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九話 : 決定的な一撃
 戦局は一進一退だった。文字通りである。
 宇宙連邦軍が積極的に攻撃しているものの、銀河連合軍艦隊は隕石を盾にするなどして、攻撃を凌いでいる。
 そして銀河連合軍艦隊も、宇宙連邦軍からの攻撃や隕石によって阻害されていて、統率が乱れている。

 どちらも、極限の用兵術であった。
 宇宙連邦軍としては、連合軍艦隊に超長距離対要塞砲ヴァン・ジャベリンがある時点で、既に負けた様なモノだ。
 撃たれれば終わる。旗艦ドイチュラント、或いはコロニー、どちらかに撃たれれば、その時点で敗北なのだから。
 それに気を付けつつ、隕石群も迎撃する。

「閣下、降伏すべきでは……。
 ヴァン・ジャベリンを防ぐ手だては無く、敵艦を引き付けられている訳でもありません。
 相手が撃たないから、我々は生かされているに過ぎない筈」

 旗艦ドイチュラントでは、神経をすり減らした士官から降伏論を唱える人間が出始める。
 当然の反応だ。普通の戦争をしていても、こういう意見は出る。
 それが、上述の状況であるなら尚更だった。降伏して結果を楽に得ようとする輩には、少々辛い現実なのだ。

「撃たないのではなく撃てない。
 ここまで隙を晒しているにもかかわらず、威嚇の1発すら無い。
 ならば撃たないという意思の問題ではなく、撃てないという実質的な問題なのではないでしょうか」

 しかしアルベルトからしてみれば、この状況はチキンレースが並行している様なモノだった。
 戦闘はちゃんとした形で行われている。が、それとは別に、戦うか戦わないか、撃つか撃たないかのチキンレースが存在する。

 今まで何度も撃つ機会はあった筈だ。
 にも関わらず、撃ってこない。1回や2回なら撃たないという選択にも見える。
 だが3回を超えたら、撃てないのではないか、という疑念に変わる。4回目はそれが確信に変わる回数だった。

「故障、ですか?」

「可能性の1つ1つに興味はありません。
 いち早く決着すべき戦況に変わりは無いのですから」

 言い、アルベルトは時間を確認する。
 時間と言っても、ストップウォッチで計り始めた時間の方だ。
 戦闘開始から既に6時間37分25秒が経過している。小康状態に陥る事2回、直径100km以上の巨大隕石の到来が3回。

 それらの回数も数えつつ、アルベルトは頷いた。

「戦闘機部隊、再出撃です。45分で出撃まで持って行きなさい」

「はっ」

 無人戦闘機の充電は既に終わっている頃合いだ。
 後は整備。これを45分で行わせる。そして出撃させ、すぐに片を付ける。
 これしか無い。しかし決定的な要素が加わらない限りは、最初の出撃と同じ様な結果になるだろう。

 最初の戦闘機部隊の出撃では、隕石群を上手く利用された。
 途上で幾度と無く軌道計算を行い、どの様な作戦を採るか、熟考してきたに違いない。
 無人戦闘機が敵艦を捕捉する。だがこれは罠で、すぐに隕石が間に割って入り、捕捉が解除される。
 すると、回避行動を取ってしまう。回避行動を取って隕石の陰から現れた無人戦闘機を、易々と迎撃する敵艦。
 それでも近付けば。有人戦闘機が突撃を敢行するが、連携の取れた銀河連合軍艦隊の弾幕の前に為す術無く。
 被害が甚大になれば勝機を得られない。そう判断したジェリオットにより、撤退したのだ。

「そろそろ決着しなくては」

 そういう思いが、アルベルトにも芽生え始めていた。
 同時に、その為の策も練ってある。ジェリオットと共に。

     ***

 一方、銀河連合軍艦隊も混迷していた。
 宇宙連邦軍が密かに展開している通信妨害によって、本部との連絡が全く取れなくなってしまったからだ。

(これでは、流石の私でも主砲が撃てんではないか……!
 無許可で主砲を発射し、コロニーか旗艦を撃ち落とせば、軍法会議ものだ!)

