2008/09/28
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< 強き力、弱きに宿る・前 >
駅前に近い商店街。
あたりは日が落ち薄暗くなり始めているが、商店街を行き来する人々の活気は未だいきづいていた。
わいわい騒ぎながら横に並んで歩く学生達の横を、自電車の乗った主婦が後ろから邪魔そうな表情で抜きさっていく。
そんな光景を細い脇道から顔を覗かせたポン引きの男が、辺りを眺めながら獲物を物色していた。
町は、そろそろ大人の時間帯に変わろうとしている。
そんな商店街の中を、一人の少年が青ざめた顔で歩いていた。
あの家での一件後、河本少年は何処をどう歩いたかも分からないまま、ふらふらとした足取りで、ただ只管に歩いていた。
「なんなんだよ……、あれは……」
時折ぶつぶつと呟く少年を、擦れ違いざまの通行人が、気味の悪そうな表情でチラチラと見ていた。
しかし河本少年は、そんな周りの視線に気付く気配はなかった。
少年の頭の中は、先程起きた不思議な出来事がグチャグチャになりながら、頭の中でグルグルと激しく回っていた。
それが、「混沌」だと河本少年には理解すら出来ていない様子だった。
「お、あれ、河本の野郎じゃねえか?」
「本当だ、オメー目が良いな」
ふらつきながら歩いている河本少年を、ゲームセンターの前でウンコ座りをしながら屯していた不良少年四人組の一人が見つける。
「ちと、暇潰し程度にかわいがってやるか」
不良少年のリーダー格が立ち上がると、残りの三人もつづいて立ち上がった。
彼らは今日、他校の女子生徒とカラオケに行く予定だった。
だが、いきなり女子生徒達のドタキャンを喰らってイライラしていた。
間違いなく彼らは、今見つけたイジメラレっ子に八つ当たりをするつもりである。
「よぉ〜、これはこれは河本君じゃないか〜」
「!?」
朦朧としていた河本少年は、突然かけられた声に反応して、意識を取り戻したように、ハッとする。
そして自分に向かって歩いてくる四人の同級生にやっと気付いて、何時もの暗い表情を作り俯いてしまう。
「なぁ、河本よ〜、お前のバイトって、日払いとかじゃねえの?。もしそうなら金を貸してくんないか?」
不良少年の一人が、そう言いながら河本少年の肩に手を回した。
肩に手を回されて逃げられないように確保された河本少年は、不良少年に囲まれ脅えるように小さくなっていく。
「なあ、ちょっとこっちで話そうや」
そしてズルズルと商店街の裏路地へと囲まれながら河本少年は連れて行かれた。
その裏路地にはピンクな店は無く、店の裏口が多い人気の感じられない通りであった。
しかも、看板や自動販売機などが邪魔で、メインストリートからは人目も届き難く、不良少年達にはうってづけのスペースとなっていた。
そんな場所に連れ込まれた河本少年は、ただ怯えているだけで逃げようとする素振りすら見せなかった。
「ひ……日払い……じゃないよ……」
「ああ、そうです……か!」
拳が振るわれた。
「ぅっ!」
不良少年のボディーブローが河本少年の腹に叩き込まれる。
殴りつけた不良少年の拳に残る感覚、それは人間を殴った感触ではなく、ただの吊るされた食肉をロッキーの様に殴った感触だった。不良少年はそう思っていた。
それだけ不良少年に取って、河本少年は人として認められていない証拠なのだ。
「そんなのどうでも良いんだっ……よ!」
また、拳が振るわれる。
「うぐっ!」
今度は別の不良少年が河本少年にボディーブロー打つ。
「オメー見てるとよ、なんつーか……いらいらするんだ、よ!」
更に蹴り。
「ぁぅ!」
後ろに居た不良少年が、河本少年の尻に蹴りを入れた。
「皆、なに……なにするんだよ……」
「何するんだよ?。そうじゃねえだろ、何するんですか、だろ!」
そしてまた不良少年は、無抵抗の河本少年を殴った。
「やめて……やめてよ……」
「あ〜、やっぱこいつむかつく、ボッコにしようぜ」
「そうだな、ボッコにしちまうか」
「!!」
リンチ開始。
それはただの集団暴行だった。
無抵抗の少年を、四人の少年が逃げられないように囲んで、一方的に殴る蹴るを続ける。
そして立っていられなくなった少年は、倒れこんでしまう。
それでも不良少年達は、尚も河本少年を蹴り続けた。
絶妙な力加減だった。河本少年が医者に駆け込まない程度の暴行。
大きな傷が出来ないように、ただ体力を奪い、苦痛を与えるだけのネチネチした暴行であった。
暫くの間、そんな陰険な暴行が続けられた。
「この辺にしとくか?」
「ああ、そうだな、死なれても困るしよ」
「……ぅぅ」
不良少年の一人が、倒れこんでいる河本少年の頭を屈辱的に踏みつけたまま仲間の問いにそう答えた。
「ぺっ」
更に唾を吐きつけると、その場を後にしようと背を向けた。
とりあえず不良少年達のストレスは、若干だが解消された模様だ。
しかし、不良少年達が人気の無い路地から出て行こうとした時である。
「やっちゃいなよ!」
声が聴こえた。
それはインチキ臭い外人のような声。
「おい、今、何か言った?」
「いや、俺じゃないよ」
声は、不良少年達全員に聴こえいた。
不良少年達は一度仲間と視線を合わせた後に、今度は辺りを見回す。
「やっちゃいなよ!」
「ぅぅぅ……」
その声に反応するかの如く河本少年は、ボロボロの体を庇う様にゆっくりと立ち上がり始めた。
「やっちゃいなよ!」
立ち上がった河本少年。
その傷ついた体や顔とは裏腹に、表情はさっきまでのイジメラレっ子のものとは一転していた。
まるで不良少年達を呪い殺さんとする狂気な表情から、恨み、妬み、怒り、不の要素が混ざり合ったようなエネルギーが生まれ始めていた。
「な……なんか、やばくない……」
「ああ……」
不良少年達も、河本少年の豹変に気付いた。
その表情から危険な気配も感じ取っていた。
「やっちゃいなよ!」
何処からとも無く聴こえくるインチキ外人の声が、ひときわ大きく聴こえた時、河本少年の背後に洋風アンティークタンスが突然現れる。
「なんだあれ……?」
「地面から生えてきたぞ!」
不良少年の言う通り、タンスは間違いなく河本少年が背に有る地面から生える様に現れた。
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