐る恐る表紙を捲るだけである。
 表紙を捲ると文字通りオッドは固まった。
 何だ何だと覗き込んだベルベンドも固まる。
 ――俺以外が覗き込むと固まってしまう魔法が施されでもしていたのだろうか。
 そうであるならば大事であると俺が少々心配を生産する装置になりそうな所でオッドが再起動しベルベンドもソレに次いだ。
「一体どうしたのですか? 私は魔道書に詳しくはないのでわかっていないのですが」
 べヒス嬢は最初から自分が見ても無駄だろうと思ったのか魔導書を見てもいない。
 俺の今世紀最大とも言える告白に興味がないのだろうか。
 短い期間だが旅の道連れ的な存在にそんな反応をされると少し寂しい思いである。
「べヒスさん、君でも理解できるよ――これの名前は'想像天魔物証伝~魔の章~'という」
 オッドの台詞に俺は首を傾げ、俺は理解出来ないからこの世界でちょっとばかし名が知れたマジックアイテム的なもんかね、とか思っていたのだが、その考えは甘いところにあるとべヒス嬢の顔を見て理解した。
「――お伽話の、ですか?」
「ああ、そうだよ。やたらと過去の文献に名前が出てくるお伽話にしては資料がありすぎるアレだよ」
 と、俺が聞いてもイマイチわからない事であったので聞かないことにした。
 厳密には聞いているのだが、耳から入るや否や他の穴から飛び出てくる具合に聴き逃している。
 興味ないし。
 仕方が無いので宇美音子さんと話でもしようと目を向けると未だに凄まじい形相だった。
 他の皆が話し込んでしまったのでこの隙に乗じて殺されるんじゃないかと生命の危機を抱いてしまう表情だ。
 取り敢えず、宇美音子さんの服――ここで敢えて言おう。宇美音子さんは手ぶらと思いきやそうではないらしくころころ服装が変わる。それも全て何かのキャラクターの格好である――が変わっていることに気がついたので褒めることにした。
 結構いっぱいいっぱいであるので自分が何を言っているかよくわからずに口を動かしているといつの間にか凄まじい表情はなかったかのように穏やかになっていた。
 穏やかというか厳密には普段に戻ったってだけだが。
「おい、ナーク」
「あん?」
 折角、宇美音子さんの機嫌を少なくとも外見レベルで言うなら元に戻せたというのに、水を指された。
 返事がチンピラ宜しくな俺の印象が変わってしまうかもしれない内容になってしまったではないか。
 これでしょうもない話しだったらどうしてくれようか。
 まあ、何だかんだ言ってオッドならば俺的好感度がそこそこにあるので許してしまう事になりそうだけれど。
 取り敢えず、返答をしてしまったからには仕方がないと宇美音子さんを視線から外し、声の方向へと振り向くと、ベヒス嬢、オッド、サイレン、ベルベンドがこちらを見つめていた。
 見ている、という表現で表せない程度にこちらを注視しているのである。
 ふむ、ベヒス嬢もこの状況の作成に貢献しているのでそこそこにまじめな事であるらしい。
 と、俺の中での彼らの印象を少し遠まわしに漏らしてみる。
「ナーク、あなたのこの魔道書――想像天魔物証伝~魔の章~と言うのですが、これは神器よりも凄まじいモノです」
 ベヒス嬢にしてはやけに引っ張るな。
 というより、言いにくそうにしているというか、信じがたい内容なので口にしづらいというかそういう雰囲気である。
「これは――天地創造の一端を担うモノです」
 重々しくベヒス嬢の口から出た事実は、あのいい加減な神を知る俺の耳に入っても「ふーん」という適当な返事しか返す事が出来ない程度の衝撃しか走らなかった。
 多分だけど、殆ど使ってないから実感湧かないんだと思う。
誤字脱字、発見し次第修正していきたいと思います。
発見なさったら是非ともご報告お願いいたします。
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