 それが、ウルリッヒが主砲ヴァン・ジャベリンを撃てない理由だった。
 指揮権はあくまでもウルリッヒにあるが、戦略的に重要な拠点を攻撃するとなったら話は別だ。
 講和を申し出たハッシュケイン中将が乗艦している艦を、撃沈する。
 多くの人間が生活するコロニーを、攻撃する。
 どちらも戦略的観点から見た場合、重要過ぎる事だった。

 その程度の判断は、ウルリッヒにもできる。主観的なモノではなく、客観的な判断だ。
 自分がそう判断したので、では上層部は納得しない。非常に当たり前の話だった。

(威嚇砲撃をしようにも、これでは……)

 加えて、側面からの砲撃だ。
 旗艦とは全く関係の無い所へ威嚇砲撃しようにも、そちらは隕石迎撃の為の弾幕が激しすぎて撃てない。
 結果がこの様だ。ズルズルと砲撃の機会を逃し、今に至っている。
 正面の艦隊に威嚇砲撃をしようにも、上手く背後にコロニーがあり、それができない。

「偶然、ではないか。
 コロニーへの砲撃は艦で止める、それぐらいの覚悟は決めているのだろう。
 厄介な事だ。打開策が1つとして思い浮かばない」

 しかし、ウルリッヒは表面上冷静を取り繕う。
 上官が冷静さを失っては、部下に影響が出る為だ。焦り、不信、苛み、そういったモノを生み出す。
 ストレス、プレッシャーを与えてはいけない。むしろ解消しなくてはいけない。
 それが、上官であるウルリッヒのやるべき事だった。

「提督、解析班から連絡です」

「私の所へ回せ」

「はっ」

 通信管制官からの報告に、軽く答える。
 解析班、と言うと情報部の様なモノに受け取られるかも知れないが、実際は参謀だった。
 ただ現代の戦闘は、情報解析が主流となっている。

 その宙域における地理情報、敵の編制、布陣、艦種、距離関係等々。
 より確実に戦闘を行う為には様々な情報の解析が必要で、結果的に参謀も殆どの人員が情報解析のプロになっている。
 それを統括し、実質的にウルリッヒに意見を述べる人間は、このシェイクスピアには2人しかいなかった。
 1人はウルリッヒの子飼い。もう1人はジェイズの一派の人間だ。

 モニターに映し出された男は、ジェイズ一派の人間だった。
 フィルバーグ大尉と言う。女性の士官で、夫と子を持つ中年の女性である。

「立案かね?」

『はっ。ハイヤーム中尉と相談し、決定した事項です』

 フィルバーグ大尉が、少し視線を後ろにやった。
 フィルバーグ大尉の背後では、ハイヤーム中尉が苦しげな面持ちで机を睨み付けている。
 こちらも中年の男。褐色の肌に黒い髪を持つ、痩躯の男だ。

 役に立たない男だ。
 ウルリッヒは一笑し、フィルバーグ大尉に視線を戻した。

「聞かせてもらおうか」

『はっ、恐縮です』

 形ばかりの儀礼はできる士官だった。
 ハイヤーム中尉と比べ、有能だ。流石にジェイズは良い部下を集めている。

『敵勢力の保有戦力は、解析の結果、凡そ15から20の宇宙戦艦、140から160の戦闘機部隊と判断されます。
 現在出撃している艦は17隻。内約は、宇宙空母4隻、駆逐艦8隻、雷艇2隻、哨戒艦3隻の17隻。
 また非武装の補給艦が2隻から4隻程度存在していると思われますが、逐次撤退出撃を繰り返している為正確な数については不明です。
 これらは、我々から見て右翼に駆逐艦が5隻、哨戒艦が1隻。左翼に宇宙空母4隻、駆逐艦1隻、哨戒艦艇が2隻。
 中央には駆逐艦2隻とミサイル艦艇2隻が布陣しています。これらの事から、宇宙連邦軍は”蜂の巣”陣形を採用しているモノと判断しました。
 戦闘機部隊の内約は不確定ながら、有人戦闘機は凡そ17から24、無人戦闘機については100から120程度と予想されます。
 また、軍事コロニー内にもまだ5隻から8隻程度の艦が駐留していると思われます。
 しかしいずれも練習艦として使用されている旧式の艦と思われ、またこれを運用する兵力は無いモノと判断します』

