3・アスランの答
どれくらいそうしていただろうか。
キラの苦悩は深まるばかりで、何の光も見えてこない。それとも、答えなんてないのだろうか。
キラの目の奥が突然の光にチクッと痛んだ。
ようやく、夜が明けるらしい。水平線の向こうから溢れる光は瞬く間に世界を一変する。
この日が一番高い所に来るとき、また戦いが始まるのだ。そう考えると太陽にさえ感情をぶつけたくなる。
その時、キラの背後でデッキパネルが開く音が聞こえた。
「キラ!」
馴染みのある声にキラが振り向けば、そこには軍服に身を包んだ青い髪の少年。
「アスラン……」
デッキの影を抜けたアスランは日の光に赤く染まり、緑の目が淡く輝くのが見える。
キラの消沈した声にアスランは何かを感じたが、逆光に埋まる表情を読むことはできなかった。
「ここにいたのか……捜したぞ。艦長が呼んでいる。おそらくベターメンツの件だろう」
「マリューさんが?……うん、わかった…」
やはりと確信する。キラの様子が明らかにおかしい。アスランは聞かないではいられなかった
戦いを前にこの有り様では……。
「どうかしたのか?」
キラはアスランに背を向けると、再び手摺に体を預けて燦然と輝くバルト海を見下ろす。
その背中はとても悲しく、辛さを感じさせた。それはキラが背負うものの重さなのかもしれない。
「うん、少し考え事をしてたんだ」
アスランは何も言わずにキラの側に立ち、同じ様に海を眺める。潮風が頬を撫で、遥か後方へと広がっていく。
何も聞いてこない友にキラは感謝しつつも、答えが見つからない焦燥だけが募っていく。
気がつけば、キラはアスランに彼自身の疑問をぶつけていた。
「ねぇ、アスランは何の為に戦うの?」
アスランは朝焼けに照らされた横顔をチラリと見ると、手摺に背を預けて答えた。
「自分の為…なんだろうな、きっと」
大切な人を守る為、自分の居場所を守る為、平和な世界を取り戻す為。
自分が悲しみたくないから、傷つきたくないから。それは願いでもありワガママな欲望でもある。
我ながら情けない答えだな。アスランは自嘲した。
それでも、俺には命を賭けるに値する理由だ。 |