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第1話 天才の誕生
 ビューティフル・パパは、おかあさまのビューティフル・グランマのおなかから出てきたとき、ふつうの赤ちゃんのように「おぎゃあ」とは泣きませんでした。そんな平凡な、どこにでもいるような子ではなかったのです。
 ビューティフル・パパは、「おぎゃあ」と泣くかわりに、「てんじょうてんげゆいがどくけん」といいました。みなさんは、この意味がわかりますか? お釈迦さまは、うまれたとき、「てんじょうてんげゆいがどくそん」といいました。これは、「天の上にいる神さまたち、また、天の下にいる人間たちのなかで、わたしひとりだけがとうといものである」という意味です。「そん」は、「とうとい」ということなのです。ビューティフル・パパは、お釈迦さまのことばの「そん」というところを「けん」といいました。「けん」とはかしこいという意味です。もうわかりますね。そう、ビューティフル・パパは、「わたしひとりだけがかしこくて、神さまであろうと、人間であろうと、わたしにくらべれば、ばかとおなじだ」といったのです。
 そばにいたお医者さまは、これをきいて、この赤ん坊はなんて傲慢なんだろう、とおもいました。そこで、ひとつ試してやれと、ビューティフル・パパにこうききました。
「アインシュタインの相対性理論を説明してみろ!」
 お医者さまは、どうだ、答えられないだろう、といわんばかりの顔つきです。赤ん坊のビューティフル・パパは、退屈そうにあくびをしました。そして、まだつながったままのへそのおをいじりながら、いいました。
「こどもでも答えられるような、そんな簡単な問題にわたしが答えなくちゃならんのかね?」
 お医者さまも、まわりにいたナースさんたちも、そして、ビューティフル・パパのおかあさまも、これにはあっけにとられてしまいました。
「これこれ、お医者さまにむかって、そんな口をきくものではありません」
 おかあさまは怒っていいました。さすがのビューティフル・パパも、おかあさまにはさからえません。しかたなく、アインシュタインの相対性理論のことを説明しました。ビューティフル・パパは、ひとこともいいまちがえることなく、すらすらと答えたので、お医者さまはびっくりしてしまいました。
「申し訳ない。あなたのようなかしこい人に失礼なことをいってしまった。許してくれ」
 お医者さまは、自分の無礼をわびました。ビューティフル・パパは、そんなことどうでもいいというような顔でへそのおをいじっていました。
 次の日、病院にいるビューティフル・パパのおかあさまのところに、郵便がとどきました。差出人のところには、モスト・インテリジェント大学学長、とかいてあります。おかあさまは、こんなえらい人がなんの用かしら、とおもいながら、封をあけました。なかにはいっているものをみて、おかあさまはぎょうてんしました。博士号の学位状ではありませんか。いっしょにはいっていた手紙にはこうかいてありました。

 きのう、あなたの国の文部科学大臣から電話があり、あなたのお子さんのことをききました。お子さんをとりあげたお医者さまが、文部科学大臣のところへいって、事情を話したそうです。文部科学大臣は日本でいちばんかしこい大学よりも、世界でいちばんかしこい大学に連絡したほうがいいだろう、ということで、当大学に電話されたのです。わたくしたちは、はなしをきいて、さっそく世界のトップレベルの博士たちを集め、緊急博士会議をひらきました。その結果、満場一致で、お子さんに博士号をおくることが決まりました。どうかおうけとりください。

 これを読んだおかあさまのおどろきようったらありません。産まれてふつかめにわが子が博士になってしまうとは! なにかのまちがいでは? いや、相対性理論のことをうまれながらに知っていたんだから、あるいはとうぜんかも……。わが子は天才にまちがいない。そうおもうと、おかあさまはきゅうにうれしくなってきました。
 おかあさまはよこでねむっているビューティフル・パパの顔をのぞきこみました。こんな赤ん坊が、お医者さまよりも、えらい学者さんよりも、かしこいなんてねぇ。おかあさまは、ふしぎなようすです。ビューティフル・パパは、そんなおかあさまのきもちも知らずに、へそのあたりをいじりながらすやすやとねむっていました。

 これがビューティフル・パパがうまれたときのたのもしいエピソードです。お医者さまのあわてふためいているようすにはおもわずふきだしてしまいますし、おかあさまがビューティフル・パパをやさしくみつめるごようすには心がぽかぽかとあたたかくなってきますね。


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