「成る程」

『また地形情報と致しましては、隕石群は総質量の20%が現在既に宙域を通過しています。
 残り80%の内、48時間以内に到達するモノは60%程度、残り40%程度は48時間後から82時間後に宙域を通過します。
 質量規模第3位、第8位の隕石が既に通過しており、第4位と第7位の隕石は48時間後以降に通過するモノと予想しました』

「見事な情報解析だ。解析班一同に惜しみない称賛を送りたい」

『はっ、ありがとうございます』

 敬礼するフィルバーグ大尉。
 人に嫌な思いをさせない士官だ、フィルバーグ大尉は。
 こういう人間は便利だが、やりづらい。故にウルリッヒは放っておいたが、そこをジェイズに拾われた。
 勿体なかったか、と今にして思う。

「それで、立案したい事とは何だね」

 そんな思いを押しつぶしながら、ウルリッヒは訊ねる。

『はい。諸々の情報、地形、また我が艦が置かれている状況から鑑みた結果。
 即時降伏を提案します』

「ふむ」

 一瞬、ブリッジにいる人間達の手が止まり、静まりかえった。
 しかしウルリッヒが眼光を鋭く光らせると、すぐにまた作業が再開された。キーを叩く音、声、ざわめき。

「結論に至る過程を教えてもらおうか」

『我が艦隊と敵艦隊との間には明確な火力差が存在します。
 火力についての詳細な解析にはまだ時間が掛かりますので、数字については申し上げられませんが。
 しかし、実際に戦っておられる提督閣下であれば、既にご理解しておられる事と存じます』

「ふむ。確かに、3倍もの数量差があるのだから、当然火力差も存在するだろう。
 我がシェイクスピアの火力は、特別劣っているとは思わないがね」

『はい。しかしシェイクスピアが持つ火力をフルに発揮できないのであれば、勝ち目はありません。
 火力差と戦闘機の機動力で、必ず圧殺されます』

「戦闘機部隊は1度追い返しているだろう?
 我々は2日を掛けてこの隕石群の軌道を計算しているのだから、そのアドバンテージは計り知れない。
 戦闘機部隊の機動力も、この隕石群の中では大した事は無い。
 シッカリと対処をすれば、追い返す事ができる」

『それは敵の情報解析班が無能である事を前提とした場合です』

 ウルリッヒが目を細めた。
 しかし、睨み付ける様な事はせずにゆっくりと視線を泳がせる。

「無能ではないか」

『いえ、無能です。少なくとも我々と比べた場合は。
 6時間が経っても有効な打開策を見いだせていない時点で、凡そ無能です』

「それでも尚、危険か」

『情報解析は無能であっても、戦場にいる全ての人間が無能であるという保証はありません。
 戦闘開始前にこちらの動きを察知され、提督が会談に応じるハメになった事も考慮するべきかと』

「ふむ、それもそうか」

 あのハッシュケイン中将がいる。
 それだけでも、危険は考慮すべきだった。

『敵旗艦と、軍事コロニーに対する攻撃は本部決定が無ければ敢行できないモノとし。
 即ち、敵左翼と正面にヴァン・ジャベリンによる攻撃が行えず。
 右翼への攻撃を敢行しようとしても、火力差によって封殺される現状があります。
 この事から、これ以上の戦闘継続によるメリットは無く、即時降伏すべきと判断しました』

「ヴァン・ジャベリンが撃てない。それだけの事でか」

『撃てるのであれば話は違ってきます。
 一撃、正面に向かって撃つだけで戦局は好転します』

「コロニーに撃つとは言ってくれるなよ。
 軍規違反を煽動する様な真似は謹んでもらいたい」

『承知しております』

 フィルバーグ大尉は、ギヨームと違いその辺りの柔軟性はある。
 さてどうするか。とりあえず思案する。

「敵左翼より、戦闘機部隊の出撃を確認!
 その数、凡そ130!」

 が、思案しようとした矢先に声が響き渡った。
 一気に騒がしくなる。これでは、思案しようというのが無理な話だった。
 しかし、良いタイミングでもある。戦闘に移るというのなら、ここで結論を出す必要は無くなった。

