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14#お料理教室
 時が変わり、場所も変わって、今いる此処は厨房の扉前。
 扉は一部がガラスになっており、中の様子が分かるようになっている。あたしは、そのガラス越しに厨房の様子を伺った。
 若い人から四十代後半のような人、計十人程の男の人がせっせと働いていた。女の人は…いない。見た限りだけど。

「セナ、厨房覗いて…楽しい?」

 あたしが厨房をじっと見つめていると、隣から声がかけられた。呆れたという意思表示を隠そうともしていない声を出したのは、カレン。この国の第二皇子様。

「カレン…」
「…いつまでそうしてるつもり?」
「あとちょっと」
「それ、十分前に既に聞いた」
「…気のせい」
「気のせいなわけないでしょ。何分そうやって覗いてると思ってるの?」

 何分かしら?
 なんておどけて言ったら、笑顔でぶっ飛ばされると思う。

「何で中入らないの?」
「別に意味はないけど」

 観察したかっただけ。
 そう言うとカレンはあたしの顔を見て露骨に溜息を吐いた。

 ほら、中入るよ、だなんて言ってあたしの手を引っ張って扉をガラッと開けるカレン。
 厨房にいた人達の視線が一斉にこちらに向く。
 そしてコックも給仕も、この場にいるあたしとカレン以外の全ての人が、固まった。

「カレスティア…様…」

 コックの一人が震えた声でカレンの名を呼んだ。
 そうだった。
 コイツは一応皇子様だったんだっけ。失敗した。
 すぐ帰って貰えば良かった、なんて思っても後の祭。
 カレンはというと…クスクスと面白そうに笑ってた。
 カレンは随分と図太い神経してると思う。いや、本当に。

「カレスティア様、どうしてこのような所にっ!?」

 奥からコックであろう人が出てきて叫ぶ。
 お偉い人だと直感的に感じた。
 ――料理長、そんな気がする。

「ん?セナが案内して、って言ったから」
「セナ…様…ですか、?」
「あぁ、もしかして知らない?僕の婚約者」
「っ、!婚約者、様ですか?」

 あぁ、また嘘八百言ってる。
 もうそれ位にしか思わなかった。
 でも、あたしのことを意地でも『婚約者』に仕立てあげようとするのは止めてくれ。頼むから。
 微妙に嘘吐いているようで心苦しいぞ。なんて言ってもカレンは止めてくれない。絶対。

「この人がセナだよ。可愛いでしょ?」

 そんな可愛く言っても、笑えないよ。
 あたしの何処が可愛いって?
 君の方がよっぽど可愛いだろ。

「あ、ぇえ、そうですね」

 ほら、料理長さんも困ってる。
 あたしにどうしろって言うのよ。
 料理長さんは冷や汗をかきながらも何とか受け答えを成立させていた。
 結構凄い。

「セナ様、初めまして。料理長のダグラスと申します。ところで、どうしてこのような場所に?何かご用でしょうか?」

 藍色の髪と瞳。優しそうに微笑みながら、言う料理長さんは本当に大人で。
 カレンにちょっとその姿勢を見習ってほしいと思った。本当にちょっとだけだけど。









 カレンは『先に戻ってる』って言って厨房から出ていった。

 そしてあたしは…

「この実はカスナと言って、これを入れることによって味を整えるんです」
「この果物っぽいのは?」
「サザナタという甘い、子供が良く食べる果物です。味見してみますか?」
「いいんですか?したいです!」

 料理長さんによる指導?を受けていた。
 遠い国から来た為に、食材名も良く分からないと伝え、一から教えてもらっているのだ。
 最初は訝しげに見ていたものの、カレンの婚約者発言が効いたのか尋ねようとはしなかった。

「はい、どうぞ」
「皮のままで食べるんですか?」
「はい。一口大に切って、生で食べることが多いのですが、塩漬けにしたりもします」
「塩漬け…ですか。…んっ、甘くて美味しいですね」

 サザナタは紫色をしていて、林檎大の大きさ。でも味は苺で、細かいことを言えば完熟して甘くなった苺。
 林檎程の大きさのくせに、滅茶苦茶軽い果物だ。中身が詰まっているようには思えない。
 料理長さんの話によると、サザナタは軽ければ軽い程美味しく鮮度が高いものだとか。普通反対じゃないですか?
 それから色々なことを教えてもらった。
 味がソース、色はどす黒い血の色のアサナミや、たくわん味のサアエス(牛?)のお肉とか。
 不思議なものばっかりで、やっぱりあたしの世界の常識は通じないのだと知った。…魔術がある時点で分かってはいたけれど。

 そうこうしている内に大分時間が過ぎていた。
 ざっと二時間近くは経っていると思う。

 言い忘れていたが、夕御飯はとっくに済ませている。カレンと此処、厨房に来たのは夕御飯の後のことである。
 ぺシチーナはそれはそれは美味しかった。あさりのパスタとはやはり似ても似吐かないものではあったが、あれはあれでイケると思う。
 東京のどっかに店出したら、絶対人気店にまで伸し上がれる。その位の味だった。

「色々と教えてくださり、ありがとうございました」
「いえっ、顔を上げてくださいっ!お役に立てたのなら良かったです」
「大体の食材の味も分かりましたし、本当に助かりました。お礼にあたしの国の料理を食べて欲しいのですが、厨房、貸していただけますか?」

 料理長さんは快く場所を空けてくれた。しかも、この厨房にある食材は好きに使って良いという。至りつくせりだ。
 料理長さんはこの厨房の責任者さんらしく、カレン達が普段食べている食事もほとんど任されているという。
 今日食べたメシチーナも料理長さん作らしい。今度作り方を教えてもらおう。あたしは心に誓った。



こんにちは、年末ですね。今日は私、家中の窓拭き担当でございます。さて、何枚あることやら…。
今回のお話、お料理教室ということですがいかがでしたでしょうか?ダグラスはぽっと出のキャラでありながら、セナとは何かと近い存在になります。ダグラスとセナは交替に料理を作って試食会とか本気でやりそうですね。いつか番外編でやりたいです~。
さて、番外編といえば、雑談で話していた番外編もそろそろ書かなければいけませんね。



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