4・軍人は辛いよなぁ
「うん……」
キラは否定も肯定もしない。アスランは怪訝そうな顔でキラに視線を送る。
意外だったのだ。
てっきり肯定してくれるもねとばかり思っていたのに。
いや……アスランは首を振り、その考えを振り払った。
キラが俺の考えを理解してるなんて思っちゃいけない。キラの考えはキラにしかわからない、俺とキラは別の人間なんだ。
だからこそ二人は何度も道を違え、刃を交えたのだ。そして……だからこそ想いを共有する度に二人は一つになり、絆を深めて成長してきたのだ。
「アスラン?」
キラは急に黙り込んでしまった親友におずおずと声をかけた。ひょっとして、自分は怒らせるような態度を取ってしまったのだろうか?いつになくそっけない態度をとってしまったし。
キラの呼び掛けにアスランはゆっくりと首を回し、眩しそうに微笑んだ。
「えっ…ええっ?」
まさかアスランが自分の事を考えていたとは知らないキラは、笑顔の意味がわからず戸惑うばかりだ。
そんなキラがおかしくてアスランは声をあげて笑う。
端から見れば何とも、平和な光景だろう。
「おいおい……なぁにほんわかムード作ってだよ」
突然降って沸いた声に二人はデッキパネルを見る。すると、そこには金髪で精悍な顔立ちの青年が呆れた様な顔で腕を組んでいた。
「ムゥさん!」
「フラガ少佐!」
「よっ、おはようさん」
ムゥは片手をヒラヒラさせながらアスランの背後に回ると、いきなりヘッドロックを仕掛けた。
しかもご丁寧にゲンコツで頭をグリグリしている。
「フラガ少佐っ! 離して下さいっ!」
アスランは締め上げてくる腕をバシバシ叩いて声を絞り出すが、聞き入れてくれる様子はない。
「悪いが、艦長命令でね。仕方なーくやってるんだ。『呼び出しをサボったアスラン君に厳罰を』ってな。そういう訳で恨むならマリュー艦長を恨んでくれよう」
確かに自分はキラを呼び出す命を受けていたし、怠慢だったのも認める。だが、これとは別の問題だ。
「いや〜俺もこんなことはしたくないんだがなぁ、艦長の命令だからなぁ」
嫌がってると言っている割にはぐいぐい締めてくる腕を押さえつつ、アスランは親友に助けを求めた。
「くっ…キラ! 君も見てないで少佐を止めてくれ!」
だが、キラは爽やかな微笑みをたたえたまま、まるで動こうとしない。
「ごめん…僕もマリューさんには逆らえないんだ」
「軍人は辛いよなぁキラ……ま、そういう事でしばらく堪えてくれ」
アスランは遠のく意識の中で理解する。キラはさっきの事を根にもっているのだと。 |