「フィルバーグ大尉、悪いが結論は後回しだ。とりあえず迎撃しなければならないのでな。
 降伏という選択は、選択肢の1つに入れておく」

『――了解しました』

 それで、通信は切断した。
 意識を切り替え、ウルリッヒは画面へと向かう。

「て、提督! モニターに映像送ります、確認して下さい!」

 しかし、すぐに言われ、モニターにまた視線を向けるハメになった。
 映像が映し出される。調査艇の映し出した映像だった。その調査艇は既に撃墜されている。

 100以上の戦闘機。
 と言っても、その内の殆どは戦闘機と言うのもおこがましい、飛ぶ砲台。飛ぶ丸い筒である。
 アレが無人戦闘機だ。最低限の飛行能力しか搭載していない為、あの様な形になった。
 尤もバリエーションがあり、ミサイルは丸い棒型で、その周りにミサイルを搭載している。

 そんな中、鳥の様なシルエットを持つ戦闘機が見える。上から見れば十字架の様な形。薄いフォルムの戦闘機。
 有人戦闘機だ。人が乗っているだけあり、無人戦闘機より幾分大きい。
 翼の上辺りに丸い大筒を持つ戦闘機は、高い攻撃力を有する宇宙連邦軍の有人戦闘機、AL−22。
 逆に、翼の下に大筒を持つ戦闘機は、ガンポッドによって艦砲を潰す有人戦闘機、AF−18B。
 他にも上下に筒を持つ戦闘機、高い対戦闘機攻撃能力を有しながら、掘削機を搭載し対艦攻撃能力も高い、AF−21。

 いずれも、暗闇の中でも識別可能な様に装着した蛍光プレートが不気味に光る。
 青、緑と色々なバリエーションがある。20数機に及ぶ光の群れ。中でも白い光を放つ蛍光プレートが見られた。
 ウルリッヒは、その白い蛍光プレートを見て、目の色を変えた。

「これは……」

 映像の解像度を上げ、更に拡大する。
 そうすると僅かにだが、シルエットとして機体の形が確認できる様になる。
 AF−21だ。戦時中に急遽開発された戦闘機で、突如現れたかと思えば、瞬く間に18隻以上の戦艦を撃沈した悪夢の戦闘機。
 この戦闘機で白い蛍光プレートを持つ戦闘機は、最早銀河連合軍では悪夢の様に語られている。

 ”銀色の幽霊”の異名で恐れられている……。
 ジェリオット・オーフェンバインの乗機として。

「あの、あの”銀色の幽霊”が、この軍事コロニーにいるのか?
 何でまたこんな所に……」

 ジェリオットのAF-21が、フッと戦闘機の群れの中に消えた。
 これだ、これがジェリオットが、”銀色の幽霊”として恐れられる所以なのだ。
 そこにいた筈なのに、いつの間にか消えてしまって、捕捉できなくなる。

「どうしますか、提督! 対艦攻撃に備えた陣形を……」

「陣形1634だ。すぐに他艦にも通達、とにかく戦闘機を蹴散らす」

「了解!」

 ウルリッヒは命令を下し、すぐさまモニターを切り替え、自艦隊がどの様な動きをしているのかを確認する。
 1度隕石の陰に隠れ、その後に陽動する事で相手の陣形を乱す。
 それによってできた隙を、連係攻撃で叩く。隕石群の軌道を計算しているからこそできる、戦術だ。
 陽動に乗らなければ乗らないで、陽動に出た艦で敵を攻撃する。
 戦えば、必ずこちらが勝つ様に計算された陣形だった。

「フッ、しかしこれは逆に好機。
 ”銀色の幽霊”を討ち取れば、ハッシュケイン中将を討ち取るに値する功績と言える。
 交渉を優位に進められるやもしれない、是非とも討ち取りたい存在だ」

 そして同時に、ウルリッヒ自身の名を上げる好機でもあった。
 ジェイズは”銀色の幽霊”を撃墜した事で名声を得て、血筋と人材が後押しし、今の地位に至った。
 ウルリッヒが”銀色の幽霊”を討ち取れば、ジェイズの名声は陰り、現在の潮流にも多少の影響を残すだろう。
 そうした時こそ、ウルリッヒが主導権を掴む時だ。

