ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
< 決着 >
「キィキィキィキィキィィィィーーーーーーー」

 変身したタケシを見て鬼々蜘蛛が襲いかかる。

 陽子もこちらに走ってくる鬼々蜘蛛を見るや否や、先程まで居た雅史の場所へと逃げ出していた。

「タケシとやら、戦いかたは御主の気とわらわの妖力を共有するさいに、記憶の一部を送ったから分かるよのぉ」

「あ、ああ、分かる、良くわかんないが良くわかるぞ……。催眠学習みたいだ……、知らないことが、はっきりと分る」

 春婆怒とタケシの声が、変身した一つの体の中から聴こえてくる。

「キィキィキィキィキィィィィィ」

 黒緑色の甲冑。まるで、未知の生き物のようにも見える姿になったタケシが、拳を天に向けて振り上げた。

「おりゃ!」

 鉄板に、岩を落としたような音が響く。

「キィィィィィーーー……!!」

 タケシは、振り上げた拳を、鬼々蜘蛛の頭にハンマーでも叩き付けるように振り下ろし、突進して来た巨体を、あっさりと止めてしまう。

「な、なんちゅうパワーだ……」

 変貌を遂げた孫に対して、拳四郎が目を丸くして驚く。

 その一撃は、確かに拳四郎のパワーを超えていた。

「キィキィキィキィィィィ!!、コザカシヤャァァァァァ!!」

 だが、その一撃にも怯まない鬼々蜘蛛。

 すぐさま二本の前足でタケシを襲う。

「はっ、ちょいや!」

 肘打ち、チョップ。

 タケシは、二つの攻撃で、素早く鬼々蜘蛛の襲い来る前足を払いのける。

 そして、鬼々蜘蛛の顔面を目掛けて、全身を大きく捻っての中段廻し蹴りをぶちかました。

「キィェェェェェェェ!!」

 鬼々蜘蛛の忌まわしい顔面が変形しそうなほどの廻し蹴り。

 それを喰らった鬼々蜘蛛は、その巨体を数回転スピンさせながら後退していく。

「凄い、凄く強いな……」

 逃げ帰ってきた陽子に対して、木の影で雅史がボソリと言葉を漏らす。

 確かに誰の目にも、今のタケシの強さは人知を超えていた。

「ちっ、何て硬い皮膚してんだ、あの蜘蛛野郎。幾ら殴っても致命傷まで与えられないか……」

「ええぃ、わらわを実体化させい、使い方は分かるはずじゃろ」

「いや、一応俺、空手家なんだけど。空手家ってのは空の素手で戦うから空手なんだけどよ」

「今はそんなことを言ってる場合ではなかろうて!」

「ちっ、まあ、しゃあねえか……」

 タケシが手のひらを前に突き出す。「ハルバード、ウェポンモードッ!」

 伸ばした手のひらから、あの緑風が再び吹き出る。

 それは、鋼の長槍に一瞬で変わると、タケシの目の前で浮いていた。

 タケシは一瞬で現れた長槍を、伸ばした手で強く掴み寄せると、軽やかに槍の達人の如く演武を見せる。

「おおぅ、俺、決まってる!」

 素晴らしいき槍の演武。最後は槍を片手で脇の下に挟んでピシッと決めた。

「あやつ!、空手一筋のはずが、何時の間に槍術を得とくしたのじゃ!」

 拳四郎の言うとおり、タケシは槍術など習った事など無い。これは全て、春婆怒の記憶を操る術のなせる技。

 妖力共有している間のみ得られる記憶の操作妖術である。

「何か俺ってばスゴ!」

「これが妖力共有なのじゃ」

「そんな事はどうでもいい、まずはあの蜘蛛野郎を叩きのめすのが先か!」

 タケシは、槍を構えたまま鬼々蜘蛛に走り寄る。

「派手に行くぜ!」

「キィィィィィィィィーー!」

 攻め入ったタケシが、幾度と鬼々蜘蛛に槍を振るう。

 すると鬼々蜘蛛の硬い皮膚が、次々と切り裂かれ、それに合わせて鬼々蜘蛛は悲鳴を上げながら後ずさりを始める。

 切り付けられた鬼々蜘蛛の傷口からは、気色の悪い紫の体液が飛び散り、背中から生えた村長の顔も苦痛に歪む。

 確実に効いている。

 鬼々蜘蛛のダメージの大きさは、見ている者達にも見て取れた。

「タケちゃん、やっちゃえ、やっちゃえ!」

 陽子の声援が飛ぶ。

 しかし、鬼々蜘蛛はノミのような跳躍で、鳥居の上へと跳び逃げた。

「キィキィキィキィキィーー、よくもよくも、シャャャーーーーーーーーッ!」

 鳥居の上へと退避した鬼々蜘蛛は、村長と本体の二つの口から、ダブルで粘着糸攻撃を発射する。
 
「おっと、疾風防壁!」

 ダブル粘着糸攻撃を防ぐために、タケシは技の名を叫びながら槍を真横に振るう。

 すると目の前に、緑風の壁が吹き上がり、鬼々蜘蛛の吐いた二つの粘着糸を切り裂きながら弾き飛ばして行く。

「キィキィキィキィィィィィーー!」

「この蜘蛛野郎、バカみてえに何時までも高い所に上がってんじゃあねえぞ!」

 そう言いながらタケシは、可憐な長槍の演武を見せる。

 すると槍の刃先に緑風の妖気が、どんどんと集められていった。

「くらえっ、烈風槍飛弾!」

 緑の妖気が集まった槍の刃先を、鬼々蜘蛛に向けて突き立てると、そこからドリルのような緑風の弾丸が目標に向けて発射された。

 そして、破壊的炸裂音が空気を揺らした。

「キョェェェェェーー!」

 緑風の弾丸が鬼々蜘蛛に命中すると、その衝撃が鬼々蜘蛛の体全身に激痛と変わって広がる。

 鬼々蜘蛛は、悲鳴を上げながら鳥居から地面へ落下した。

「キィキィキィキィィィィ、ゆるさんぞォォォ!」

 地面に落ちた鬼々蜘蛛は、完全に怒りが頂点に達したのか、何も考えずにタケシに向かって突進を始めた。

 タケシに向かって怒りをあらわに突進してくる鬼々蜘蛛。

 タケシは手にしている槍を、軽く空に投げて逆手に持ち替えると、槍投げの構えを取る。

「影槍呪縛!」

 そう叫ぶタケシは、狙いを定め、槍を鬼々蜘蛛目掛けて投げつけた。

 空気を切り裂きながら槍が飛んで行く。

「フゥキィィィィィィィ!?」

 タケシの投げた槍は、村長の胸元にザクリと刺さり、鬼々蜘蛛の突進を止めた。

「キィィィィィィ、何じゃあこの槍は!?……動けぬ!?」

 鬼々蜘蛛が突進を止めたのは、槍が刺さった痛みではなかった。

 むしろ痛みはまったく無かったが、槍が刺さったことで、全身が痺れるように固まり、体の自由が利かなくなっていた。

 そして胸に刺さった槍を、引き抜こうと村長が震える手を伸ばすが、槍はまるで幻の如く掴むことすら許さずすり抜けてしまう。

「そろそろ終わりにしようぜぇ」

「キィキィキィ……」

 タケシは両拳を強く握りしめ、股を大きく開き、ゆっくりと力強く腰を落とし始めながら、気合を貯める声を上げた。

「我が力は勇気なり!」

 力を込めるタケシの周りに、緑風が現れる。

「我が技は正義なり!」

 その緑風は、タケシを中心にグルグルと回り始め、やがて竜巻に変わって空へと伸びて行く。

「ふぅぅ、なんと言う……まさに神風!」

 未だ粘着糸で自由を奪われている拳四郎が、その光景を見てそう言った。

「キィィィィィィーーーーー!!」

「タケちゃん!」

「おおっ、春婆怒様ぁ!!」

 その竜巻を目にする全員が、今、クライマックスを迎えようとしていることを感じ取った。

 ただ、鬼々蜘蛛だけが自由の利かない重い体を震わせながら、その竜巻に宿る妖力に、一人(一匹)だけ死の予感を感じて身を震わせていた。

「力と技で悪を滅する。跳うっ!!」

 竜巻の中心に居たタケシが、掛け声と共に空をめさしてジャンプする。

 まるで竜巻に吸い上げられるように飛び上がって行ったタケシが、竜巻のトンネルを進んで天に昇って行く。

 そしてタケシの体が竜巻の頂点に達すると、竜巻の上部がタケシと共に向きを変えて、地上にいる鬼々蜘蛛に狙いを定める。

「キィィィィーー……、うそぉん……」

「堂本流超人空手奥義、風神飛翔脚!!」

 向きを変えた竜巻は、飛び蹴りの構えをしたタケシを中心に、巨大なドリルのように鋭く回転しながら鬼々蜘蛛目掛けて突っ込んで行く。

「そんな奥義、無いわぁ!」

 本家の拳四郎が言うのだから無いのでしょう……。

「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「キィキィキィキィィィィィィィッ!!」

 それは、この村に起きた五十年間の因縁を、締めくくるにはちょうどいい爆音であった。

 竜巻を纏ったタケシの飛び蹴りが鬼々蜘蛛に命中すると、空から飛んできたミサイルのように爆発して、大きな爆炎を派手に上げた。

「むおっ!」

「きゃ!!」

 周りの全員が、爆炎の灼熱に顔を歪めた。

 だが、その爆炎が、一時停止を掛けられた映像のようにピタリと固まる。

「なんだ!?」

「と……止まった?、炎が凍りついた様に止まってる……」

 陽子が言った。

 その次の瞬間、固まっていた爆炎が、今度は巻戻しをする映像のように萎んで行く。

「中心に吸い込まれているんだ……」

 誰が言ったか、その言葉のどおりであった。

 爆炎の中心に立つ、春婆怒と妖力共有したタケシの体に、爆炎は吸い込まれて行く。

 タケシが、その黒緑の甲冑で全ての爆熱を吸い尽くすと、そこには巨大でまがまがしい鬼々蜘蛛の姿は無くなっていた。

 そして、足元に白いブリーフ一丁姿の村長がぐったりと横たわって居るだけだった。
ラ○ダーキックじゃないよ!w


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。