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 ここまで、誤字脱字に負けずにお付き合いしていただき、ありがとうございます。

これからも頑張って、誤字脱字を減らし、楽しい小説を書けるように勉強していきます。

 今後とも、よろしくお願いします。

 (≧∇≦)ノシ
< 蟷螂 >
「じゃあ、周さんの元気な姿も見れたし、微妙な美味しさのラーメンも食ったし、俺ら帰るわ」

 タケシは、そう言って席を立つ。

「ああ、また来てくれ」

 お金を払わず店を出て行くタケシに代わり、陽子が支払いを済ませる。

 後片付けを始めた閑が、両手にラーメンの器を持って厨房に戻ってくるのを、店主が新聞を読む振りをしながらチラリと見る。

 その大きな両手に持たれた二つの器には、かなりのラーメンが食べ残されていた。

 先に店の外へと出て行ったタケシの後に、お金を払った陽子が店を出て行くと、しばらくしてバイクが店先を離れていくエンジン音が店内に残った者達に聞こえて来た。

 バイクの音が小さくなると、店の店主が、眉間に皺ほ寄せながら口を開く。

「そんなに俺のラーメン不味いか……」

「……はい、不味いです」

 遠慮無く意見を述べる周に、巨人も大きな頭を天井に擦り付けながら頷いた。

「なんだと、この野郎!。怪我人は邪魔だ、とっとと帰りやがれ!」

 予想できていた感想とはいえ機嫌を損ねた店主は、怒鳴りながら新聞を広げて読む様に怒った顔を隠した。

 周と閑の二人は、そんな店主を見て無邪気な笑みでクスクスと肩を揺らしていた。

 しばらくして周は、店主に店を追い出される様に裏口から帰宅しようと出て行った。
 
 周は、怪我が原因で重たくなった両脚を引きずるように店を出て行く。

「アニキ……」

 それを直ぐに巨人の閑が、ビニール袋を片手に呼び止めた。

「なんだ、閑?」

「オヤジサンガ、モッテケッテ」

 閑からビニール袋を受け取った周が中を覗き込むと、中にはチャーハンとチャーシューの耳が入ったタッパが入っていた。

「ふっ……あの親父め……」

 頑固だが、面倒見の良い親父である。

 周の家は、とても貧しい。

 本来なら、金銭的なことを考えれば、日本に来ている余裕なんてとても無い。

 だが、周の天才的カンフーの実力を見込んで、日本の道場に講師として呼び寄せたのが、この中華飯店の店主である。

 日本の講師は、中国の何倍も収入が高い。それが、理由である。

 しかし周は、稼いだ賃金の殆どを、国の両親の元へ送金している。

 周の下には、あと六人の幼い弟や妹が居る。周は、武術を持って家族を養う為に、一人日本に出稼ぎに来ているのだ。

「ジャア、アニキ、キオツケテ」

 閑は、そう言って周を見送ると、店の裏口の扉を閉めて店内へと巨体を消していく。

 一人残った周は、手にビニール袋をぶら下げたまま、店裏の空き地をボート眺めていた。

 ほんの数日前、タケシと対戦した赤土の空き地。その激しい闘争が、心地よく記憶に蘇って来る。そして周は、空き地の中央で空を見上げた。

「日本の格闘技家も、捨てたもんじゃあないな……」

 そう呟いた周は、この気持ち良い空気を汚すほどのおぞましい気配を感じ、その方向へ「なんだ!」と大きな声を上げながら身構える様に振り返る。

「中国拳法の周……だな?」

 振り向いた周の目に入ってきたのは、この空き地に唯一出入できる小さな脇道に立つ一人の男の姿だった。

「貴様、何者?」

 周は、出入り口である路地を塞ぐ様に立っている長身の男を、鋭い眼光で突き刺すように睨み付ける。

 周は、思った。
 
 この男は、自分の名前を知っていると。故に周は、話しかけてきた男に、更に警戒を強める。

 男の身長は、百九十前後程有るだろうか。閑に比べれば確実に低いが、タケシと比べれば、明らかに高い。だが、身体つきはタケシの方がマッチョである。

 細い針金のような手足に引き締まった(すじ)のような筋肉。

 格闘技家なら、ボクシングやムエタイの選手の体型に近いだろう。それは持久力を備えた、アスリートタイプの筋肉だった。何よりも引き締まった細い手足は、やたらと長く見えた。

「蟷螂拳を使うと聴いて来たが……、怪我をしているのか、……詰まらん」

 男は、ギョロリとした瞳で周を眺めながらそう言うと、そのまま後ろへ振り返り、其の場から立ち去ろうとした。

 その行動に、一瞬で周の額に血管が幾つも浮かび上がり、怒りをあらわにする。

「またれよ、これはかすり傷!!」
 
 周の怒鳴り声が、空き地に大きく響いた。

 その言葉に男が振り返ると周が、ビニール袋を空き地の隅に置き、両手の包帯を外し始めた。

「用があるのだろ、こっちに来いよ」

 周は、指にはめていたギブスを外すと、男の足元に投げ捨てて挑発する。男がそれをチラリと見た。

「…………」
 
 空き地の赤土の上に立った男は、ゆらゆらと体を揺らしながら構えを取る。

 闘争、決闘、喧嘩、対決、試合、死闘。どれに当てはまるかは分からない。だが、確かなのは、これからこの二人は間違いなく戦う。それだけはハッキリしていた。

「き・さ・ま……!!」

 男の取った構えを見て、更に周の額に青筋が増える。

 その構えは蟷螂拳?。

 だが、周の使う本格的な蟷螂拳とは違い、姿勢も高く、ただのボクシングの構えに、指の作りだけを蟷螂拳に真似ただけの物であった。

 蟷螂拳というより、掛け塾に書かれた柳の下の幽霊画に似ていた。

 周の目には、それが自分に対しての侮辱に見えた。ならば本物の蟷螂拳を見よといった感じで、周も蟷螂拳の構えを取った。

 相手に対して真横に体を向けて、大きく横に股を開いた体制から深々と腰を落とす。両手は、人差し指、中指、親指の三本で鎌の様に組。そして、ゆっくりと前後に体を揺らしながら対戦相手を睨みつける姿は、まさに本物の蟷螂拳であった。

「本物の蟷螂拳を見せてやる!」


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