 アドバンテージを得ている今、それが現実的なモノとなりつつある。
 やはり最後に笑うのはこのウルリッヒという事か。自然に、ウルリッヒは笑みをこぼした。

――だが。

「ち、超高そ……!? 速ッ!!」

 そこでオペレーターが声を上げた。
 その瞬間。ビーッ、という音が鳴った。
 ウルリッヒのモニターに示されている点が、赤く光ったのだ。

「僚艦”レオンハーテッド”被弾! これは、弾薬庫を直撃!?」

「各種弾薬が爆発、各動力炉に誘爆し、レオンハーテッド爆発まで3秒! 2! 1!」

 ピイィーッ。
 長い音と共に、赤く光った点が、消滅した。
 爆散。宇宙空間にて爆音が聞こえる訳も無く。僚艦が1隻、撃沈され大破した事を報せるのは、機械が報せる音だけだった。

 ウルリッヒは立ち上がる。

「オペレーター! どこからの攻撃だ、何がレオンハーテッドに当たった!?」

「わ、わかりません! 突然何かが迫ってきて、次にはレオンハーテッドに命中しました!
 軌道確認前に被弾、消失!」

「被弾後、被害状況を確認前にレオンハーテッド、爆散した為に計測も不能です!」

 オペレーターが視認できない程の高速で迫り、一撃でレオンハーテッドを大破せしめた。
 否。大破したのは、弾薬庫という場所のせいか。
 設計上、弾薬庫は艦の中央にあり、できる限り被弾しない様にはしてあるが、これも絶対の安全性を保証している訳ではない。
 また周辺に重要な機関を密集させる事により、防御力も上げてある。
 それでも尚、弾薬庫に到達し爆発してしまったのならば、これは致し方ない事だった。盲点を突かれたと言うしかない。

 問題は、その盲点が何なのかだった。
 実弾兵器なのか、ビーム兵器なのか。それがわからなければ、対応ができない。
 ビーム兵器ならば陽電子バリアを展開すれば済む話だが、実弾兵器ならば隕石の陰に隠れる他無いのだ。

「オペレーターは、次の攻撃を見極めろ!
 必ず見切って、方角を逆算するんだ!」

「了解!」

 とりあえず、それはオペレーターに託す。
 既に体力の衰えが隠せないウルリッヒでは、超高速の弾丸に反応ができないからだ。
 若いオペレーターならばそれができる。信じて、託すしか無い。

「戦闘機部隊が僚艦”ジャマイカ”に密着!? 攻撃を受けています!」

 その間にも、戦況は動く。
 ジャマイカは陽動だった艦だ。陽動するだけしておいて、そこに襲いかかられた。
 他艦の救援が遅れたせいだ。

「動力炉近くを集中攻撃! 防御限界点、突破。
 ジャマイカ、動力炉付近を封鎖し、誘爆を回避!
 小破ながら、航行不能!」

「ジャマイカへ通達! 救難信号を発信し、戦闘の継続を放棄しろ!
 戦闘中に伴い退艦は自重する様にもだ!」

「戦闘機部隊がジャマイカから散開! 僚艦”ヘイジョウキョウ”に集中!」

「援護に向かう! 密集し戦闘機部隊に対抗せよ!」

 一気に、戦局が動き出した。
 始まりはどこか。”銀色の幽霊”が現れた時か。戦闘機部隊が出撃した時か。

(いや、原因は)

 あの攻撃だろう。
 僚艦レオンハーテッドを撃沈した、あの一撃。
 あれこそが始まり。アレを止めなければ、この戦局は好転しない。
 或いは、”銀色の幽霊”を討つか。しかし、こう乱戦になっては、”銀色の幽霊”がドコにいるのか定かではなくなる。

「次に見つければ、必ずマーキングしなくては」

 距離の問題で、マーキングには至らなかったが、この乱戦ならば距離の問題は無い。
 1度マーキングしてしまえば、後は自然にモニターに映し出され、集中攻撃ができる様になる。
 ”銀色の幽霊”を討ち取ればこの戦い、1隻の損害で済む。その程度ならばまだ、安いのだ。

 その為にも、あの攻撃を食い止めなければならなかった。
 ウルリッヒは冷静に、待ちの姿勢に入る。



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