反則御伽草子(5/9)縦書き表示RDF


反則御伽草子
作:皓月 白斗



第五話:国際化


鳴神が仮眠から覚めたのは約3時間後、すでに日が高く昇った、10時を少し回った頃だった。扉を一枚隔てたところで掃除機の音がしている。素早く着替えをすませ、寝室をでる。
「おはようございます。っていうのは10時ぐらいまででしたっけ。じゃあこんにちは。完徹したわりには早いですね。」
掃除をしてくれていた、佐保姫からの気持ちの良い挨拶。日頃、妖との(中には気のいい奴もいるが。)時には銃や刀の会話を交える交流が多い鳴神に、ストレスが溜まらない理由だった。
「俺は、回復能力とか高いから。結構すぐに回復するんだよ。」
鳴神は、強大な霊力を持っている。その力は神に通じる程だ。だが、その力は生来の力ではなく、後天的に身に付けられた力なので人の身には耐えられるものではない。そこで鳴神は大半の力を封印し残りは全身へと回し、各能力の向上へあてている。
「ところで、お昼何にしますか?これから買いに行こうと思ってたんです。」
「そうだな・・・何にしようか。」
「なんでも言って下さいね。なんでも作っちゃいますよ。」
にこにこと微笑む佐保姫。
「なら、一緒に買いに行かないか?行きずりに考えてもいいだろ。」
さりげなさを装ったデートの誘い。
「それもいいですね。じゃあ行きましょう。」
すんなりと承諾。が、その微笑んだ表情から見るに、誘いには気付いていないようだった。
まぁ、そうだよな、と心の中で呟き鳴神は外へと向かった
* *

「・・・星斗さん?なんでそんな重装備なんですか?」
多分に苦笑を含んだ問い。大体の事は包みこんでしまう、包容力あふれる佐保姫だが、さすがに今の鳴神には、その包容力も働かないらしい。
竹刀袋に入れた真剣。
懐にしまった銃。
ナイフ、ワイヤー等々。
間違っても買い物へ行くような格好ではない。
そんな格好でなお、目立つのは竹刀袋だけ。他は一般市民となんら変わらなく馴染んでいる。いかに鳴神が日常的にそれらの武器を身に付けているかを示すかのようだった。
「職業病ってやつ?勘弁してくりゃあ。」
変な方言を入れわざとおどけてみせるが、その物騒な持ち物のせいで見事に相殺されていた。広げた両手が非常にむなしい。
「・・・いや、職業病ってのはホントだよ。」
冷めてしまった場を取り繕うように言った鳴神の言葉に嘘はない。
「最近の妖ってのが、物騒なんだよ。なんか銃とか駆使してきたりな。プライド持てって感じだな。」
「星斗さんが言ってはいんですか?」
素早い。的確。
なかなかやるなぁ、と口には出さずに心で思った。
「でも冗談みたいなお話ですね。銃を使う妖なんて。」
「妖っていうのは、基本的に人間の負の感情から生まれて来るからな。時代によって人は変わるからおのずと、妖も変わるんだよ。」
食品センターを歩きながらとつとつと語る鳴神。内容は少々シュールではあったが、穏やかな時間には違いない。
ふと鳴神の視界に、数人の女子高生が入ってきた。
服をだらしなく身に着け、妖かと見紛うかのようなアイシャドウやマスカラをつけた、どこにでもいる不良学生といったところか。
輪になってキャンキャンと騒ぐ声と内容が少し離れたこちらまで聞こえてくる。
「ってかマジうざくてさ〜。ほんと死ねば?っての?むしろ殺すよ、ホント。きゃはは!」
一台詞だけでも、顔をしかめたくなる内容だった。
内容も実も伴わない、簡単に死ね、などと口にする。
言葉は言霊とよばれる力を持つ。その気がなくとも誰々、死ねと言えばそれだけで多少の呪いがかかってしまいというのに。
人を呪わば穴二つ。日常的にそんな言葉を使っていれば、信頼しあう友達関係もつくれるはずもないだろう。
そこまで考えてふと、この雰囲気に既視感を覚える。
この感覚は、先の
「それ」との交戦時と同じもの。
次いで、己の占を思い出す。
“殺意あれど殺意なし”“目的あれど目的無し”
あの交戦時、雫が囲まれていたのに気付かなかった理由。それが、町のいたる所で同じような雰囲気を感じてもはや日常の一つになってしまっていたなら。
「納得いくよな・・・。」
懐から携帯を取り出し、保寿へ連絡。
「ごめん、ちょっと失礼。」佐保姫に断ったところで、タイミングよく保寿が電話にでた。
「やぁ鳴神。皆があくせくと昨日の妖について調べている今日は非番なのに、どうしたんだい?」
「うるさい、黙れ。ヤな言い方をするんじゃない。それよりお前、お前が助けた奴って誰だった?」
「女子高生だよ。どうもいかがわしいバイトからの帰りだったらしい。まったく、厳しくお説教だね。」
「状況は?」
「友達との電話の途中だったそうだよ。・・・昨日話したでしょ?」
「うろ覚えなんだよ。ろくに寝れてなかったから。」
「だめだな〜。話はきちんと聞こうよ。」
「正論だがお前に言われると腹立つな。馬鹿にしてるようにしか聞こえない。」
「それで?なにか思い当たったんでしょ?」
「あぁ、どうやら今回の敵は―
爆音。天井の一部の崩壊。そこから覗く、空に浮いた影。
―言葉の乱れだ。」
空白。
「やっかいだね。」
襲撃の音を電話ごしに聞きながら、保寿がぽつりとつぶやいた。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう