1・平和を唄う者
その頃、世界各国で発生する争いを止めるため、大戦の英雄『キラ・ヤマト』、『アスラン・ザラ』、そして彼らと志を共にする仲間達は真の平和の為に剣を振るい続けていた。
彼等は鋼の天使を駆り、それらの野望をひとつ、またひとつと撃ち抜き、砕いて行った。
次から次へと、まるで途切れる事を知らない反乱に辟易しながらも彼らは戦い続けた。
そして慢性的かつ惰性的とも言える戦いにも、やがてその終りが見えてくる。
プラントと地球、ナチュラルとコーディネーター。
二つの種族が一丸となり世界の為に戦う姿は人々の胸を打ち、長らく横たわっていたわだかまりを少しづつ溶かしていった。
キラ達が勝利する度、人々は歓声を上げ、近付いてくる平和を噛み締めていた。
だが世界が真の平和へと向かい、人々の笑顔が広がっていく最中、悲劇は起きる。
翌年 C.E.76 6月10日
後に言う『第4次バルト海戦』にて、世界の死と混沌の歯車がゆっくりと周り始める。
悪夢の様な戦いから一年。
今だ世界には安息は訪れていない。
各国家の政治バランスの崩壊、占領地の解放、その混乱に乗じて再び戦火を広げようとする反乱軍。
ザフト、地球連合は全勢力を持ってこれを制圧していく。
ユーラシア連邦とアフリカ共同大国の国境に面する位置にバルト海はある。
そこは今、恐らく数多く存在する反乱分子の中でも一際強大な組織『ベターメンツ』と名乗る者たちの拠点があった。
ベターメンツの根城は大戦時に大破した空中戦艦を要塞に改造したものであり、積まれていたモビルスーツ50体がまるごと奪われてしまったのである。
改変を意味する名を持つ彼等がバルト海を拠点に選んだのには理由がある。
バルト海は最深部500mと近海と比べてかなり深いが、陸付近は僅か数十mしかないため付近に軍事基地はなく、また巨大戦艦が停泊することも不可能であった。
地球、ザフト連合は幾度も攻略戦を仕掛けていたが、その結果は悪戯に被害を増長したと言っても差し支えないであろう。
空中戦艦以外の突入が不可能であることからモビルスーツ部隊も回収、帰還の都合上、空戦用モビルスーツの使用を余儀なくされてしまう。
圧倒的不利な状況を打開すべく、英雄達に白羽の矢が立ったのは必然かもしれない。 |