5・朝焼けに浮かぶ
「よし、俺はブリッジに戻るからな。早く来いよ」
息もたえだえのアスランの背を叩いたムゥはそう告げると、ゆったりとした動きでデッキパネルに向かう。
「ムゥさん!」
遠ざかる背中にキラが声をかければ、ムゥは何だ?と言うように顔だけをキラに向けた。
キラは少しの間躊躇う素振りをみせ、やがて意を決したようにムゥを見据える。
その口からは先程アスランにぶつけた問いが出た。
「ムゥさんは……何の為に戦うんですか」
ムゥはキョトンとした表情を作り、口の端をつり上げるとデッキパネルの向こうに消える。ただ一言、
『愛する人と暮らせる平和を作る為だ』
そう残して。
ムゥ・ラ・フラガ、ネオ・ロアノーク。
二人の人間として、一人の女性を……その身でかばった男とすればそれは当然の答えなのかもしれない。
ただ、キラには何かはぐらかされた様に聞こえた。
キラは釈然としないまま、青が増した空を見上げる。
月があり星があり太陽があり、明るく暗く、赤く青くて黒い。全ての特徴をないまぜにした夜明けの空は、キラな心そのものだった。
「なんだろう……はぐらかされちゃったかな……」
声に出してみれば、その疑いはますます濃く感じてしまうのはなぜだろう。
そう思うのと同時に、親友の事を思い出す。
果たしてアスランを見れば、手摺にしがみつき必死に立ち上がろうとしていた。
「アスラン……大丈夫?」
「くっ……キラッ!」
何を今更とばかりにキラを睨めば、そこには首を傾げる友の顔。
アスランの中で熱は急速に醒めて行く。
この顔は……反則だっ!
「いや……もういい。さぁ、早く行こう、もう待たせる訳には行かないだろう」
もう厳罰はこりごりだとでも言うようにアスランが眉をひそめれば、キラとしては苦笑を浮かべるしかなかった。
「うん……そうだね。じゃぁ…行こうか…」
「キラ………」
これから戦場に赴くのだと再認識したキラの顔にかげりがよぎる。
「何?早く行かないと──」
「大丈夫だ」
キラを遮り、アスランは続ける。
「お前の答えは俺にはわからない、それはキラ自身が見つけるしかない」
「あ………うん……」
「好きに動けばいい。それでも道に迷うなら、俺がキラを───迎えに行く」
「…………うん」
キラが頷いたのを確認すると、アスランは微笑みを浮かべてキラを見つめた。
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