二人の距離
その日、平次と和葉は、昼休みが終わってから下校時まで一言も言葉を交さなかった。
というか、和葉が平次を避けているという感じなのだが。
「ハァ…。」
「どうしたの?ため息なんかついちゃって?」
和葉が下校していると、後ろから急に勇登の声がした。
「わっ?!」
突然の現れに、和葉は思わず声を上げてしまった。
「そんなに驚くことないだろー?さっきからオレ、和葉ちゃんの後ろにいたぜ?」
「…そうなん?ごっゴメンなー!」
和葉は、手を合わせ何度も謝った。
「別にいいよっ!それより、どうしたの?暗いよ?」
「うん……あの………」
和葉は何か言いかけようとしたが、涙が溢れ話せない。
勇登は女の子の急な涙に、慌てている。
「かっ、和葉ちゃん?!とにかく…!公園に座ろっ!ねっ?!」
「うん…。」
勇登は近くに見える公園を指差し、和葉を誘導した。和葉は必死に涙を拭っている。
「はい、紅茶。」
公園のベンチに座ると、勇登は自動販売機で和葉に紅茶を買って来た。勇登はコーラを飲んでいる。
「ありがと……」
少し泣いた後なので、うまく喋れない和葉。
勇登は無言で和葉の隣に座った。
「あんな…勇登君…。」
和葉は紅茶を全部飲み干すと、勇登に平次に断られたことを全て話した。
「はぁ?!断った?!しかも聞く耳持たない?!…服部…!!」
興奮したのか、勇登は一人怒っている。平次のことも、いつの間にか呼び捨てにしている。
「んで?何て言ったの?」
「…平次は、アタシのことなんも思ってへんのやな…って感じでゆうたんやけど……」
すると勇登は和葉の体をこちらに向け、両肩を持った。
「いいぞ!和葉ちゃん!!」
「へ?」
「あんな奴、突き離してやったらいいんだよっ!」
一人燃える勇登に、和葉は思わず吹き出してしまった。
「アハハ!おおきに!」
「…和葉ちゃんはやっぱ、笑顔が一番だね!」
笑顔を取り戻した和葉は、宝塚のチケットを取り出した。
「…これごめんなぁ。わざわざくれたのに……。せやっ!良かったら、二人で行かへん?」
微笑み聞いてくる和葉に、勇登は残念がられないよう返した。
「その日は用事があって!友達と行ってくれない?でもオレ、和葉ちゃんと行きたい場所があるんだけど…。」
「何処?」
勇登は、リュックから四折りにしたパンフレットを出し、広げながら話した。
「これ見てよ!新しく出来たトロピカーナランド。今度の日曜日に行かない?」
「ええよ!もちろんや!楽しみやなー!」
「良かった!大阪駅でパンフレットもらってから、和葉ちゃんと行きたいって思ってたんだ!」
そして二人は、遊びに行く相談をしながら家へ帰った。 |